解説
Th.ベーム (1794-1881) はドイツ生まれのフルート奏者、楽器製作者、そして作曲家でもありました。現在使われている <ベーム・システム> フルートの考案者として有名です。彼は作曲家としてフルートのために60曲余りの作品を残しました。この12の練習曲は中・上級者のための系統立てられた、全調のメカニズムの練習曲です。これは練習曲というものの実質的にはむしろ 《日課練習》 の要素を多く含んだ練習曲です。従って技術程度は 『ALTES』 1巻、2巻、ケーラー 『12 Medium Difficult Exercise op.33』、アンデルセン 『24 Studies op.21 ,30, 33』 を学習し、全調を把握した中級者以上の技術が必要とされます。ベームの初期の作品とされ、彼の理想とするフルートの機能、機構が十分に網羅された機能的練習曲です。この理想に向けて1832年、彼の手によって、フルートの大改良が試みられ、この改良を予期したかのように、前年 『12 Studies』 はアイブル社より出版されたのです。サブタイトルには 「全調性で運指を円滑にするための」 とあり、全調性に対応する調性感、順応性を学ぶ目的で書かれたもので、12曲より構成されています。彼の1871年の論文 『フルートとその演奏法』 の記述によれば 「フルートの演奏を技術的に正しく、容易にする目的を持って、補助教本として書かれたもので、この中には、あらゆるフルートの高級技術、難技巧が含まれている。」 とあります。その通り、音階、半音階、分散和音、跳躍進行を基に組み合わされた音型による同型反復進行練習で、全調に展開する機械的な練習曲です。曲各々が全調における音色、音程、機能性の問題を問い掛ける大変重要な練習曲ですが、特に No.3, 5 のトリル課題は必修教材です。(解説/佐野悦郎)ニュース
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