スタッフのおすすめ「フルートアンサンブル」(5本フルート以上)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

フルート五重奏曲(5Fl)

アラースは、1935年にハンブルグで生まれました。ほとんどすべての楽器のための無伴奏曲、室内楽曲、オーケストラ作品などを作曲しています。この曲は、トッカーティナ、ノットゥルノ、セレナータ、レチタティーヴォ、ロンディーノの5曲からなっています。1.トッカーティナは軽快な主題と技巧的なパッセージ、2.ノットゥルノ(夜想曲)は表情豊かな旋律。3.セレナータは自動オルガンのような響き、4.レチタティーヴォ(詠唱)は各自が自由に独奏し、他の全パートが応答します。5.ロンディーノは楽しく愉快な変拍子(3/8,4/8,5/8,6/8)のロンドです。
【中・上級者向け】 演奏時間:約9分 (I)

名作ミュージカルをフルートで! (5Fl//Pic.2Fl.A-fl.B-fl)

2020年はレナード・バーンスタイン没後30年に当たります。彼によって作曲されたミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」は1956年の初演から60年以上たってなお繰り返し上演され続けています。彼の代表作であるばかりでなく、20世紀の音楽の中でも最も知られた重要な作品の一つといえるでしょう。
今回ご紹介するのはその中から3曲を取り上げてフルート5重奏(ピッコロ・2フルート・アルト・バス)にしたものです。曲は
1.クール
2.あんな男
3.アメリカ
で、「トゥナイト」「マリア」などのバラードは選ばれていませんが、3曲ともジャズのスィングを感じさせる、スタイリッシュでかっこいい曲です。アレンジは原曲のイメージを損なわず、しかしクラシックの演奏会で取り上げてもおかしくないものです。複雑な拍子と美しいメロディが絡み合う面白さと、ダンサブルな曲調をお楽しみいただけると思います。
各曲5分弱くらいなので、1曲だけ取り上げることも可能です。
編曲者のリズ・カッツはイギリス人のフルーティストで自らがメンバーのロンドン・フルート・クィンテットのために編曲を手掛けています。このグループによる演奏はこちらで試聴できます。(https://soundcloud.com/liz-cutts/sets/west-side-story-for-flute)
なお、この楽譜は第1巻となっていますが、続巻の情報は今のところありません。ほかの曲の出版も待たれます。
【上級者向け】(T)

癒しの一曲(5Fl[3Fl.A-fl.B-fl])

アレクサンドル・ポルフィーリェヴィチ・ボロディンはサンクト・ペテルブルクで生まれ、化学者として活躍し、バラキレフに音楽的才能を見出されました。「ロシア五人組」の一人です。「だったん人の踊り」(オペラ「イーゴリ公」より)が有名で、よく演奏されていますのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するこの「ノットゥルノ(夜想曲)」は、もとは「弦楽四重奏曲 第2番」の第3楽章で、アルトとバスを含むフルート五重奏に編曲してあります。 シンコペーションのリズムに乗って、バス・フルートから旋律が始まります。静かながらも抒情的で大変美しく、ロシアの雄大な大地を思わせるような、心に響く1曲です。
(B)

新刊紹介 (5Fl//Fl(Pic).2Fl.A-fl.B-fl / 2Fl(Pic).4Fl.2A-fl.2B-fl)

作曲者のイアン・クラークはイギリスの現代作曲家、フルーティストで、現代奏法をクラシックにうまく取り入れたシャープでモダンな作風で人気があります。
今回ご紹介する曲は、Alry社から多くのフルート五重奏の楽譜を出版している、ヒンツェ率いるアンサンブル「Quintessenz」の委嘱によって書かれました。
タイトル通り、ちょっと不気味な雰囲気が全体を通してあり、快活なメロディとゾワゾワする部分が交錯する、刺激的でスリリングな曲です。(クラークは「ハロウィンのために書いたわけではないけど、ハロウィンに演奏するのもいいよ」と言っています)
ジェットホイッスルをはじめいくつかの特殊奏法が必要で、楽器もリングキー、H管が必要とされるなど、上級者向きの曲ですが、各パート2段になっており上級者は上の段、中級者は下の段を選んで演奏できるようになっています。
五重奏ですが人数を増やしてフルート・オーケストラでの演奏も可能です。
目新しい五重奏をお探しの方、腕自慢の仲間を誘ってぜひ挑戦してください。
【中・上級者向け】 演奏時間:約8分 (T)

テクノポップ調のアンサンブル(5Fl[4Fl.A-fl])

Flutronixはアメリカ、ニューヨークを拠点に活動している、若い女性のフルート・デュオです。二人ともクラシックの演奏家でもありますが、このデュオではポップ・アイドルのようなヴィジュアルで、打ち込みの電子音楽やパーカッションを使ったり、ボーカルも取り入れたりと、クロスオーヴァーな音楽を演奏し、ライヴやYouTube を通じて人気が出てきた注目の二人です。
「Flock」も、オリジナルはシンセサイザーの打ち込みをバックに二人で演奏したものですが、ご紹介するのはそれをフルート5重奏にアレンジした楽譜です。コンピューターミュージックらしい無機質な音形の繰り返しが不思議なノリと快感を生み、だんだん感覚が麻痺してくるような、癖になる面白さを感じさせる、今までにないアンサンブルです。美しいメロディで聞かせる曲ではないかもしれませんが、新鮮な感覚がユニークです。ありきたりの音楽にちょっと飽きた方、トライしてみてはいかがでしょうか。
現代奏法は出てきませんが、高度なアンサンブル力は必要です。
なお、オリジナルヴァージョンはFlutronixのCD 「2.0」(ID:7010)に収録されています。
【中・上級者向け】 (T)

フルート五重奏(5Fl[4Fl.A-fl])

キュットは、1956年にヴルツブルグで生まれました。ジャズ・ピアノ、ジャズの理論、作曲、編曲を学び、その後、教師・演奏家また作曲家として南ドイツで活躍しています。この曲は、巧妙なポピュラー系ラテン風リズムの組み合わせが魅力の、楽しい曲です。中間部は5番パート(アルト・フルートでも可)のシンコペーション・リズムの上に、美しい旋律が心地良く響き渡ります。演奏時間約3分とかなり短い曲ですので、アンコール曲にもどうぞ。
【中級者向け】

いつか皆さんで‥(6Fl//5Fl(2Fl.3Pic).A-fl)

今回ご紹介する曲は、「碧い月の神話」や「妖精の森」などで知られている石毛里佳さんの作曲です。
ブリンダーヴァンとはインドにある都市の名前でヒンドゥー教の聖地です。
クリシュナという神様の生誕の地で、そこには4千もの寺院があるといわれています。
この曲にはアルト・フルートのソロが多く、その特徴的な音色がブリンダーヴァンの神聖さを醸し出しています。
曲全体としてはアンダンテとアレグロの二部構成になっていて、一部はピッコロ、フルート、アルト・フルートのそれぞれの特徴を活かした旋律が美しいです。
二部では沢山の連符が登場しますが、うまく吹くことができればとても華やかに輝きます。
4分半と短い曲なので様々な場面で演奏できそうです。ぜひ皆さんでお楽しみください。
【上級者向け】演奏時間:約4分30秒(H.S.)

魔笛の序曲を6人で! (6Fl//Pic.5Fl/Pic.3Fl.A-fl.B-fl)

今回ご紹介する「魔笛」は、W.A.モーツァルトが1791年に作曲した生涯最後のオペラです。当時興行主のエマヌエル・シカネーダーが作曲を依頼しました。1791年9月30日に初演され大好評を博し、現在もとても人気がありたくさんの方に楽しまれている作品です。その中で最初に演奏されるのがこちらの序曲で、これからどんな物語が始まるのか、わくわくするような魅力的なフレーズがいっぱいです。
6重奏の編成になっているこちらの楽譜は、ピッコロとフルート3本・アルトフルート・バスフルートで演奏できますが、ピッコロとフルート5本でも演奏が可能ですので、気軽に挑戦していただける汎用性が高い楽譜となっています。
ぜひみなさんでモーツァルトの世界を堪能してくださいね。
【中・上級者向け】(OY)

あの名作を演奏してみませんか?(6Fl[4Fl.(A-fl.B-fl option)])

不朽の名作「サウンド・オブ・ミュージック」。その中で歌われている曲は、誰でも一度は耳にしたことのある曲ばかりです。それをフルート・アンサンブル用に編曲し、メドレーにしてあります。基本は4本のフルートですが、オプションでアルト・フルート、バス・フルート、コントラバスまたはファゴットを付け加えることができます。また、こちらの楽譜は、各曲の最後数小節が、“その曲で終わる場合はこちら(Fine Ending)”“次の曲につなげる場合はこちら(To Continue)”というように2種類用意されており、全曲通して演奏することも出来ますし、途中で終わることも可能です。演奏会の本編でもアンコールでも場面に合わせてご利用いただけるので便利です。
(B)

フルート6重奏で「動物の謝肉祭」(6Fl [Fl/Pic.3Fl.A-fl.B-fl])

今回はサン=サーンスの名曲、「動物の謝肉祭」のフルート6重奏版のご紹介です。全14曲からなる組曲のうち、第3曲の「ラバ」、第11曲の「ピアニスト」がカットされていますが、それ以外の12曲が収録されており、ほぼ全曲演奏できるようになっています。アルト・フルート、バス・フルートを含む6重奏で、1stフルートはピッコロに持ち替える曲があります。オプションでコントラバス・フルート、チェロ、ファゴット、またはバス・クラリネットを追加して演奏する事も可能です。12曲すべてが収録されているコンプリート版と、3分冊になっている楽譜がございますので演奏してみたい曲だけお求め頂く事もできます。タイトルに合わせて動物園を巡るようなイメージで演奏してみて下さい。サン=サーンスのユーモアあふれる世界をお楽しみいただけることでしょう。
第1巻:堂々たるライオンの行進/雌鶏と雄鶏/亀/象
第2巻:カンガルー/水族館/耳の長い登場人物/森の奥のかっこう/大きな鳥籠
第3巻:化石/白鳥/終曲
【中・上級者向け】 (NS)

ピッコロがメインの6重奏(6Fl [Pic.4Fl.A-fl])

作曲者のソレンティーノは1973年生まれのイタリア人で、2013年に40歳の若さで亡くなっています。フルートの曲も多く作曲しています。
“Undae”とはラテン語で「波」の意味で、そのタイトルとおり終始さざ波のようにひたひたと揺れ動く音形に乗った、ピッコロの軽やかで抒情的なメロディが印象的な美しい曲です。
フルート6重奏ですが、この編成には珍しく、アルトまでしか必要ありません。バスやコントラバスなどの低音楽器がなくても演奏できますので取り組みやすいのではないでしょうか、アマチュア・アンサンブルの方もぜひ挑戦してください。演奏時間は4分弱の短い曲です。
CDはまだ出ていないようですが、YouTubeにはいくつか演奏がアップされていますので、”Vincenzo Sorrentino undae”で検索して試聴なさってみてください。 【中・上級者向け】 (T)

新刊紹介(6Fl[4Fl.A-fl.B-fl])

チャイコフスキーがイタリアに滞在していた時に着想を得たためこの副題がついています。原曲は弦楽六重奏曲(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各2)という珍しい編成ですが、弦楽合奏として演奏されることも多いようです。 タイトルはイタリア風ですが、曲はイタリアをイメージさせるようなところはなく、チャイコフスキーらしいメランコリックさとかっちりした対位法が駆使された大曲です。
4楽章形式で、いきなり迸るような疾走感で始まる第1主題が印象的な第1楽章(Allegro con spirito)、メランコリックなカンティレーナが甘美な第2楽章(Adagio cantabile e con moto)、イタリアというよりはロシア民謡風な響きが面白い第3楽章(Allegretto moderato)、室内楽よりむしろ交響曲を思わせる壮大さのある第4楽章(Allegro con brio e vivace)からなり、どこを取ってもチャイコフスキー節が溢れる、晩年の隠れた名曲です。
フルートで演奏するには動きも早く難しいところもありますが、その分やりがいのある曲です。全曲では30分を超える曲ですので、一つの楽章だけ取り上げてもいいでしょう。編曲者のレインフォードは6人ではなくフルートオーケストラでの演奏が、音の厚みや息継ぎの点からも好ましいとしています。ぜひ大編成の合奏でトライしてください。
(上級者向け)(T)

「西部の情景」(6Fl)

曲名の通り、西部の情景を3つの楽章で表現しています。西部劇のシーンを思い浮かべながら演奏してください。演奏する人、聴く人も楽しくなるアンサンブル曲です。演奏時間は5分位です。楽譜には特殊フルートの使用でも演奏できる様に書かれていますが、皆さんお持ちのフルート、6本(C管)で演奏出来ます。
【中・高校生、アマチュア初級者向け】 (Y)

フルート・オーケストラの草分け、廣瀬量平の一曲(7Fl[4Fl.2A-fl.B-fl])

2008年に亡くなった作曲者の廣瀬量平は、管弦楽、室内楽、合唱、邦楽など多彩な分野で活躍しましたが、フルート・オーケストラというジャンルがまだあまり一般的に知られていなかったころから積極的に取り組み、「ブルー・トレイン」「マリン・シティ」など草分けとなる名曲を生み出してフルート界にも貢献しています。
今回ご紹介する曲は、彼の混声合唱曲「海の詩」と「海鳥の詩」の中から『海はなかった』『エトピリカ』『海の子守歌』の3曲をフルート・オーケストラ用に編曲したものです。特に1曲目の『海はなかった』は1975年NHK学校音楽コンクールの課題曲になったこともあり、音楽の授業で歌ったことや聴いたことがある人も多いのではないでしょうか。 編曲では伴奏のピアノ・パートもフルートに取り込まれていますので、原曲とは多少趣は変わりますが、廣瀬らしい繊細でかつ力強いメロディーの魅力をぜひアンサンブルでもお楽しみください。
【中・上級者向け】 (T)

みんなが主役です♪(7Fl/Pic.5Fl.A-fl)

モーリーは1911年生まれのアメリカの作曲家です。 主題と7つの変奏(最後に再び主題)からなっています。転調あり変拍子あり、さらに1か所だけですがフラッターの指定もあり、なかなか吹きごたえのある作品です。
この曲の最大の特徴は、タイトル通り「チェンジ」です。楽譜に各奏者の最初の立ち位置が記載されていて、主題及び変奏が終わるたび反時計回りに移動するよう指定されています。奏者がステージ上でぐるぐる位置をかえながら吹く様子は、見た目にも楽しめるのではないでしょうか。
なお、パート譜は各パートの楽譜ではなく、各立ち位置の楽譜ですのでご注意下さい!(楽譜にはSOLO STAND、1ST STAND、2ND STAND・・・と記載されています。)
【中級〜上級者向け】演奏時間:約11分 (I)

クリスマス・オラトリオ(7Fl[2Solo-fl.3Fl.A-fl.B-fl(F.CHOIR)])

みなさんはクリスマスをどのようにお過ごしでしょうか。 街は楽しい雰囲気に包まれて、どこからともなくクリスマスソングが流れ、ドキドキ、ワクワクしますね。クリスマスソングには華やかで陽気な曲調のものからしっとりと心に染み入るものまで、さまざまあります。その中で今回ご紹介したいのは、サン=サーンス作曲の「クリスマス・オラトリオ」です。
この曲は、サン=サーンスが1857年フランス・マドレーヌ教会のオルガニストとして就任した翌年に作曲されおり、オルガンの響きが印象的な作品です。オリジナルは、5人のソリスト(歌)、合唱、ハープ、オルガン、弦楽の編成で、全10曲の構成です。
この楽譜は、Bruce Behnke氏によって7重奏(2Solo-fl.3Fl.A-fl.B-fl)に編曲されており、全10曲のうちの、第1曲目:プレリュード(バッハのスタイルで)と第10曲目:コラールの2曲が収録されています。
第1曲目:プレリュード(バッハのスタイルで)は、12/8拍子、オルガン・ソロがテーマを演奏し、弦楽が加わっていきますが、そのハーモニーは聴いている人を優しく包み込み、この曲に引き込まれていきます。低音の重厚感はバス・フルートで再現されおり、奥行きのある編曲となっています。
第10曲目:コラールでは、1stソロにピッコロの持ち替えがあり、全パートで奏でるハーモニーは美しく心に響くことでしょう。
全曲聴くのもおすすめの1曲です。フルート・アンサンブルのレパートリーに加えていただけると嬉しいです。
【中級者向け】 (TO)

多才な音楽家、フランソワ・グロリュー(8Fl//Solo-Fl.3Fl.2A-fl.B-fl.Cb-fl)

フランソワ・グロリュー(1932− )は、ベルギーのコルトレイク出身のピアニスト、作曲家、指揮者で、母国ベルギーのゲント王立音楽院室内楽の教授、アメリカのイェール大学の客員教授を務めるなど、国際的に活躍する多才な音楽家のひとりです。ビートルズの名曲を「ショパン風」「モーツァルト風」「バッハ風」などクラシックの作曲家が書いたようなピアノ曲にアレンジしたり、マイケル・ジャクソンからの依頼でアレンジするなど、編曲も数多く行い、活動は多岐にわたります。
今回紹介するこの「間奏曲」は、原曲はフルートと弦楽オーケストラのための作品です。編曲者のマット・ジョンストンは、弦楽器特有の演奏効果をフルート・オーケストラで発揮するにあたり、ウィスパー・トーンやハーモニクスなどを用いており、その説明も序文に記載されています。どれも2分〜3分ほどの小品です。コントラバス・フルートまで使用するフルート・オーケストラで、ソリストとともに楽しく演奏してください。
【中・上級者向け】 演奏時間:約20分 (B)

C管フルート8本でのアンサンブル!(8Fl.)

フルートアンサンブルでは珍しい、8本のC管フルートを使用した楽曲です(1stフルートはPiccoloへの持ち替えがあります)。モーツァルトの魔笛に登場する“タミーノ”の音楽帳、と題したこの曲は、冒頭から明るく可愛らしい印象を強く感じ取ることができます。効果的な音の聴こえ方を、各パートそれぞれの立ち位置の場所から最大限に引き出しています。
第1楽章:Polka 軽やかな導入により、曲が明るく、躍動感を感じることが出来ます。
第2楽章:Minuetto ぽかぽかとした昼下がりのような曲。
第3楽章:Galopp 入り組んだ(ような)音型で、まさにタイトルの通り駆け足でクライマックスに向かいます。
この曲は、1991年1月25日ミュンヘンに於いて、ベネット、グラーフ、ヘンケル、ワイ、デボスト、シュルツ、ウィルソン、アドリアンの超豪華メンバーで初演されました。
【中級者向け】 (H)

心洗われる美しい響き!(8Fl.)

W.A.モーツァルト晩年の傑作である讃美歌「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。1791年6月17日にバーデンで、彼の友人でもあった合唱指揮者のアントン・シュトルのために作曲されました。もとは合唱、弦楽、オルガンのシンプルな編成ですが、今回ご紹介する楽譜は弦楽で演奏される部分がSoloパート4つに、合唱の部分がTuttiパート4つに分けられており、計8本で演奏が出来ます。
長さはわずか46小節ですが、自然な流れの中での転調や澄み切った美しい響きに魅了される作品です。速さはゆったりとしたAdagioで、細かい音符もないため初心者の方も挑戦しやすいのではないでしょうか。演奏会のアンコール等でも、透き通った清らかな音色で締めくくることができるのでおすすめです。
【初級者向け】 演奏時間:約3分30秒 (OY)

ゆったりボサノヴァの名曲を(9Fl//Pic.5Fl.A-fl.B-fl.Cb-fl)

アントニオ・カルロス・ジョビンの「イパネマの娘」は、おそらく聞いたことのない人はいない、ボサ・ノヴァを代表する名曲というだけでなく、ビートルズの「イエスタディ」などに次いで世界中でもっとも多くカヴァーされたポピュラー音楽の名曲として、作られてから50年以上にわたって衰えない人気のある曲です。
歌詞はブラジルのイパネマ海岸を歩く美少女をうたったものですが、親しみやすくさわやかなメロディだけでも十分に魅力的です。特に夏のけだるい午後などに聞くのにぴったりだと思います。
今回ご紹介する楽譜は、このよく知られた原曲のイメージを損なうことなくフルート・オーケストラ用に編曲してあります。テクニック的には難しい曲ではありませんので、アマチュアのアンサンブルでも楽しみながら演奏していただけると思います。肩の凝らないサロン・コンサートなどに使ってみてもいいのではないでしょうか。ゆったりとしたボサ・ノヴァのムードに浸ってみてください。
【初級者向け】演奏時間:約3分 (T)

合奏協奏曲でパパゲーノのアリアを(10Fl[Pic(Solo).3Fl(Solo).A-fl(Solo).B-fl(Solo).4Fl(Tutti)])

作曲者のグレーテンは1964年ルクセンブルグ生まれの現代作曲家。ソロからオーケストラ曲、宗教音楽まで幅広く作曲をしています。フルートの曲も何曲かあり、その中で今回ご紹介するのはご存知モーツァルトの歌劇「魔笛」から、鳥刺しのパパゲーノが歌う曲を取り上げて接続した曲です。
曲は有名なアリア「おいらは鳥刺し」に始まり、「恋人か女房か」、パパゲーナとの二重唱などが次々に現れますが、原曲そのままではなくちょっとひねったアレンジで、陽気なパパゲーノがなんだか不安そうだったり、もの悲しげに聞こえたり、と随所に作曲家のスパイスが効いた楽しく面白い曲になっています。
また、ユニークなのは編成で、4Fl編成のトゥッティと、Pic.3Fl.A-fl.B-flからなるソリによる、コンチェルト・グロッソです。フルート合奏では比較的珍しい編成かもしれません。大人数のアンサンブルで演奏してみてください。
(中上級向き)(T)

忘れられた19世紀フランス・オペラ6(10Fl//Pic.5Fl.2A-fl.B-fl.Cb-fl)

歌劇《ル・シッド》よりバレエ組曲
19世紀フランスを代表するオペラ作曲家の一人として知られるジュール・マスネ(1842-1912)ですが、それでも彼の代表作である《マノン》(1884年初演)に《ウェルテル》(1892年初演)、そして「タイスの瞑想曲」で有名な《タイス》(1894年初演)など、全曲が日本で上演されることが少ないのは残念なことです。今回は彼の作品の中から、《ル・シッド》を取り上げます。
《ル・シッド》は1885年に初演された4幕からなるグランド・オペラで、第2幕第2場の冒頭にあるバレエの場面が有名で、組曲として単独で取り上げられることも多い曲です。物語は、1961年公開のアンソニー・マン監督の映画『エル・シド』で有名な、ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール(通称エル・シッド、フランス語名ル・シッド)の生涯を基にしています。スペインにおけるレコンキスタの時代、イスラム教徒と戦った英雄ル・シッドは騎士の称号を与えられ、その父ドン・ディエーグも皇太子の近衛隊長に昇進を果たします。同じポストを狙っていたのがル・シッドに恋心を寄せるシメーヌの父ゴルマ伯爵、彼がドン・ディエーグを侮辱したことからル・シッドが復讐することになり、シメーヌとの関係は複雑なものとなります。しかし、新たにイスラム教徒からの宣戦布告があり、出陣して見事勝利を収めたル・シッドはシメーヌの許しを得、二人は結ばれてハッピーエンドとなります。
レコンキスタとはスペインのイスラム教徒からの国土回復運動を指しますが、スペインはイスラム教徒の支配の時代にその文化の影響を受け、「オリエント」の雰囲気を現在にまでとどめており、ヨーロッパの人々にとっては異国情緒あふれる国でした。そのため、19世紀から20世紀にかけて、音楽の世界においてもスペイン趣味が流行しました。フランスのオペラ作品だけ見ても、ビゼーの《カルメン》(1875年初演)やラヴェルの《スペインの時》(1911年初演)など枚挙にいとまがありません。
今回ご紹介する編曲では、原曲のバレエ曲の中から終曲のナヴァレーズが外され、元は第3曲のアラゴネーズが最後に据えられて、カスティラーヌ、アンダルーズ、オーバード(朝の歌)、カタラーヌ、マドリレーヌ、アラゴネーズの順に収録されています。タイトルから見てもスペイン起源の舞踊曲が並んでおり、これだけでもオペラの情熱的な雰囲気が十分楽しめます。
(2021年8月記) (M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )

一度聴いたら忘れられない!12Fl//Pic(Fl).6Fl.2A-Fl.2B-fl.Cb-fl

19世紀ドイツの作曲家で三大Bとも称されるヨハネス・ブラームス。
1870年に知人のカール・フェルディナント・ポールを通して、ハイドン作とされる「聖アントニウスのコラール」の旋律を知ったブラームスが、変奏曲の主題に用いて作曲したのがこの「ハイドンの主題による変奏曲」です。先に2台ピアノの編成で作曲をし、推敲を重ねて管弦楽版が完成しました。今回ご紹介するのはフルートオーケストラの編成で、12パートあるため迫力のある演奏が楽しめます。
まず、変ロ長調の温かみのある主題が提示され、第1変奏は一定のリズムが刻まれ、その上に流れるようなメロディが奏でられます。第3変奏では息の長い穏やかなフレーズが印象的で、時々顔をのぞかせる16分音符の可愛いかけ合いにも耳を傾けてみてください。終盤にさしかかる第7変奏は、付点のリズムに乗って優しく包み込むような旋律に心が洗われます。第8変奏まで続いた後の終曲は壮大なパッサカリアで、低音パートから始まる5小節単位の主題は何度も何度も繰り返されます。締めくくりにそれぞれのパートが折り重なって奏でるff(フォルティッシモ)は圧巻です!
聴きやすい曲ですので、演奏会のプログラムにもぜひ取り入れてみてくださいね。
【中級者向け】(OY)