加藤:
フォーレを調べてみて、フォーレの印象など気が付いたことはありますか。
生野:
大学でフォーレのファンタジーを演奏するために調べたときは、サン=サーンスの弟子でラヴェルの先生で、パリ音楽院の学長もやっていたという大雑把なイメージしかなかったんですけど、今回深く調べてみて、すごく偉大な作曲家なんだと改めて思ったことと、フォーレ自身、時代背景が出兵したり大変な時代を生きてきたにもかかわらず、国民音楽協会の発起人としてヴィドールとかデュボワとかと一緒に、作曲や演奏以外でも今に繋がるフランス音楽を確立したたくましい生き方をした人だなと思いました。
詳しくはこちら
⇒ Gabriel Fauré ガブリエル・フォーレ
加藤:
ファンタジーの中で、ここがいいなって思うところはどこだった?
生野:
アレグロの中で、アンダンティーノのフレーズAの部分がテーマとして出てくるところがすごく好きで、その後のフュゼーに繋がる流れも魅力的だなと思いました。
加藤:
突然、ゆっくりだったメロディーがふっと出てきますね。
最初はピアノも「タタッツ、タタッツ」だったのが「タタタッツ、タタタッツ」となって。
雰囲気的には攻めるというか、ちょっと攻撃的になるというか。
その攻撃的な動きの上に乗っかった3連符が動き始めるのかと思ったらそうでもなくて。
そう。確かにここはいいところなんですよ。
で、フォーレの場合セクエンツィア形式を取っているので、いいところが出てきたら絶対にもう1回そのいいところを上乗せしてくるんです。そのあたりが名曲といえる部分じゃないかなという感じがするんですよね。
メロディーとしては1つのメロディーで充分完結できるように作っているんだけど、2回目が必ずあって、変化する場合も同じ場合もあるんだけど…それにしても全然飽きがこないっていうか。
だから逆にいうと…
「コンクール用小品」っていう初見課題がありますよね。
この曲は、最初は1回のフレーズだけだったのが出版するっていった時、これじゃあ出版社の方が短すぎるからなんとかしてくれって言われて、原譜を、しょうがないから倍の長さにして、何も手の加えようがないから2回繰り返しただけにして出版されました。
それが1970年以降だから、それこそランパルくらいの世代の人が活躍していたところに出てきてみんなが演奏した。その時に何の迷いもなく、当然のごとく2回繰り返して演奏していい曲だねってどんどん広がっていって。
だけど蓋を開けてみたら本当は1フレーズだけだった。っていうのがあったとしても、やっぱりフォーレはその1フレーズをもう1回繰り返してもおかしくないっていう、それの証明みたいな形になったっていうところがありますね。
ファンタジーに話を戻しますが…
1番最初のアンダンティーノの主要なテーマでもあるんだけど、それはいいメロディーに決まっているんだけど、ロマン派の時代にはそうやって少し変化をさせてリズム形態を2拍子だったら3拍子系統にするみたいな。この場合だったら6/8拍子を大きな3拍子に。
だからそういう形をとるっているのは結構あったんだけど、でもちょっと、そういう普通に3拍子に聴こえてくるものとも違うっていう感じがしますね。
フルーティスト的には、いい所っていうか、特徴的なんだけど117小節目espressivo「シ〜レ〜ソ#ソ〜ミレド〜シラ〜…」の所、少しフルートが欠けた状態で繋がっていくところがあるんだけど…、結構フォーレってこれ得意なんですよ。
考え方としてはエリジオンなんだけど、でもそれがエリジオンっていう完全な形ではなくてちょっとだけ切れ間があるような。通常の滑らかなフレージングをちょっと区切るような感じ。歌曲の中にもあるし、門下生だったらラヴェル。例えばラヴェルのヴァイオリン・ソナタの中にもそういう所がある。だからパート譜だけでさらっていると、あれ、なんでこんなところからこっちの音にいくのかな、ってところがある。
ピアノと合わせてみると、それがそこから受け継がれるんだって分かる。
カゼッラの曲の中にもそういう所はありますね。どうもフォーレ門下に受け継がれたのかなっていう感じがありますね。
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