スタッフのおすすめ「フルート・ピアノ」(作曲家O-Z)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

アンコールピースにおススメ!

ウィーンに生まれたパラディスは、幼い頃に視力を失いますが、サリエリらに音楽を学び、ピアニスト・オルガニストとしての才能を認められ、モーツァルトも彼女のためにピアノ協奏曲(K.456)を贈ったといわれています。 作曲も多かったものの、ほとんど現存せず、最も有名な曲とされているのがこのシシリエンヌです。 もとはピアノの為に書かれた曲ですが、フルートで奏でるのにもよく合う、優美なメロディーの小品です。 短い曲なので、アンコールピースとしてもお薦めです。
【中級者向け】演奏時間:約3分(NI)

こんなバラードご存知ですか?

フルート&ピアノの「バラード」といえば、マルタンやゴーベール、ライネッケ作曲のものなどが有名ですが、その他にもたくさんの作曲家によってバラードが作曲されています。その中から1曲ご紹介したいと思います。ペリルーはフランスの作曲家で、このバラードは、1910年のパリ・コンセルヴァトワールの卒業試験のために作曲されました。力強いピアノの前奏から始まり、それを受けるようにフルートも力強いメロディで入ります。そして、その後は流れるような美しいメロディが続きます。きっと一度吹いたら忘れられなくなることでしょう!ダブルタンギングで演奏する部分が少ないので、タンギングがあまり得意でない方には特にオススメします。
演奏時間:約6分半 (I)

花の季節にこんな曲はいかがでしょうか?

スウェーデンの作曲家ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエル(1867-1942)の作品をご紹介したいと思います。彼は、音楽評論家や王立オペラのプロデューサとしても活躍し、スウェーデン音楽界ではよく知られる存在だったといいます。『フレースエーの花々』は、原曲は21曲からなるピアノ小曲集ですが、その美しいメロディーゆえに管弦楽や他楽器への編曲も数多く行われています。その中から最初の6曲を、スウェーデン出身のフルーティスト、イエラン・マーカソンがフルートとピアノ用に編曲したのがこの楽譜。それぞれ数分程度の短い小曲ですが、思わず口ずさみたくなる明快なメロディが印象に残ります。初級〜中級程度の方でも技巧的には問題無く演奏できるでしょう。ちなみに『フレースエー』というのはスウェーデン北部の湖に浮かぶ島の名前で、作曲家はこの美しい島をこよなく愛し、ついには別荘を建てて移り住んだそうです。そんな作曲者の日常の情景を綴った絵日記のような作品です。さらりとエレガントに演奏してみるといいかもしれません。
(A)

タンゴ界の革命児、ピアソラ

この楽譜は、ピアソラが遺した数々の名曲から数曲をピックアップし、フルートとピアノ用にアレンジしたものです。
第1巻には代表作の「リベルタンゴ」をはじめ、「ジャンヌとポール」などのピアソラの世界観がたっぷり詰まったタンゴ、かなりクラシック寄りの美しい「アヴェ・マリア」などが収録されています。
第2巻には、様々な編成でよく演奏される「鮫」「忘却」の他、あまり聴く機会のないものも多く収録されています。
アルゼンチンとNYで育った背景を生かし、タンゴにジャズやクラシックの要素をふんだんに採り入れた彼の作品は、どれも艶のある遠い異国の響きがします。熱く甘く切ないタンゴは、コンサートのプログラムのアクセントや、アンコールにもおすすめです。
【初・中級者向け】 (AN)

さらにピアソラを極めたい方のために

いまだにピアソラ人気は衰えません。これまでに何冊のピアソラ曲集が出たことでしょうか。
この楽譜は「アディオス・ノニーノ」や「リベルタンゴ」は当たり前、もう「オブリヴィオン(忘却)」や「エスクアロ(鮫)」も吹いちゃったよ! というアナタのための曲集です。といっても、全25曲中2曲は「リベルタンゴ」「オブリヴィオン(忘却)」と有名どころも入っていますが、後は「ムムキ」が知られている程度でしょうか。ほとんどの曲は劇音楽や映画音楽として作曲されたものです。ちなみに「オブリヴィオン」も映画「エンリコ4世」(1984年、マルチェロ・マストロヤンニ主演)の音楽です。コメディー・フランセーズのシェークスピア劇「夏の夜の夢」(1986)のための音楽からは「序曲」「職人 I」「踊られた」「デュオ I」「ミロンゴ」「官能的」の6曲。同じくリシャール・ガリアーノが音楽監督を務めた舞台作品「芸術家一家」(1989)から「誕生の歌」「ポポの歌」「センティメンタル」「タンゴ・終曲」の4曲。映画「タンゴ−−ガルデルの亡命」(1985)からの「不在」。映画「スール その先は・・・愛」(1988)から「夢」「南へ帰ろう」の2曲。さらに音楽を担当するはずだったピアソラが病に倒れたため、バンドネオン奏者のネストル・マルコーニが「夏の夜の夢」から編曲・演奏した「ラテンアメリカ 光と影の詩」(1992)から「エル・ビアヘ(旅)」が取り上げられています。また、1988年にリリースされ、収録曲が1997年の香港映画「ブエノスアイレス」で使われて有名になったLP「ラフ・ダンサー・アンド・ザ・シクリカル・ナイト」から、「3人のためのミロンガ」「ミロンガ・ピカレスク」「ストリート・タンゴ」の3曲も。あとは「フラカナパ」「新世界」「精神病」「シン・ルンボ」「すべては過去」の5曲で、全体としてはピアソラ自身が録音を残していない曲もかなり含まれています。25曲をこうして眺めてみると、この楽譜が他のピアソラ曲集とひと味違ったものであることが分かってきます。フルートの新しいレパートリーを広げるのにはなかなか良さそうな楽譜です。
(SR)

ピアソラとフルート

アストル・ピアソラはフルートのオリジナル曲を2曲残しました。無伴奏フルートのための「タンゴ・エチュード」と、フルートとギターのための「タンゴの歴史」です。特に1986年にリエージュのギター・コンクールのために作曲された「タンゴの歴史」は発表後大変な人気を博し、楽譜が出版されてからはムラマツでも「フルートとギターのための楽譜」のベスト・セラーとなりました。プロ、アマチュアを問わず、フルーティストたちの間で高く評価されるこの曲の演奏上の大きな問題の一つは、フルートも易しくはありませんが、ギターが大変難しく、この曲を弾きこなせるギタリストが中々いないということです。 この楽譜は、ギター・パートを忠実にピアノに置き換えた編集版ですので、これまでギタリストがいないためにこの曲を演奏できなかった方々も、この楽譜があれば問題なく演奏することができます。これを機会に、ギター伴奏ということで今まで「タンゴの歴史」を敬遠して来られた方々も是非挑戦してみてください。なお、この楽譜はフルート用以外にヴァイオリン用のパート譜も付いているので、ヴァイオリンの演奏にも使えます。また、別売りで、ハープ伴奏用の楽譜も出版されています。
(SR)

フランス近代作品

この作品は、教会オルガニストの職を辞め作曲に専念しはじめた1900年に、「ヴァイオリン・ソナタ」として書かれた作品を、ピエルネ自身がフルート用に編曲したものです。フランスの作曲家ピエルネは同じパリ音楽院で勉強をしていたドビュッシーとかなり仲が良かったようで、ドビュッシーの作品の指揮者としても有名でした。フルートの曲としては、独自の技巧が格別に展開されるわけではないですが、素直で、とても楽しめる曲です。
【上級者向け】 演奏時間:約22分 (N)

クラリネットの超定番曲

たまにはクラリネットの名曲もいかがでしょうか。フランスの作曲家ガブリエル・ピエルネが手掛けた「カンツォネッタ」は初心者の皆様にもおすすめの小品です。
ピエルネはパリ音楽院にて作曲をマスネに、オルガンをフランクに学びました。指揮者としても非常に有名だった彼は、ストラヴィンスキー作曲「火の鳥」の初演なども務めました。印象主義とロマン派の両方を兼ね備えた作風を持ち味としたピエルネは、確かな作曲力で19世紀後半から20世紀初頭にかけて多くの素敵な作品を残しています。
曲の冒頭に現れる旋律は、イタリアのシチリアーナを思い起こすような符点のリズムが印象的です。題名にイタリア語が使われていることを考えると、もしかするとピエルネはシチリアーナや舟歌等に近いものをイメージしながら作曲したのかもしれません。何度も登場するその付点リズムは全体を通して表情がコロコロと変わり続け、まるで日差しが波に当たった時のように、明るさと暗さが和声の中に見え隠れします。
わずか4分ほどの短い楽曲ですが、エスプリ(フランスの精神)を十分に感じとれる作品です。所々に現れる16符音符、装飾音、半音階の動きがおしゃれさを一層引き立てています。
【初・中級者向け】演奏時間:約4分(C.K.)

忘れられたコンクール用小品7

マルセル・ポートは1901年にベルギーのブリュッセル近郊で生まれ、ブリュッセル音楽院に学び、パリに出てエコール・ノルマル音楽院でデュカスにも学んだ作曲家です。1988年にブリュッセルで亡くなりました。1925年から5年間ほどフランス6人組のベルギー版のような作曲家グループ「レ・サンテティスト」の一員として活動しました。後に母校ブリュッセル音楽院の教授として和声や対位法を教え、1949年から1966年まで院長を務めました。作風はフランス6人組を受け継ぐ新古典的なスタイルと近代的、機械的なリズムの妙が特徴で、7曲の交響曲を残したシンフォニストであり、ベルギーの地理的な影響によりフランス風の叙情性とドイツ的な重厚さをあわせ持つという点からもオネゲルに近いものがあります。
《伝説》は1959年の卒業コンクール用に作曲されましたが、献呈先は当時のブリュッセル音楽院のフルート科教授、フランシス・ストーフとなっています。冒頭、ピアノの荘重な和音の連打の後、フルートが神秘的な第1主題を奏で、カデンツァに入ります。第2主題は打って変わって4分の3拍子と8分の3拍子の混合拍子による機械的なリズムの行進が始まり、20世紀後半の時代を感じさせる作風です。フルート・パートの方も半音階的でメカニカルな動きが続き、当時の典型的なコンクール用小品のスタイルです。リステッソ・テンポで第1主題に似たカンタービレ主題が登場しますが、所々伴奏では第2主題の混合拍子が顔を見せます。徐々にテンポを落とした後ヴィヴァーチェとなり、輝かしくも少しおどけた旋律でラストスパートをかけたかと思いきや、第1主題に回帰します。トリルでエネルギーをためた後、コーダはヴィヴァーチェで駆け抜けて終わります。3連符や8分音符3拍による上行音型が随所に現れ、性格の異なる主題を有機的に結びつけると同時に、音楽の推進力となっています。
1959年6月6日に行われたコンクールの一等賞をとった4人のうち、スイス出身のブリギッテ・ブクストルフはアンセルメ時代のスイス・ロマンド管弦楽団で首席奏者を務め、ベルンやローザンヌの音楽院で教鞭をとりました。フィリップ・ベンデルは後年指揮者として活躍し、カンヌ管弦楽団の芸術監督等を務めました。また加藤恕彦氏が1958年に渡仏、日本人フルーティストとして最初にパリ音楽院に入学し、1年間の勉学の後はじめて受けたコンクールでもありました。『加藤恕彦留学日記』(商品ID:21670)で1年の軌跡を追った後、ポートの《伝説》を聴く、あるいは演奏してみると、彼が「放電」と書き残した意味がよく分かるのではないでしょうか。加藤氏はこの年は惜しくも逃しましたが、翌年見事一等賞を取りました。
(2018年6月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

フルートで吹く「椿姫」 2

ドイツの作曲家ポップは、コブルクに生まれ、クンマーやドゥローエにフルートを師事しました。2003年は没後100年にあたり、数多くの作品が出版されています。この作品には「ああ、そはかの人か」「花より花へ」「乾杯の歌」の3曲が使われており、短いカデンツァ部分や変奏部分があります。上述のジュナンのものに比べると難易度は下がりますので、「椿姫」をフルートで吹いてみたいけどジュナンのは難しいから…とお考えの方におすすめします。
【中・上級者向け】 (I)

演奏会におすすめです♪

W.ポップはドイツのロマン派の宮廷音楽家、フルーティストとして活躍していました。多作家であった彼の作品は小品やソナタ、協奏曲等があり、その数はなんと500曲を超えるといわれています。
今回ご紹介するのは「2つのサロン用小品」です。
1曲目の「愛の歌 作品204の3」は、表情豊かに歌い上げる導入部のメロディとそれに続く3連符の動きのあるリズムが印象的です。
2曲目の「ハンガリーへの挨拶 作品407」は哀愁漂うチャールダーシュで、吹きごたえがありピアノとの華麗なアンサンブルが楽しめます。
どちらも10分以内の小品ですので、演奏会のプログラムに取り入れてみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 (OY)

プッチーニ・オペラのアリア名曲集

イタリアのオペラ作曲家プッチーニの作品から、有名なアリアを集めてフルート用に編曲したアルバムが出ました.。オペラファンならずとも、一度は耳にしたことのある美しい旋律の曲ばかりです。ピアノ伴奏譜とカラオケCDの両方がついていますので、サロンコンサートのアンコールに、また旋律を歌う練習に、用途の広い曲集です。
【初・中級者向け】 (T)

スロヴェニア民族色のある美しいソナタ

作曲者のプチハールはスロヴェニア出身のピアニスト・作曲家で、夫人のアナがフルーティストのため、フルートの曲もいくつか作曲しています。この「プリマ・ソナタ」は2003年の作で、軽快なメロディーの“Allegro ritmico”、民謡風な響きを持つ“Scherzo”、穏やかで美しい“Cantabile”,速いパッセージが華麗な“Finale”の4楽章からなり、イベールやボザなどのフランス近現代曲を思わせる、明るい響きの美しいソナタです。現代奏法は出てきませんので、新しいレパートリーとしてリサイタルなどに取り組んでみてはいかがでしょうか。
【上級者向け】 (T)

雄大な自然と美しい街並みのスロベニアからお届け

フルーティストの妻と共に、フルートの作品を作曲しているスロベニア出身の作曲家、ブラシュ・プチハール。彼の作品はすでに数曲、こちらのコーナーで取り上げていますが、この作品も是非ご紹介したい一曲です。
ソナチネ 作品5は彼の友人に捧げるために、2004年に作曲された作品です。第一楽章 Vivo、第二楽章 Aria、第三楽章 Vivace で構成されています。
軽やかで明るい第一楽章。中間でゆったりとした曲調に変化しますが、終始飛び跳ねたくなってしまうような軽快な印象です。第二楽章は第一楽章の雰囲気とはガラッと変わり、強弱記号の変化が多いことが特徴ですが、落ち着いた曲調です。表記されているスラーやスタッカートをフルに用いて、表情豊かに奏でたい楽章です。大変華やかでフィナーレを感じさせる終楽章。(個人的な印象ですが、)どこかゲームのエンディング・テーマのような雰囲気があり、ピアノとの掛け合いが美しいです。
一曲の中に様々な表情が感じられる作品で、終始とても華やかな作風となっています。 現在、演奏会ではあまりレパートリーとして馴染みがないですが、きっと奏者も聴衆も楽しめる一曲だと思います。ぜひ演奏会のレパートリーとして、演奏してみてはいかがでしょうか。
(KM)

ラフマニノフの代表曲をフルート&ピアノで

原曲はピアノと管弦楽のための協奏曲で、ラフマニノフらしい技巧を凝らした華やかな名曲です。特にこの第18変奏曲はメロディーがとても美しく、単独でもしばしば取り上げられるラフマニノフの代表曲の一つです。「ヴォカリーズ」同様に、指のテクニックの難しい曲ではありませんので、ラフマニノフのメランコリックなメロディーを歌っていただきたいと思います。
(T)

チェロの名曲をフルートで

フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」やJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」など、他楽器の作品をフルート用に編曲して演奏することが普通に行われています。全てとはいいませんが、フルーティストは編曲ものがお好きな方が多いようです。『あの名曲が好きでどうしても演奏したいけれど、たまたま自分の楽器がフルートだった』『フルートの名曲が少ないので、傑作といわれるような他の楽器の名曲をレパートリーに取り入れたい』『音楽的な練習として使いたい』『他の楽器の曲を演奏してみることで、フルートがどんな楽器かをもっとよく知りたい』等々、理由は様々です。
今回ご紹介する楽譜は、レパートリーを増やすといった目的にかなった楽譜ではないでしょうか。ラフマニノフの「チェロ・ソナタ OP.19」は4楽章からなる大掛かりなソナタで、1901年、有名な「ピアノ協奏曲 第2番」の作曲直後に着手され、その年の12月初めに初演された作品です。ロシア、東欧の作品の中で、ドヴォルジャークの「チェロ協奏曲」やチャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」など、管弦楽伴奏のチェロ作品はあるのに、ピアノ伴奏の室内楽があまり見当たらない中で、チャイコフスキー直系ともいえるラフマニノフの「チェロ・ソナタ OP.19」は、ピアノの傑作が多いラフマニノフの作品の中にあって、チェロがよく歌う名曲として知られています。低音が強く重音が弾けるチェロと、むしろ高音が強く単音のフルートの楽器としての相違をどう解決するかという問題はありますが、名曲のフルート版として挑戦してみてはいかがでしょうか。
【上級者向け】(SR)

吹奏楽の第一人者による華麗なソナタ

作曲者のジェームズ・レイはイギリス人のサックス・クラリネット奏者で、フルート用にはジャズテイストの曲集や教育用のアンサンブルの楽譜を多く書いていてご存じの方も多いでしょう。
しかし、今回ご紹介する曲はそういったものとは趣が異なり、同じイギリス人のフルーティスト、イアン・クラークに献呈、初演されたオーソドックスな3楽章形式のソナチネです。
I:Aquarelle - Allegro moderato 軽やかな動きのピアノに乗って上昇下降を繰り返し跳ね回るような軽快な曲。
II:Nocturne - Lento 抒情的で流れるようなメロディが美しいノクターン。
III:Fire Dance - Presto con fuoco  タイトル通りピアノとフルートともに激しい動きの情熱的なダンス。
特殊奏法は出てきませんが、ピアノもフルートも技術的な難易度は高そうです。
軽やかで美しいメロディが印象的な、華やかで聞き映えのする曲なので、演奏会などに新しいレパートリーとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
【上級者向け】演奏時間:約10分 (T)

発表会やサロンコンサートにおすすめ♪

ドイツの作曲者マックス・レーガー(1873-1916)はオルガン、ピアノ作品をはじめ、室内楽、管弦楽など多くの作品を残しています。彼はピアニスト・オルガニストとしても演奏活動しながら作曲活動もしていました。今回ご紹介する作品は、音楽様式がロマン派から新しい音楽の試みへと変化していくなか、1902年にヴァイオリンとピアノのために作曲された小品です。 こちらはフルートで演奏できるように校訂されています。
6/8拍子でロマンティックなメロディですが、短い曲の中でも調性が揺らぎ、後期ロマン派を感じることができる作品です。 演奏時間約2分弱と短いのでアンコールにもおすすめの1曲です。
【中級者向け】 (TO)

ライネッケ、もう一つの名曲

カール・ライネッケはドイツ・ロマン派を代表する作曲家・ピアニストでした。1860年にはライプツィヒのゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者としても活躍しました。フルートのための作品としては、ソナタや協奏曲も作曲しており、今でもよく演奏されているので、耳にされた方も多いのではないでしょうか。しかし、今回はライネッケのもう一つの名曲ともいえる『バラード』をご紹介したいと思います。
バラードとは、14世紀にとくに親しまれた音楽形式のひとつであり、暗く、抒情的な作風が特徴ともいえます。このバラードは作品番号から、最晩年の作品と思われます。もともとはフルートとオーケストラによるもので、楽譜のピアノ譜には原曲の楽器が記されていますので、イメージをふくらませる参考になるでしょう。ゆっくりとした悲愴感漂う中にもときおり見せる明るい響きがライネッケらしい、ステキな作品です。
【中・上級者向け】 演奏時間:9分20秒 (B)

爽やかロマンティック!(B-fl.Pf)

ヴィオラの原曲を原調のままバス・フルート用に編曲した、掘り出し物の楽譜のご紹介です。バス・フルート用と表記されていますが、ト音記号で記譜されており音域にも無理はないので、コンサート・フルートでも問題なくお吹きいただけます。
作曲家のカール・ライネッケは情緒豊かな作品を多く残しているドイツの作曲家で、フルートの作品では「協奏曲」が有名です。宮廷ピアニストや指揮者、音楽院の教授としても活躍し、グリーグやヤナーチェクなど歴史に名を残す作曲家を育てました。
3楽章からなるこの曲は彼の若い頃に作曲されたもので、全て通して15分ほどの驚くほど耳馴染みの良い作品です。 流れるようなピアノ伴奏に夢見るような旋律が乗る第1楽章は、最初の1フレーズでライネッケワールドに引き込まれてしまう、ゆったりと温かな幸福感に溢れた楽章です。 続く第2楽章は、軽やかでリラックスした雰囲気と、中盤に顔を出す感傷的な旋律との対比が印象的です。繰り返しの多い楽章ですが、肩の力の抜ける抜群の雰囲気で、聴いていて飽きることがありません。 可愛らしく、軽快なリズムがヨーロッパの農民のダンスを思わせる第3楽章。フルートで演奏するのが難しそうな箇所は、オリジナルとフルート版の二段譜になっています。素朴さと華やかさ、相反する要素が同居する賑やかさがあり、さらっとアンコール・ピースとして演奏するのも素敵です。
全楽章通して、この曲は基本的にハッピーです(笑)。透明感のある、耳に残るメロディーが心地良く、頑張りすぎず楽しく演奏していただくと良さが引き立つ作品です。発表会や、演奏会のメイン曲に華を添えるのに、きっと一役買ってくれるでしょう。
【中級者向け】 演奏時間:約15分 (AN)

ライネッケの隠れた小品はいかがでしょうか?

ライネッケの隠れた作品をご紹介いたします。
ドイツロマン派の作曲家、カール・ライネッケ。作曲家でありながら、ピアニストとしても活躍しました。ピアノ独奏曲を数多く残している中でフルート作品は数少なく、ソナタ「ウンディーネ」やフルート協奏曲は演奏する機会や聴く機会も多いことと思います。
今回ご紹介する作品は、「易しい小品」と題し、1〜2分程度の短い曲が6つ収録されたヴァイオリンまたはフルートのための小曲集です。一曲ずつテーマがあり、短い曲の中にも転調が組み込まれていて、曲によって雰囲気も異なります。軽快に流れるようなピアノ伴奏と共に、情緒豊かなライネッケの音楽を手軽にお楽しみいただける一冊です。ソナタや協奏曲を演奏会には取り上げるには少々長い・・・、もう少し易しいライネッケの作品を演奏したい、という方におすすめです。そんな時、この小品はいかがでしょうか?ライネッケの新たな魅力が発見できるかもしれません。
Primula veris プリムラ・ヴェリス/Serenata セレナーテ/Bitte お願い/Unbekummert sans souci 憂いなし/Air エア/Farandole ファランドール
(KM)

こんなロッシーニの主題もあります!!

ルミューザとルデュックのコラボ作品をご紹介します。
ルミューザはガリボルディやクラカンプ、ヴェルディと同時期に活躍した作曲家です。あまり知られていないかもしれません。フルートとピアノの為の「椿姫カプリース」という作品も残しています。ルデュックはM.モイーズの「ソノリテについて」の出版社で有名なルデュックです。ルデュックは出版社として、先生として、またギター奏者、ファゴット奏者として多方面で活躍していました。 この時代はオペラの有名な主題を使った変奏曲が多く作曲されました。しかし、どういう経緯でこの2人が一緒に作曲するに至ったかは不明です。
今回ご紹介する曲はロッシーニのオペラ、「チェレネントラ」の主題を使った変奏曲です。‘シンデレラの主題’と呼ばれることもありますが、童話の‘‘シンデレラ’’を元にした物語というだけで実際には内容は異なるようです。ショパンが変奏曲にしている作品もあります。ショパンの作品の方はご存知の方も多いかと思います。 ルミューザ&ルデュックもショパンと同じ主題を使っており、この主題は主人公のチェネレントラがオペラのフィナーレで歌う超絶技巧的な華麗なアリア「悲しみと涙のうちに生まれ」によるものです。 華やかで聴き栄えのする作品です。ショパンとはひと味違った‘ロッシーニの主題’是非演奏してみてください!
【中級者向け】 演奏時間:約5分30秒 (OU)

フルートで吹く「椿姫」 3

ルミューザはボルドーに生まれ、パリでトゥルーにフルートを師事しました。この作品は2003年に出版されたもので、「いつか人知れず」「乾杯の歌」「ああ、そはかの人か」「花から花へ」の4曲が使われています。使われている曲数は他の2作品と比べて多いのですが、変奏部分が短いため演奏時間はあまり長くありません。(パート譜が見開き2ページで終わっています。)ほとんどが中・高音域ですので、変奏部分が短くても地味にならず、フルートらしく輝かしい作品になっています。
【中級者向け】 (I)

イギリスの知られざるコンサートピース

ローランド・レヴェル (1867-1937)は、当時イギリスで活躍していた女流フルーティストの エディス・ペンヴィルの伴奏をしていたピアニストです。 ペンヴィルは1925年頃〜1939年までイギリスBBCのラジオに出演しており、レヴェルは彼女の作曲、編曲と伴奏をしていました。
フルートのオリジナル作品は、「CAPRICE AND ENFIN OP.12」と「TROIS PENSEES(三つの想い)OP.23」の2曲ですが、現在楽譜が手に入るのはこの作品のみです。初版は1923年でRudall,Carte&Co.より出版されました。前述のエディス・ペンヴィルに捧げられ、初演の詳細は不明ですが、レヴェルとペンヴィルによって初演が行われました。
日本では伊藤公一氏によって2003年に京都で演奏され、発売されたCD「フルーティスト伊藤公一氏のデビュー40周年を祝うコンサート」(※現在は廃盤)に収録されています。
この「TROIS PENSEES(三つの想い)」では三曲全てにフランス語の題名がつけられており、T「Je me demande」、U「Je crois-j’en doute!」 、V「Enfin!」をそれぞれ訳すと 「どうして?」「だと思う- いや、ちがう!」「やっぱり!」となります。
T「Je me demande」Con moto は疑問を投げかける美しい旋律を中心に構成されています。
U「Je crois-j’en doute!」はAllegro capricciosoとL’istesso tempoで構成されています。細やかな動きを見せたと思いきや、はたまたゆったりとしたメロディーをのぞかせる、題名の通り悩んでいる様子が伺える一曲です。
V「Enfin!」Allegro vivaceは最初から最後まで技巧的な連符が続き、何らかの結論が出たと感じさせます。
一度聴いたら忘れられない美しい旋律を持つこの作品。レパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
【中・上級者向け】演奏時間:約8分50秒 (M.R.)

ベートーヴェンの弟子による2つのオペラ・ファンタジー

フェルディナント・リースは1784年のボンに生を受けました。
1801年から4年間、ウィーンにてベートーヴェンに師事し、この時の体験をもとに「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンに関する覚書」を執筆しています。リースはウィーン、パリ、ストックホルム、ロシア、ロンドンで作曲はもちろん、ピアニスト、指揮者として活躍しました。死後、作品の多くは忘れ去られていましたが、近年になり録音、研究が進んでいます。
今回ご紹介する2曲は、ロッシーニのオペラ「アルミーダ」と「エジプトのモーゼ」を基にしたオペラ・ファンタジーです。ロッシーニがロンドン滞在中の1823〜24年に作曲されました。出版はリースが活躍していたロンドンから故郷ボンに戻った後に、ジムロック社より出版されています。
「幻想曲 第10番 OP.133/1 “アルミーダの主題よる” 」は、これより他に作曲された9曲の幻想曲がピアノの作品になっており、この10番でもピアノはフルートの伴奏ではなく、ピアノ作品の要素が強くなっています。フルートとピアノのアンサンブルとして演奏してみてはいかがでしょうか。
「幻想曲 第11番 OP.133/2 “エジプトのモーゼの主題による” 」(商品ID:35174)は10番よりフルートが際立った作品となっています。グラーフによる録音も残っていますが、現在は廃盤です。
技巧的、音楽的にみても華やかでプログラムに加えても面白そうです。
【中級者向け】(MR)

ロマン派のレパートリーを増やしませんか?

リーツは1812年にベルリンで生まれ、チェリストや指揮者、作曲家として活躍しました。4曲のオペラや3曲の交響曲、様々な楽器のための協奏曲のほか管弦楽曲や室内楽曲などの作品があります。このソナタは1871年頃に作曲され、4楽章からなっています。第1楽章はシンコペーションが印象的な楽章です。第2楽章は、ピアノが旋律を受け持ちフルートがオブリガート的な役割となっている部分が多く、美しい旋律が心に響きます。第3楽章は切なくなるような旋律で始まり、躍動的になる部分をはさみ、再び冒頭の旋律が現われ静かに終わります。第4楽章はうってかわってエネルギッシュな旋律が多い快活な楽章です。ウェーバーやシューベルト、メンデルスゾーン、シューマンなどのロマン派のレパートリーに是非このソナタも加えてみませんか?
【中級者向け】 演奏時間:約23分 (I)

知る人ぞ知る、名曲!

リヒャルト・レスラーは1880年ラトヴィア生まれの作曲家です。 ベルリン王位音楽院でピアノをバルトとエルンスト・ルドルフに、作曲法をブルッフに学びました。その後、母校でピアノと音楽理論の教授として働きながら創作活動を続け、1962年ベルリンで亡くなりました。
近現代の作曲家ではありますが、ブルッフやブラームスなどの影響を強く受けています。この曲も20世紀初頭の音楽というよりはロマン派の音楽のような印象を受けます。美しい和声とメロディー、ピアノとの多彩な掛け合い、まとまりのある楽曲構成でフルートの魅力を引き出しています。この曲を発掘したのはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴォルフガンク・ブラインシュミットで、孫のアレクサンダー・レスラーのピアノでCDも出ております。(ID:6550)まだあまり演奏会などでも取り上げられていない隠れた名曲です。新しいレパートリーに加えてみて下さい!
【中上級者向け】 (U)

堅苦しくない可愛い小品

ニーノ・ロータは『ロミオとジュリエット』『ゴッド・ファーザー』『太陽がいっぱい』等の映画音楽で有名なイタリアの作曲家ですが、フルートの入るクラッシックのレパートリーもいくつか作曲しています。
5曲からなるこの曲は、「親指の散歩」「セレナータ」「パヴァーナ」「ひなを抱えためんどり」「おもちゃの兵隊」とそれぞれ楽章に題名が付けられており、題名通りの可愛らしさと、ニーノ・ロータの映画音楽の雰囲気に通ずる曲想が楽しめます。
楽章によって、初心者の方でも演奏出来る難易度のものもあり、発表会の一曲、コンサートのアンコールなどにもお勧めの曲です。 
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (SH)

合唱界の有名人

ラターは現在も活躍しているイギリスの作曲家です。おもに合唱の分野で活躍し、指揮者でもあります。作品は器楽曲もありますが、ほとんどが宗教音楽や合唱の曲です。 自ら『ケンブリッジ・シンガーズ』という合唱団を結成し、さらに専用レーベルも設立するなど、大変意欲的です。日本でも多くの合唱団がラターの曲を取り上げているそうです。
この曲はもとはフルートとハープシコード、弦楽合奏の編成で作られたものです。 6つの楽章からなり、楽章ごとにさまざまな雰囲気が楽しめます。 全体的にポピュラー音楽のような親しみやすく美しい旋律が印象的です。 他の人とは一味違った曲をお探しの方におすすめします!
T.Prelude  U.Ostinato V.Aria W.Waltz X.Chanson Y.Rondeau 
【中級者向け】 演奏時間:16分 (U)

抒情小詩

サン=サーンスはフランスの作曲家、86歳でその生涯を終えるまで長い間作曲活動を続けられた人でした。その作品は多岐にわたり現代でも親しまれています。この曲は晩年にフルートと管弦楽のために書かれた作品です。
「オデレット」とは、叙情小詩という意味。ニ長調の小品で、付点のリズムを生かした流れるような美しいメロディーラインが特徴的。「ふと空を見上げると青空に白い雲」そんな瞬間を切り取った印象です。奏者のセンスが光る一曲です。
【中級者向け】 演奏時間:約7分30秒 (E)

忘れられた19世紀フランス・オペラ4

《歌劇「プロゼルピーヌ」よりパヴァーヌ》
タファネルはカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)と公私にわたり交流し、タファネルの演奏を想定して書かれた作品や曲中のパッセージがいくつもあります。タファネルはそれらの中からアンコール・ピースとして使える美しいものや、技巧をアピールできる華やかなものをピアノ伴奏版のピースとして出版しました。カップリングの〈夕べの夢〉は《アルジェリア組曲 op.60》の中の一曲です。
サン=サーンスは《動物の謝肉祭》、《交響曲第3番 op.78》(オルガン付き)や各種の協奏的作品により器楽作曲家として知られていますが、オペラ作曲家のイメージはほとんどありません。実は彼は10曲以上のオペラ作品を残しており、劇場での成功を夢見て作曲を続けていたのです。残念ながら、今日までレパートリーとして残ったのが唯一《サムソンとダリラ op.47》でした。とはいえ、来年2021年はサン=サーンス没後100周年ですので、すでにヨーロッパではリヴァイヴァルに向けて準備が進められています。2014年に《野蛮人》の全曲録音のCD化。2017年には《銀のベル》がオペラ=コミック座で再演、《アスカニオ》はスイスで演奏会形式により再演され、どちらもCD化されています。《プロゼルピーヌ》は舞台にはかけられていませんが、同年に全曲録音CDが発売されました。いずれも世界初録音です。
プロゼルピーヌはギリシア神話ではペルセポネー、ローマ神話ではプロセルピナという女神で登場しますが、それとは直接関係なく、オペラ 《プロゼルピーヌ》(1887年初演)では主人公の高級娼婦の名前です。サバティノに好意を寄せていますが、彼は友人のロレンツォの妹のアンジョラと婚約していました。恋の駆け引きがあり、プロゼルピーヌは手下のスクアロッカにサバティノを偵察までさせます。結局サバティノとアンジョラは結婚式を挙げることになり、式の直前にプロゼルピーヌはサバティノに愛を告白しますが、やはり拒否されてしまいます。それでも嫉妬に燃えるプロゼルピーヌはアンジョラに切りかかろうとし、サバティノに押しとどめられ、観念したプロゼルピーヌは二人を祝福して刃を自らに向け果てるのでした。
《プロゼルピーヌ》のパヴァーヌは第一幕第四場と第五場の間に演奏されます。プロゼルピーヌの館にサバティノがロレンツォと連れ立って現れますが、素直になれないプロゼルピーヌはサバティノにつれないそぶりを見せるのが第四場。サバティノがロレンツォと別れて一人プロゼルピーヌのもとへ行き、恋の駆け引きをするのが第五場。このパヴァーヌはロレンツォが気を利かせてサバティノを一人にし、プロゼルピーヌのもとへ向かうサバティノの物憂げな恋の気分を表しています。
(2020年11月記) (M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

サラサーテ:カルメン・ファンタジー

ボルヌの「カルメン」を吹いてしまったアナタ、それで満足してしまってはイケマセン。フルートの世界ではボルヌの「カルメン・ファンタジー」が有名ですが、クラシック音楽全体でみるとサラサーテの「カルメン・ファンタジー」の方がずっとよく知られているのです。ボルヌに飽き足りなくなったフルーティストは、フルート用に編曲してサラサーテの「カルメン・ファンタジー」を演奏会で取り上げたり、録音もしていますが、その楽譜は出版されていませんでした。そのため、演奏したい人はオリジナルのヴァイオリン版をもとにフルートでは演奏できない重音や幅広い音域、弦楽器独特の奏法を自ら修正して演奏する必要がありました。
これはそのような大変さを一気に解消してくれる、出版を待たれていた楽譜なのです。お馴染みのフルートの名手、ダヴィデ・フォルミザーノが編曲をしたもので、重音、音域の手直し以外は、調性、長さなど原曲と全く変わらない編曲になっています。そのためかなり高い難易度ですが、挑戦してみたいと思う方は、是非、名ヴァイオリニストになったつもりで演奏してみてください。フォルミザーノが録音したCD(CD-ID:7155)も出ています。
【中・上級者向け】 演奏時間:約12分10秒 (SR)

ジャズとクラシックの融合

1961年、チューリッヒに生まれ、現在ニューヨークに住む作曲家でサックスとフルート奏者、ダニエル・シュナイダーの曲をご紹介します。シュナイダーは日本のクラシック界ではまだほとんど名前が知られていませんが、ジャズの世界では、ピアノのケニー・ドリュー・ジュニアやサックスのリー・コニッツとのコラボレーションなどで知られ、CDも14枚がリリースされています。クラシック系の作品も多く「交響曲 第4番」はデヴィッド・ジンマン指揮のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の委嘱で作曲・演奏され、ベルン歌劇場のためにシェークスピアの「テンペスト」の音楽を作曲をするなど目覚しい活躍をしています。また、フルートに関する作品も多く、ジャズのイディオムとクラシックを融合させた水準の高い作品を発表しています。これらの曲は、小品を除けばいずれも、ハーモニックス、グリッサンド、四半音などの特殊奏法が出てきますが、楽譜自体は読みにくいものではなく、特殊な記譜や表記はありません。ゲイリー・ショッカーやマイク・マウワーだけでなくダニエル・シュナイダーももっと演奏されて良いのではないか…と思っていたら、2004年10月のエマニュエル・パユの来日公演のプログラムに「ソナタ」が入っていました。
「ソナタ」は、現代都市の複合文化の感覚を表現した第1楽章「マンハッタナイト」、四半音、グリッサンドなどを使って印象派の絵画風に仕上た第2楽章「大気のしなやかな波を通って」、ラテンのダンスにクラシックのロンドの形をつけた「ブラジレラ」の3楽章からなっています。
演奏時間:約20分 (SR)

「フー・ノーズ(WHO NOSE)」は1979年に亡くなったジャズの名ベーシスト、チャールズ・ミンガスを描き、ピアニスティックなベースで知られた彼のベースを意識してか、ほとんどピアノの右手とのユニゾンで終止します。曲の終わりには「ヒー・ノウズ(HE KNOWS)」というタイトルとの掛詞が記されています。
演奏時間:約3分

「チャーリー・パーカーの肖像」は、もちろん不世出のアルト・サックス奏者チャーリー・パーカーの演奏を曲にしたもので、こちらは鍵盤楽器とは全く独立したフルート・パートになっています。四半音、グリッサンドなどの奏法を使った難易度の高い曲です。
演奏時間:約3分

「バロックロッホネス」は名前の通り、ロッホ・ネス湖の怪獣「ネッシー」を描きながらも、曲の構造はバロックのトリオ(ソナタ)の形で、対位法、通奏低音の書法を使い、いかにもネッシーが出てきそうなフルートと鍵盤のトレモロから始まり、ネッシーが泳いでいるような上下にうねる音型など「面白真面目」でユーモラスな小品です。
演奏時間:約3分

晩夏にむけていかがですか?

フルーティストにお馴染み、大人気のゲイリー・ショッカーの作品をご紹介します。
ショッカーはアメリカのフルーティストであり作曲家、ピアニストとしても活躍しています。自身がフルーティストということでフルートに関わる作品を多く作曲しています。 ショッカーの作品は耳触りのいい音楽や遊び心がたくさん詰まった曲、興味を惹かれるタイトルetc・・・魅力的です。
その中でも、今回ご紹介します「a latesummer night’s dream」はとても爽やかで夏にオススメの曲です。この題名に何となく見覚えはありませんか?メンデルスゾーン作曲の“真夏の夜の夢〜A Midsummer Night’s Dream〜”に似ていますね。ショッカーはメンデルスゾーン作曲の“真夏の夜の夢のスケルツォ”から夜の雰囲気をよく感じ取れると言っているそうです。「a latesummer night’s dream」はショッカー自身が大好きな“真夏の夜の夢〜A Midsummer Night’s Dream〜”からインスピレーションを得て生まれた曲と言えるでしょう。
夏の終わりに、楽しかった夏を思い出しながら演奏してみて下さい♪
【中級者向け】 演奏時間:6分30秒 (OU)

すべてのフルーティストへ

アメリカの作曲家、ゲイリー・ショッカーは本当に多作家です。有名なエアボーンをはじめ、フルートとピアノの編成以外でも2本のフルートや2本のフルートとピアノなどアンサンブル作品も数多く作曲し、出版されています。
今回ご紹介するこの『踊りと白昼夢』は、11曲の小品からなり、「ギャラント」「図書館にて」など、それぞれにタイトルがつけられています。親しみやすいメロディーですので、どなたにでも楽しんでいただけるでしょう。
【中級者向け】 (B)

オールド・ファッションド・アメリカ

ガーシュウィンが出入りしていたニューヨークのマンハッタンにある一区画ティン・パン・アレイは、アメリカのミュージカルの創成期を築き上げた場所として有名です。まさにその創成期、ガーシュウィンより少し前に活躍した作曲家にハリー・フォン・ティルザーとアルバート・フォン・ティルザーの兄弟がいます。ハリーは数々のブロードウェイ・ミュージカルをヒットさせ、また、歌やピアノの小品も残しています。「金の鳥かごの鳥」は「彼女は金の鳥かごの鳥でしかない…」というアーサー・ラムの詩にハリーが曲を付けて1900年に大ヒットした繊細な美しい曲で、往時のアメリカ音楽の雰囲気を良く伝える名曲です。現代の人気作曲家ゲイリー・ショッカーがこの曲をもとにファンタジーを作り、1世紀をまたぐ、同じアメリカの作曲家同士のコラボレーションが実現しました。 ちなみにハリーの弟のアルバートは、アメリカのメジャー・リーグで7回表終了後に観客全員で歌う「私を野球に連れてって!」の作曲者です。
(SR)

現代の多作家ショッカーによる爽やかな作品です。

この曲は、2005年にイギリスの自然愛好家ハンナ・マニーの依頼により作曲されました。そのため、Hannah’s Glade(ハンナの空き地 ※glade=森林の空き地)というタイトルになっています。演奏時間は約7分ですが、冒頭フルート・ソロが約1分半あります。こちらの楽譜の表紙写真のような情景を思い浮かべ、森林の間を通る爽やかな風を想像しながら演奏してみて下さい。全体的にテンポはあまり速くなく(楽譜の最初に 四分音符=80-84と指定されています)、技巧的に難しいところもあまりないので、ショッカーの作品を吹いてみたいけれど、どれもちょっと難しそうだから…と躊躇されていた方に是非おすすめします!!
【中級者向け】 (I)

花の季節にこんな曲はいかがでしょうか? 2

アメリカのフルーティスト兼作曲家としてすでにおなじみ、G.ショッカーの作品です。小さな花(Little flower)と題されたこの曲は1999年の5月に書かれました。シンコペーションのピアノの前奏に乗って、フルートの伸びやかな旋律が流れるように登場します。4/4拍子、ニ長調で書かれた明るい曲想は、題名の通り小さな花の愛らしさを十分に表現しています。途中数小節ほど変拍子の箇所がありますが、難易度はさほど高くないでしょう。4分ほどの小曲ですが、さわやかでかわいらしい作品です。ぜひチャレンジしてみてください。
(A)

ピッコロとピアノのイタリア風?(Pic.Pf.)

ショッカーのピッコロとピアノの作品はいくつかありますが、今回ご紹介するのは「ピッコロ・イタリアーノ」という曲です。この曲はイタリアのフルーティスト、ラファエーレ・トレヴィザーニとその夫人のピアニスト、パオラ・ジラルディに献呈されており、楽しいタイトルが添えられた3曲から構成されています。
爽快な旋律の合間にあるユニークな旋律が魅力的な1曲目、Fellini was here「フェッリーニはここにいた」
静寂の中に不穏な空気が漂う2曲目、Ricordarsi「忘れないように記憶を残す」
民族舞曲サルタレッロのリズムで戯れる軽快なダンス、3曲目、Polpettina「小さなミートボールの冒険」
ショッカーの楽しい世界をピッコロでいかがですか?
【上級者向け】 演奏時間:6分程度 (NS)

決して後悔はさせません・・・!?

とても不思議なタイトルをもつ、ちょっと気になる作品をご紹介します。
『後悔と決心』皆さんこのタイトルを聞いて、どんな曲だろうと思いませんか? 現代作曲家、フルート奏者として、多くのフルート作品を手掛けてきたアメリカ出身のゲイリー・ショッカーは、1986年に知人の80歳の誕生日を祝うために委託され、フルートとオーケストラ用にこの曲を作曲しました。 1988年ペンシルバニア大学にて、アランバーニーの指揮に合わせて初演され、今では同じタイトルをもつCDも制作されるようになりました。
この曲は、タイトルから想い描かれるような暗く堅苦しい音楽とは正反対で・・・ ホッと一息つくようなとても明るくさわやかなピアノのメロディーで始まります。つい聴きいってしまうようなメロディーに合わせて、フルートの美しい音色があとから追いかけるように、曲のタイトルからは想像もつかない綺麗な作品です。 途中、変拍子もあり、まるで今までの音楽から一変し、嵐のように気持ちの変動を激しく音に表現したとても面白い作品です。 『後悔』そして『決心』といったタイトルから誤魔化されてしまうほど、とてもショッカーらしいユニークなスタイルでできた作品ですので、ぜひ演奏会のプログラムに取り入れてみては如何でしょうか!!
【中級者向け】 (M)

デュエットでもソロでも踊れる「3つの踊り」

ゲイリー・ショッカー、1959年生まれ、この現代きっての多作家はフルート作品の楽譜を大小合わせて200曲以上出版しています。もちろん、作曲した曲の数はそれをはるかに上回るでしょう。
いくら人気があるとはいえ、さすがに200曲以上もあるこれらの曲をすべて把握するのは難しいでしょうが、中でも特に演奏されたる機会が多い人気のある曲があります。
フルートとピアノでは「後悔と決心」や「エアー・ボーン」、2本のフルートとピアノでは「3つの踊り」などが代表的な作品です。「3つの踊り」はこれまで演奏会などでもよく取り上げられ、曲の親しみやすさもあって、人気作品の筆頭に挙げられるほどの曲になってきました。このような作品をさらに多くの人が演奏できるようにしたのがこのフルートとピアノ版の楽譜です。プログラムの中の1曲として、またアンコールなどにも使える作品なので、利用範囲の広い楽譜です。
原曲の、2本のフルートとピアノのための「3つの踊り」とともにご活用ください。(楽譜 ID:25962
【中級者向け】(SR)

有名な歌曲をフルートとピアノで!

シューベルトは大変多くの歌曲を作曲し(なんと600曲も!)、ドイツ歌曲を大きく発展させた作曲家です。もちろんピアノ曲、交響曲など、ほかにもたくさんの名曲がありますが、やはり歌曲の王と呼ばれるだけあってシューベルトと聞くとまず最初に歌曲をイメージされる方が多いのではないでしょうか?今回ご紹介する作品はそんな魅力溢れるシューベルトの歌曲の中からテオバルト・ベームが6曲選曲してフルートとピアノ用に編曲した作品です。
内容は以下の6曲です。
歌曲集「冬の旅」より第1曲「おやすみ」、第5曲「菩提樹」
歌曲集「白鳥の歌」より第10曲「漁師の娘」、第4曲「セレナード」、第12曲「海辺にて」、第14曲「鳩の便り」
編曲者ベームはベーム式フルートの発明者でありますが、すばらしいフルート奏者、作曲者、編曲者でもありました。この作品はいかにもフルートの名手らしい技巧をちりばめながら、ただの技巧的な編曲になるのではなく、すべてに流れるようなシューベルトの美しい旋律をお楽しみいただくことができる、まさに名編曲といわれる作品となっています。1曲が約5分程度なので、1曲だけピックアップしてみるのもいいかもしれません。フルート版のシューベルトの歌曲、レパートリーのひとつに入れてみてはいかがですか?
【中・上級者向け】 演奏時間:約25分 (NS)

冬のおすすめ

シューベルトは1820年代に入ってから体調を崩し、入院を繰り返しました。そんな生活の中で1827年に作曲されたのが、この歌曲集「冬の旅」です。「美しき水車小屋の娘」「白鳥の歌」と合わせて三大歌曲集と呼ばれています。原曲では全24曲ですが、この楽譜は10曲が選曲され、編曲されています。
1. お休み 2. 郵便馬車 3. 勇気 4. 嵐の朝 5. 辻音楽師 6. かじかみ 7. あふれる涙(水の流れ) 8. 菩提樹
9. 宿屋 10. 幻の太陽  
「歌曲王」シューベルトの世界を、是非フルートでもお楽しみ下さい。
【中・上級者向け】 (I)

ジャズ風の軽やかなフルート・ソナタです

近年再評価が進んでいる、E.シュルホフのフルート・ソナタです。
シュルホフはチェコに生まれ第二次世界大戦中に強制収容所で亡くなるまで、指揮者、ピアニストとしても活躍した作曲家です。作品はジャズや前衛的な作風のものが中心で、このフルート・ソナタも、軽やかで流れのあるピアノ伴奏とそれに乗るフルートのジャズ風のリズムが印象的です。全四楽章。
CDも数種類発売されています。新たなレパートリーの一曲として、いかがでしょうか。
【中・上級者向け】 演奏時間:約12分 (AN)

ロマン派のレパートリーを増やしましょう。

ロマン派を代表する作曲家の一人、シューマンの作品をご紹介いたします。
1849年にクラリネットとピアノの為に作曲され、「夕べの小品集」という表題が付けられました。ヨハン・ゴットリープ・コッテのクラリネットとクララ・シューマンのピアノでシューマンの家で私的に初演されたと言われています。クラリネットはもちろん、ヴァイオリンやチェロで演奏されることもあり、知っている方も多いのではないでしょうか。3分半から4分程度の短い3曲からなる、しっとりとロマンティックな旋律とピアノの掛け合いが美しい大人の雰囲気の作品です。原曲のクラリネットの深く暖かい音色をイメージして歌い上げてみてはいかがでしょうか。
T. Zart und mit Ausdruck
U. Lebhaft, Ieicht
V. Rasch und mit Feuer
【中級者向け】 (U)

新しいレパートリーにどうぞ。

2010年が生誕200年記念だったロベルト・シューマンは、ご存じのとおりドイツロマン派の大家ですが、残念ながらフルートのためのオリジナル作品は書いていません。今回ご紹介する曲もオリジナルはチェロとピアノのためのものですが、「3つのロマンス」同様他の楽器でも演奏されることの多い佳曲です。「民謡風」というタイトルからもわかるように、派手なテクニックを披露する曲ではありませんが、親しみやすい快活で明朗な作品になっています。1曲3〜5分程度の短い小品5曲からなっていますが、必ずしも全部まとめて演奏する必要はなく、アンコールなどに1、2曲取り上げるのもいいでしょう。ロマン派のフルート曲が少ない中、シューベルトやブラームスのプログラムに加えてみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 (T)

シューマン「歌の年」に作曲した歌曲(Fl.Pf)

フルートでもよく演奏される《3つのロマンス》の他、ピアノ曲《子供の情景》や4曲の交響曲で知られるドイツ・ロマン派を代表する作曲家、ロベルト・シューマンは、1840年代に《リーダークライス 作品24(ハインリヒ・ハイネの『歌の本』からの詩)、作品39(ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフの詩)》《ミルテの花 作品25(ゲーテやハイネなどの詩)》《女の愛と生涯 作品42(アーデルベルト・フォン・シャミッソーの詩)》《詩人の恋 作品48(ハインリヒ・ハイネの詩)》といった多くの歌曲を作曲しています(「歌の年」とも呼ばれています)。
この曲集では、《詩人の恋》から第1曲〈美しい五月に〉、《リーダークライス 作品24》から第5曲〈私の苦悩の美しいゆりかご〉、第9曲〈ミルテとバラを持って〉、《12の歌 作品35》から第8曲〈ひそやかな愛〉の4曲を取り上げ、フルートとピアノ用に編曲してあります。編曲者のエリザベス・ウォーカーは、単に歌の部分をフルートにするだけではなく、ピアノの前奏、後奏もフルートに割り振るなどして、より豊かで演奏し応えのある曲にしています。シューマンの歌曲は憂いを帯びた、もの悲しい雰囲気がありますが、どれも心にうったえる美しい響きを持っています。是非演奏してみてください。
【中級者向け】(B)

シューマンって、やっぱり素敵

この作品はもともとヴィオラ(ヴァイオリン)とピアノのために書かれた曲(1851年)で、当時デュッセルドルフ楽友協会のコンサートマスターを務めていた友人ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヴァジレフスキーに捧げられました。4つの小品からなる曲で、あえて標題はつけられていません。曲そのものから感じる、それぞれの「おとぎ話」の世界を奏者が創りあげていくことこそ、この作品の醍醐味でしょう。
フルートへの編曲はバイエルン放送交響楽団の首席フルート奏者であるヘンリク・ヴィーゼが行っています。移調はされておらず、原調を生かしてあります。4曲全て通しても15分ほどで、アンコールにどれかを抜粋しても、全曲通してステージのプログラムに加えても使えます。繊細で美しく、ときに悲しく…言葉では表現しきれない魅力があります。フルートの楽譜が今まで見当たらなかった曲です。ぜひ、聴いて、演奏して、味わっていただきたい佳作です。
第1曲:Nicht schnell(速くなく)/約3分20秒
第2曲:Lebhaft(活き活きと)/約4分
第3曲:Rasch(急いで)/約2分40秒
第4曲:Langsam, mit melancholischem Ausdruck(ゆっくりと、メランコリックな表現で)/約5分
(YS)

クリスマス・ジャズ(Fl.Pf)

オーストリアの作曲家オットー・M.シュヴァルツとジャズ・トロンボーン奏者レオンハルト・パウルによるクリスマス・ジャズ曲集です。トロンボーン奏者のレオンハルト・パウルは、ウィーンで活躍する金管バンド「ムノツィル・ブラス」の創設者の一人で、演奏だけでなく作曲や編曲も担当しています。ご紹介するクリスマス・ソングは、彼らのオリジナル作品が多数収録された曲集で、定番曲ではないクリスマス・ソングをお探しの方におすすめです。ジャズ特有のスイングやアーティキュレーションは、基本的な形ばかりなので初めてジャズを演奏される方も気軽に楽しめます。
また巻頭に二次元コードが付いており、読み取ると伴奏トラックへつながりカラオケ伴奏で演奏を楽しむことができます。いくつか選んでホーム・パーティーのBGM演奏にもおすすめです。1曲の演奏時間は約2〜3分、ジャズの軽快で明るい曲や落ち着いた雰囲気の曲など幅広く収録されています。今年のクリスマスは、素敵なジャズ・フルート演奏とともにお楽しみください。
【初・中級者向け】(TO)

フルーティストには馴染みない!?シベリウスの作品です

シベリウスは1865年フィンランドに生まれました。フィンランド人で初めて国際的に高い評価を得た作曲家です。交響曲、交響詩やバイオリン協奏曲に加え、劇音楽の作曲家としても活躍しました。
今回ご紹介する曲は、劇音楽「スカラムーシュ 作品71」の中に出てくるフルートソロの部分をフルートとピアノの編成に編曲したものです。この作品はパントマイムのための音楽として1912年に作曲されました。色男スカラムーシュの登場により夫婦仲がもつれ、殺人まで起きてしまうという愛憎悲劇を演じる舞台作品です。スカラムーシュに妻を連れ去られた夫がひとりでワインを飲むシーンで演奏されるのがこのフルートソロです。 とても美しいメロディーで、短いなかでもシベリウスの世界を味わっていただけると思います。
【初・中級者向け】 演奏時間:3分20秒 (OU)

発表会にいかがでしょうか?

ジルヒャーは合唱曲として親しまれている「ローレライ」を作曲したドイツの作曲家です。「うつろな心」をテーマにした変奏曲というとフルートではベーム、ピアノではベートーヴェンのものが良く知られていますが、それらに劣らずこのジルヒャーの作品はとても上品で素敵な曲です。5つのヴァリエーションがあり、どのヴァリエーションも演奏しやすく華やかですので、発表会の曲探しでお悩みの方におすすめです。
【中級者向け】 演奏時間:12分30秒 (E)

ピッコロの初恋(Pic.Pf)

シルヴァはブラジル出身の作曲家でフルーティストでもあります。 「ショーロ」と呼ばれる19世紀にリオデジャネイロで生まれたポピュラー音楽の世界で 活躍したそうですが、わずか26歳で亡くなっています。
この曲は爽やかで愛らしく、駆け出したくなるようなワルツで、 まさに「初恋」というタイトルがぴったりです。 なんとなく優雅な雰囲気もあり、数年前に化粧品会社のCMに使われたというのも納得の おしゃれな曲です。 演奏会などにデザート感覚で取り入れてみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約2分30秒 (U)

新刊紹介(Pic.Pf)

作曲者のパタピオ・シルヴァは1880年リオ・デ・ジャネイロ生まれ。ブラジルのフルート界の草分けとして活躍しましたが、惜しくも1907年にわずか26歳で亡くなっています。しかしその演奏はレコードが残っていて今も聴くことができます。基本はクラシックですがショーロなどブラジル音楽の影響も感じられます。
今回ご紹介する曲はポルカとあるように軽いタッチの楽しげな曲で、踊り出したくなるような軽快なメロディが印象的です。原曲はフルートですが、この楽譜はボーマディエがピッコロ用に手を入れてあります。3分半ほどの短い曲ですが、ちょっとした演奏会に、またアンコールにも良さそうです。
【中級者向け】 演奏時間:約3分30秒 (T)

力試しにいかがでしょうか??

作曲家、演奏家、教育家として、ヨーロッパ中に名声を轟かせ活躍したポール・タファネル。 1877年、パリ音楽院管楽器科における常任入学審査員になったタファネルは、学生のために 年度末試験(コンクール)の初見演奏として、ピアノ伴奏付き課題曲【アレグロ・スケルツァンド】【アレグロ・グラツィオーソ】を作曲しました。 試験曲とあって、わずか全30小節ほどのとても短い曲ですが、様々なリズムや音域移動、またアーティキュレーション、テクニックや音楽性が求められる難易度の高い曲です。 よく知られている「フォーレ:コンクール用小品」は、コンクールの課題曲(最終試験)として作曲された作品ですが、今回ご紹介する曲もそれぞれの曲の演奏時間が約1分程の短い曲なため、プログラムの最後やアンコール等で演奏してみても良いでしょう。 一度、力試しにチャレンジしてみてはいかがでしょうか・・・。
(M)

力試しにいかがでしょうか?? 2

「フランス・フルート楽派の父」といわれるポール・タファネル。彼は、フルーティストのバイブルとも言うべき「17の日課大練習」(ゴーベールとの共著)などの教則本や、「ファンタジー」「アンダンテ・パストラルとスケルツェッティーノ」「『魔弾の射手』によるファンタジー」「『ミニヨン』によるグランド・ファンタジー」など多くの素晴らしい作品を書いています。
今回ご紹介する「アンダンティーノとアンダンテ」はそれぞれ1883年と1884年にパリ音楽院の初見用課題曲として作曲されました。あまり知られていませんが、短いながらも美しくかわいらしい曲ですのでアンコールなどでさらりと演奏してもステキです☆
【中級者向け】 演奏時間 アンダンティーノ:約1分15秒、アンダンテ:約1分20秒 (I)

忘れられた19世紀フランス・オペラ3

タファネルによるオペラを基にした華麗なフルート独奏作品、一つ目はレオ・ドリーブ(1836-1891)の《ニヴェルのジャン》(1880年初演)を取り上げます。ドリーブは《コッペリア》や《シルヴィア》などのバレエ作品が現在でもよく演奏されますが、彼のオペラは《ラクメ》が知られている程度です。この《ラクメ》も《ニヴェルのジャン》もともに「オペラ=コミック」に分類され、前回までご紹介した「グランド・オペラ(グラントペラ)」と厳密には異なります。「コミック」と付くため、元来は滑稽で軽いものが主体で、グランド・オペラは壮大な歴史物や悲劇、といった内容での区別もなされていましたが、その後は台詞が入る小規模なオペラか、全てのテキストが歌われてバレエの場面もある大規模なオペラか、という違いに落ち着きました。ただし当時は、グランド・オペラはオペラ座(サル・ル・ペルティエ/ガルニエ宮)、オペラ=コミックはオペラ=コミック座(サル・ファヴァール)と上演される劇場が限定されており、両者の間には厳然たる格式の差が存在し、当然、オペラ座で作品が上演される、というのは作曲家にとってステータスでした。
今でこそビゼーの《カルメン》はフランスを代表する「オペラ」とみなされていますが、創作当時、駆け出しの作曲家であったビゼーにはオペラ座からお呼びがかからず、初演してもらえたのはオペラ=コミック座だったのです。オペラ座はただの劇場ではなく、社交界の場としても機能していたので、威信を保つために保守的な路線となり、フランスの若手作曲家の新作を取り上げることには消極的だったのでした。
《ニヴェルのジャン》も歴史に題材をとっており、形式はオペラ=コミックですが、内容はグランド・オペラに近いものです。15世紀、主人公はモンモランシー男爵の息子でしたが、フランス王国の統一を進めていたルイ11世とブルゴーニュ公シャルルとの争いにおいて、父に背いてブルゴーニュ公の側につき、父の怒りを買って勘当され、フランドル地方(現在のベルギー)のニヴェルに逃げたことから「ニヴェルのジャン」と呼ばれるようになりました。フランス史では有名な逸話で、様々な俗謡が生まれたほどです。
ドリーブのオペラも、その史実に恋物語を追加し脚色されていますが、ルイ11世とシャルルの戦争がクライマックスとなり、激しい戦闘で両腕を失ったジャンは再びフランス軍と対峙することをあきらめ、恋人のアルレットと立ち去るのでした。ファンタジーとして用いられているモチーフは以下の通り。「マンドラゴラのバラード」「射手の行進と道化の三重奏」「風車の物語」です。オペラの成功を受けて初演の翌年に作曲され、当時オペラ座管弦楽団の同僚であったドンジョンに献呈されました。
(2020年6月記) (M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

忘れられた19世紀フランス・オペラ5

タファネルによるオペラを基にした華麗なフルート独奏作品、二つ目はアンブロワーズ・トマ(1811-1896)の《フランチェスカ・ダ・リミニ》(1882年初演)を取り上げます。
トマは19世紀フランスを代表するオペラ作曲家の一人で、コンセルヴァトワール(パリ音楽院)の院長を務めるなど、フランス楽壇の重鎮でした。これは彼の最後のオペラ作品となり、プロローグとエピローグにバレエの場面がついた四幕のグランド・オペラです。フランチェスカ・ダ・リミニ(1255-1285頃)についてはダンテ(1265-1321)の『神曲』の第5歌に取り上げられ、さらにそれを題材としたチャイコフスキーの管弦楽のための幻想曲(1876)やラフマニノフのオペラ(1906年初演)が書かれているため、物語自体は忘れられたとまでは言えないかもしれません。トマのオペラも、『神曲』をベースにしています。史実のフランチェスカは、父グイド・ダ・ポレンタの意思により敵対するマラテスタ家との和解のために政略結婚させられます。相手のジョヴァンニは足が不自由で、容姿も醜かったため、弟パオロが替え玉として結婚式に出席します。騙されたフランチェスカはパオロと恋に落ち、結婚の後もパオロと密会したため、ジョヴァンニに現場を押さえられ2人とも殺されてしまうという悲恋の物語です。
フランチェスカを責めるのは酷な部分もありますが、ダンテは不義密通の罪により2人を地獄篇に登場させました。『神曲』は地獄篇、煉獄篇、天国篇の三部からなり、ダンテが古代ローマ詩人ウェルギリウスと出会い、彼に導かれてそれぞれの国を遍歴する物語です。本来煉獄は天国への可能性が残されているものの、地獄は永遠に罰を受け続ける救いのない世界であるのに対し、トマのバージョンでは地獄にいるフランチェスカとパオロにも最後に許しが与えられます。
タファネルの編曲では、プロローグより第一場、地獄の門の前でウェルギリウスが登場する場面と、第3幕のバレエより、アダージョ、サルタレロ(イタリア起源の舞踊)、セビリャーナ(スペイン起源の舞踊セビジャーナス)の3曲を取り上げ、後半2曲の華麗なダンスで盛り上げて締めくくります。献呈者は明記されておらず、タファネル自身が演奏したという新聞雑誌記事も見つかっていませんので、初演者は不明です。タファネルによる一連の「ファンタジー」がこの曲で打ち止めになっていることと関係があるのか、残念ながら今となっては確認する術がありません。
(2021年4月記) (M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

国歌作曲者によるフルート・ソナタ

タクタキシヴィリは1924年生まれのグルジア(旧ソヴィエト連邦の構成国の1つ)の作曲家です。オペラや2曲の交響曲、4曲のピアノ協奏曲、2曲のヴァイオリン協奏曲、またチェロ協奏曲などを書いており、トビリシ音楽院在学中にグルジア国歌を作曲しました。
快活な第1楽章と第3楽章も魅力的ですが、間にはさまれた第2楽章の美しさは格別です!
ロシア音楽のレパートリーに是非どうぞ☆
【中・上級者向け】 演奏時間:約17分 (I)

かわいらしいピアノ小品集

収録曲:1・朝の祈り、5・木の兵隊の行進、6・新しいお人形、8・お人形の葬式、11・マズルカ、15・イタリアの歌、16・フランスの古い歌、18・ナポリ人の歌、21・甘い夢、24・辻音楽師    
チャイコフスキーは交響曲やバレエ音楽が有名ですが、この曲はシューマンの「子供の情景」に影響を受けて、可愛がっていた甥のために書かれたピアノ曲が原曲で、平易なメロディーの中に優しさや愛情が感じられる小品集です。本当は全部で24曲からなりますが、この楽譜では10曲をフル−トとピアノにアレンジしてあります。初心者の方でも吹けますし、中上級者の方にもチャイコフスキーの甘く美しいメロディーを味わっていただきたいと思います。
【初級者向け】 (T)

人気のあの曲が再登場!

「レンスキーのアリア」という名称で親しまれているこちらの楽曲は、パユの演奏によりフルーティストの間で大変話題になりました。原曲は歌劇「エフゲニー・オネーギン」で演奏される、テノール歌手によるアリアです。一度聴いたら耳に残る旋律は大変美しく、フルートでよく演奏されます。
こちらの楽曲は、今までUNIVERSAL社から出版されていましたが、残念ながら絶版になりました。しかしこの度、米大手出版社のALRY社から同楽曲が出版されました。こちらの版はチャイコフスキーと同年代に活躍した名ヴァイオリニスト、レオポルド・アウアーの編曲をもとにしています。楽曲解説と歌詞が英語で記載されています。C管用とH管用のパート譜が別々で用意されているので、吹きやすい音域の方で演奏してみてください。
※パユ校訂版とは編曲の相違がございます。
【場面のあらすじ】詩人のレンスキーは、親友のオネーギンを小規模なパーティーに誘います。実際のパーティーは大規模で、オネーギンは場になじめません。その上、会場にいる参加者に陰口を叩かれ激怒します。侮辱されたと感じたオネーギンは復讐を企み、レンスキーの恋人オルガをダンスに誘います。二人のダンスを目撃したレンスキーは腹を立てます。レンスキーはオネーギンに決闘を申し込むものの、不安と複雑な心境に包まれます。そんな場面でレンスキーが歌うのが、このアリア「青春は遠く過ぎ去り」です。
【中・上級者向け】(CK)

チャイコフスキーの有名な曲ばかりが集まっています。

チャイコフスキーのいろいろな作品から有名なメロディーをゴールウェイがフルートとピアノで演奏できるように編曲したアルバムです。オリジナルのフルート作品は残していないチャイコフスキーですが、美しいメロディーを吹いてみたいと思っていた人も多いのではないでしょうか。どれも一度は耳にしたことのある旋律で、オーケストラの曲も、原曲はフルートパートではない部分もフルートで楽しめるようになっています。
【中級者向け】 (T)

幼い頃の思い出をソナチネに

フルート・トリオ「妖精の絵op.40」が日本でもお馴染みになり、最近注目されているチェスノコフ。ウクライナに生まれ現在はパリで活躍中の、若手ピアニストであり作曲家です。
この曲は3楽章から成っており、神秘的にサラサラと流れるピアノ旋律の上で朗々と語る「贈り物」、衝動や激しい感情の起伏から目(耳?)が離せない「空想」、上行系の勢いのあるフレーズが形を変え繰り返される「遊び」の順で展開されます。
幼い頃の牧歌的郷愁を音楽にした曲とのことですので、様々に思いを馳せながらお吹きいただければと思います。秋の夜長を寂しげに温かく、そして情熱的に彩ってくれるかもしれません。
【中上級者向け】 (AN)

ヘンデルが認めたテレマンの名曲?

自作品の出版にも力を注いでいたテレマンが、1733年に出版した3セットから成る『ターフェルムジーク』もその一つで彼の代表作になっています。3つのセットは夫々、「管弦楽組曲」「四重奏曲」「協奏曲」「トリオ・ソナタ」「ソロ・ソナタ」そして管弦楽組曲と同じ楽器編成による「終曲」の6曲からなり、全18曲はどれ一つとして同じ楽器の組み合わせはありません。この楽譜は確実に売るために予約販売の形をとっていました。
今回ご紹介するのは第1集に入っているソロ・ソナタ、『フルートと通奏低音のためのソナタ ロ短調 TWV41:h4』です。5小節にわたる通奏低音の後に、流麗な旋律で登場するフルートが印象的な第1楽章 Cantabile、スラーとダッシュ、トリルによって動きのある第2楽章 Allegro、順次進行と跳躍、転調による変化が豊かな表情を作る第3楽章 Dolce、特徴的なスラーとダッシュによって勢いのあるジーグ風の第4楽章 Allegroという典型的な緩―急―緩―急の4楽章から成る大変美しいソナタです。
テレマンと親交のあった大作曲家ヘンデルは、この『ターフェルムジーク』を予約しました。初版楽譜に印刷された予約者名簿には『ロンドンのヘンデル博士』の名前がありますが、それだけではありません。ヘンデルは後の1746年にロンドンで初演した『オケイジョナル・オラトリオ HWV62』の幕間に、客寄せにヘンデル自身が演奏するために作曲した3楽章からなる『オルガン協奏曲 第15番 HWV304』の両端楽章にこのテレマンのソナタの第1、第4楽章を編曲して使っています。これは盗作というよりは、ヘンデルの内に忘れられない印象を残したテレマンの名曲に花を持たせたものと考えられます。
【中・上級者向け】 演奏時間:約13分40秒 (SR)

この協奏曲、おすすめします!!

ティリエはフランス近現代の作曲家です。 フルートと弦楽オーケストラによるこの協奏曲は、1959年に作曲されました。
かわいらしいテーマで始まり、気持ちよく晴れ晴れとするような旋律が続く第一楽章。 壮大でドラマチックな第二楽章。 技巧的でありながら、どこかかわいらしい雰囲気もある第三楽章。
と、どの楽章も魅力にあふれています!まだあまり知られていませんが、聞き映えのする曲だと思いますので、音大などの試験や演奏会にいかがでしょうか? フロマンジェ氏による演奏でCDが出ています。
オーケストラ伴奏による収録ですが、オーケストラ用スコアとパート譜は貸譜となっています。
【CD:ID】3814

もう一つの「愛の喜び」 2

「愛の喜び」といえば名ヴァイオリニスト、フリッツ・クライスラーの名曲を思い出す方が多いでしょう。でももう1曲あるのです。ここで「ああ、あのナナ・ムスクーリが歌っていた曲ね」と分かるアナタは相当古い・・・・・・。そうです、今回取り上げるのはその「愛の喜び」なのです。
このポピュラー・ソングとして大流行した「愛の喜び」は、実はイタリアの古典歌曲とされていて、マルティーニが作曲した曲です。でも間違ってはイケマセン。よく混同されるのですが、イタリアのマルティーニとして有名なのは、モーツァルト少年にも音楽を教えたジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニ(1706 – 1784)ですが、「愛の喜び」の作曲者はジャン・ポール・マルティーニというイタリア名を名乗ってパリで活躍した、本当はヨハン・パウル・シュヴァルツェンドルフ(1741 – 1816)というれっきとした(?)ドイツ人なのです。この人はパリ音楽院の監督官まで務めた人ですから、それなりに実力はあったのでしょう。えっ、なんて面倒なですって・・・そうです、この世の中、実に複雑で面倒くさいんです。
(*ちなみに、今回ご紹介しているチュルーの楽譜の表紙には、ジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニと記されています)
この歌は当時から人気があったらしく、2人の名フルーティストがそのメロディーを使ったファンタジーを書いています。ひとりはイタリアのB.T.ベルビギエ、64小節の序奏に続いて主題と5つの変奏がくり広げられます。もうひとりはフランスのJ-L.チュルーで、こちらは72小節の序奏、主題、3つの変奏と123小節からなる長い終曲から出来ています。どちらも名フルーティストの作品ですからそこそこ難しいのですが、チュルーの方がより難易度が高そうです。演奏会のプログラムなどに肩の凝らない曲として是非使ってみて下さい。
(SR)

忘れられたコンクール用小品10

第10回で一区切りつけるに当たり、コンクール用小品とはそもそも何であったか、ということを確認したいと思います。1795年に音楽院(コンセルヴァトワール)の設立が決定され、学校は充実していくのですが、第3代学長のルイジ・ケルビーニの時代に入学、卒業試験の制度が制定されました。このうち、卒業試験に課された新曲演奏用の作品が「コンクール用小品」です。モーツァルトの作品など既知の曲は当然前もって練習が可能で、実力を測る物差しとしては公平ではないと判断され、まだ誰も聴いたことのない新曲を限られた期間で一斉に練習し、その仕上がり具合で評価する、というのはいかにも革命を経て誕生した学校にふさわしいシステムでした。とはいっても、弦楽器やピアノがもてはやされる一方、管楽器があまり大作曲家から作品を残してもらえなかったロマン派の時代、管楽器のクラスのための新曲を作曲したのは教授自身でした。というわけで、コンセルヴァトワールの記録に残る最初のフルート科の課題曲は1824年のベルビギエによる《コンチェルティーノ 第5番》ですが、その次の1832年から1860年まで、チュルーの在任期間中(1829-1859)はずっと彼の作品が続くことになります。
《グランド・ソロ 第11番》 作品93は1845年のコンクールのために書かれ、H.リッテルという友人に捧げられました。曲は両端のアレグロと中間部のロマンスの3部構成になっています。6度の跳躍が印象的な序奏に始まり、そこから派生した第一主題をフルートが奏でます。最初のカデンツァの後、線的な第二主題となり、少しずつ技巧的な旋律となって頂点を迎えます。短い第2カデンツァを挟んでロマンスが始まり、6度の跳躍をもとにこちらは叙情的な歌となります。第3のカデンツァの後、第二主題が4度移調の原調で演奏され、さらに技巧的に音階を上下行し、華やかに締めくくられます。
このころのチュルーにとって、コンクール用小品の作曲は、単に試験用に作品を供給するだけでなく、もう一つ大きな意味があったものと思われます。というのも、フランス楽壇にベーム式フルートの波が次第に押し寄せ、1839年にはパリ音楽院でベーム式フルートのクラスの新設の審議まで行われたからです。このときはチュルー自ら委員の前で演奏して伝統的な多鍵式(チュルー・システム)の優位性を主張し、新設の話を延期に持ち込むことに成功しましたが、自身の流派の存続に対し大きな危機感を覚えたことは想像に難くありません。そこで、ベーム式よりも伝統的なフルートの方が優れていることを証明するための手段としてチュルーは作品を書き、公開演奏である卒業試験において生徒に演奏させることで、審査員である音楽家の同僚仲間や音楽院、音楽行政の上層部にアピールしたのです。
1845年のコンクールにおいて一等賞を受賞したのは、当時わずか12歳のジュール・ドゥメルスマンでした。二等賞のピエール・ブランコは19歳、次点のジュール・クプレが22歳でしたから驚きです。ドゥメルスマンの才能もさることながら、実力成果主義、エリート(選択集中教育)主義、早期教育主義といったフランス教育文化の典型例と申せましょう。実際ブランコもクプレも後世に大きな業績を残さなかったのですが、この非情ともいえる厳しさのおかげで、免許皆伝に相当するコンセルヴァトワールの「プルミエ・プリ(一等賞)」の権威と信頼性が現在まで保たれてきているのかと思うと、歴史と伝統の重みを感じます。
(2019年6月記) (M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

日本人女流作曲家の作品です

作曲者の上林裕子さんは京都出身でパリ在住。フルートの作品も多く手がけています。 このソナタは2003年の作曲で待望の出版です。4楽章からなり、レントから始まって、次々にテンポと表情を変え、海辺に寄せる大波小波を思わせる美しい第1楽章、軽快なスタッカートとスラーの対比が面白い第2楽章、たおやかな第3楽章、闊達で躍動的な第4楽章、とそれぞれ異なった様相ながら、全体を貫く繊細で美しいメロディが印象的な曲となっています。難解さは感じられず、特殊技法も必要ありませんが、ピアニストともども高い技術は求められます。新しくリサイタルのプログラムに加えてはいかがでしょうか。
【上級者向け】 (T)

演奏会におすすめ

東京藝術大学作曲科を卒業された上田真樹さんの作品を紹介します。朝日カルチャー新宿教室で講座を受け持ったり、指揮者山田和樹さんとのトークセッションでも活躍しています。
上田さんは言葉選び、音選びがとても上品で美しく、臨時記号を効果的に使い、魔法のように和音が変化していくところに魅力を感じます。この作品もフルートとピアノのための作品ですが、まるで合唱を聞いているかのような響きを感じることが出来ます。
「抒情小組曲」は、フルート奏者・中山広樹さんの委嘱、2007年のリサイタルで初演されました。
1.Prelude≪あかり≫ フルート・ソロから始まる素朴でかわいらしい曲。
2.Ayre≪みち≫ 悲しげな旋律で始まりますが、「希望」を感じさせるアリアです。
3.Danza≪のぞみ≫ フルートとピアノの掛け合いが楽しいです。
「献呈」は、山田和樹さんの委嘱でアンコール・ピースとして作曲、2007年に北川森央さんのフルート、山田さんのピアノで初演されました。フルート作品としては珍しいFis-durの曲で、温もりを感じることのできる小品です。
【中・上級者向け】 演奏時間:「抒情小組曲」約8分30秒 「献呈」約3分 (B)

スパイシー!!

ヴァン・ブリンクはアメリカの若手ピアニスト・作曲家で、この曲は2003年の「米著作権協会(ASCAP)・ 若手作曲家コンクール」で入賞しています。 タイトルの「ダル・ドーサイ」はインド料理のパンケーキのようなものの名前。また各楽章のタイトル「ガラムマサラ」「アソフォェティダ」「タルカ」もそれぞれインド料理に使われるスパイスなどの名称です。しかしこれらのタイトルは、曲が作られた後で初演者のトーマス・ロバーテロが名づけたもので、いわゆる標題音楽とは違うようです。シンコペーションのリズムがジャズ風の響きを誘う第1楽章、叙情的な美しいメロディーの第2楽章、めまぐるしい動きと複雑なリズムが絡み合う第3楽章と、フルート、ピアノともにかなりの技巧を要しますが、とても面白い曲です。 おそらくロバーテロは、この曲のいろいろな要素が混ざり合った、楽しく、またスパイスの効いた感じから、このタイトルをつけたものだと思われます。以前このコーナーでご紹介したショッカーやマウワー、シュナイダーなどに興味を持たれた方に、ぜひ挑戦していただきたいと思います。なお、ロバーテロによるCDが発売されています。
【上級者向け】 (T)

原曲はサックスのための作品です

「ブラジル風バッハ」で知られるヴィラ=ロボスのこの「ファンタジア」は、オリジナルはソプラノ・サックスと小編成のオーケストラのために1948年に書かれたのち、テナー用にも編曲され、現在もサックスの重要なレパートリーとなっています。フルートへの編曲はヴィラ=ロボスの助手を務めていたフルーティストのセバスチャン・ヴィアンナによってなされましたが、出版・演奏される機会がなく、2009年ヴィアンナの死後草稿が発見され、今回出版に至りました。
曲は3楽章からなり、軽快さと美しさ、そしてストラヴィンスキーやバルトークに通じるような諧謔性もあわせ持った面白い曲です。特殊技法もなく、技術的にはそれほど高難度というわけでもなさそうですが、ピアニストともども粋な感性で演奏していただきたいと思います。
【上級者向け】 (T)

ダ・ヴィンチではないレオナルド

歴史上有名なヴィンチは2人います。1人はもちろんルネサンスの大天才、「万能の人」と呼ばれ、城や町、武器などを設計し、軍事顧問を務めさらに彫刻や絵も描けた(!)というレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)。そしてその200年以上後のバロック時代に活躍した作曲家が、レオナルド・ヴィンチ(1690〜1734)です。“ダ・ヴィンチ”はフィレンツェなどを中心に北イタリアで活躍し、“ヴィンチ”は南のナポリで作曲活動を行ないました。
当時のナポリはオペラが大流行し、A.スカルラッティ、ペルゴレージ、チマローザらが活躍、ヴィンチもその中の1人で40曲ほどのオペラを作曲した人気作曲家でした。今回ご紹介するのは2曲のフルートと通奏低音のためのソナタです。彼が残したこの編成の曲は、1764年に出版された「12のソナタ」という曲集の中に、他の作曲家の曲と一緒に収められたこの2曲しかありません。この曲集は、当時ロンドンでよく海賊版楽譜の出版をしていたことで悪名の高かったジョン・ウォルシュが出版した海賊版です。作曲家が亡くなってから30年も経っていれば、文句を言う人もいなかったのでしょう。
2曲ともナポリ楽派らしく、よく歌う美しいメロディーを持った簡明な作品なので、昔からフルートでよく演奏されてきました。これまで使われてきた楽譜は編集者が後から付け加えた装飾などがあり、オリジナルの形が分かりにくいものでしたが、このAMADEUS版は余分な付け足しを取り去って、オリジナルの形を再現した楽譜です。初めてこの曲を吹く人はもちろん、吹いたことのある方も、もう一度この楽譜で曲を見直してみませんか。
(SR)

ミステリアスでクールな協奏曲

作曲者のCarl Vineは1954年生まれのオーストラリアの現代作曲家で、クラシックはもとより、映画やテレビの音楽を作ったり、アトランタ・オリンピックの音楽を担当したりと幅広く活躍しています。
この「笛は夢見る」はオーストラリア室内管弦楽団の委嘱作でシャロン・ベザリーが初演、同タイトルのCD(ID:6521)も発売されています。
曲は単一楽章で美しいメロディーの中に神秘的な雰囲気とスリリングな味わいがあります。かなり高度な技巧を要しますが、ユニークでとても面白い曲です。 現代の作品というとなかなか取り上げられる機会がありませんが、新しい音楽をお探しの方にぜひトライしていただきたいと思います。
【上級者向け】 (T)

ヴィヴァルディの真作「フルート・ソナタ」(Fl.Bc.)

長らくヴィヴァルディのフルート・ソナタ集といわれてきた「忠実な羊飼い 作品13」は、今ではフランスのニコラ・シェドヴィルの作または編作といわれるようになり、“伝ヴィヴァルディ”と表記されています。これは、シェドヴィルが部分的にヴィヴァルディの作品を用いて6曲のソナタにまとめ、出版したものであることが分かったからです。
それでは、あれだけフルートのための協奏曲や室内楽を残したヴィヴァルディがフルート・ソナタを残さなかったのかというと、そうではありません。今回は、これらヴィヴァルディの“真作”「フルート・ソナタ」をご紹介します。「ハ長調 RV 48」「ト短調 RV 51」「ニ短調 RV 49」「ホ短調 RV 50」の4曲で、それぞれケンブリッジ、ライプツィヒ、ウプサラ、ストックホルムの図書館に手書きの楽譜の形で所蔵されている曲です。
RV 48とRV 51の2曲は、緩-急-緩-急の4楽章構成でシンプルな作品です。RV49はPreludio. Largo – Siciliana. Adagio – Sarabanda – Allegroの4楽章からなる装飾音や音の動きに新しさがあります。RV 50はAndante – Siciliano – Allegro – Ariosoの4楽章ですが、この曲も装飾やリズムに新しさが見られ、不思議な楽章構成にも特徴があります。
ヴィヴァルディのフルート・ソナタはこの他にもリコーダー用と考えられる「ヘ長調 RV 52」や、その後の発見になる2曲などが(うち1曲「ト長調 RV 806」と同一曲が、Schott社から「ニ長調 RV 810」として出版されている。ID : 28303)ありますが、現在、明確な形でヴィヴァルディのフルート・ソナタとしてまとまっているのはこの楽譜です。
(SR)

注目の作曲家、ヴァインベルクのフルート作品

ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919-1996)はワルシャワで生まれ、第二次世界大戦で亡命のため旧ソ連に渡った、ポーランド系ユダヤ人の作曲家です。交響曲、室内楽、オペラ、声楽などの作品を書き残しており、近年再評価が進み、多数の録音がリリースされています。彼はフルートのためにも2つの協奏曲の他、幾つかの作品を残しました。
ご紹介するフルートとピアノのための「5つの小品」は、1947年に書かれ、翌年モスクワで出版された作品です。それぞれ1分半〜5分程度の「風景(Landschaft)」「ファースト・ダンス(Erster Tanz)」「セカンド・ダンス(Zweiter Tanz)」「メロディー(Melodie)」「サード・ダンス(Dritter Tanz)」の5曲で構成されています。1曲1曲に作曲者の自由な遊び心を感じ、メロディーも覚えやすく、演奏する楽しみが感じられる作品です。
第1曲「風景」は、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」の有名な旋律の引用で印象的に始まります。“ダンス”とタイトルに付く3曲は、民謡色を感じる舞曲のメロディーが特徴的で、ピアノとの軽快な掛け合いや、ユーモアを効かせた曲の仕掛けが、聴く人を惹きつけます。その中の第3曲「セカンド・ダンス」はヴァインベルクが4年前に書いた弦楽四重奏のための「カプリッチョ」をアレンジした作品です。第4曲「メロディー」はフルートのゆったりと流れるような美しいメロディーラインが魅力です。
注目の作曲家、ヴァインベルクのフルート作品に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ご興味のある方は、ヴァインベルクのフルート作品全曲が集められたCD「ヴァインベルク:フルートのための作品全集」(CDID:8068)や、楽譜「フルート協奏曲」(楽譜ID:33438)等も合わせてチェックしてみてください。
【中・上級者向け】演奏時間:約13分30秒(M)

たまには違うアレンジで(Rec.Pf./Fl.Pf.)

皆さんよくご存じの「グリーンスリーヴス」。イギリス民謡として親しまれています。フルートとピアノ、またはフルートとハープへの編曲として、フルーティストのルイ・フルーリーによる変奏曲が、また、管弦楽曲としてはヴォーン・ウィリアムスによる幻想曲が知られていますが、今回はウェルディンによるリコーダー(またはフルート)とピアノのための変奏曲をご紹介します。
テーマと9つの変奏からなります。テンポ、拍子が変奏ごとに変わり、どれも飽きさせないアレンジです。フルートとピアノにそれぞれ1曲ずつソロがあります。
これまでに曲集なども含め色々な楽譜が出ておりますが、このウェルディンによる編曲、新しいレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 (B)

「組曲」=suite いくつかの小曲あるいは楽章をまとめた複合的な器楽曲

近代フランスのオルガンの巨匠、作曲家として知られるヴィドールはリヨンで生まれ、父親からオルガンの手ほどきを受け、自然と音楽の道へ進みました。パリの教会のオルガニストを務め、パリ音楽院ではオルガンと作曲を教え、シュヴァイツァー、デュプレ、オネゲル、ミヨーらを育てました。第一曲「モデラート」、第二曲「スケルツォ」、第三曲「ロマンス」、第四曲「終曲」。フルーティストの技術を存分に生かした、色彩豊かなメロディーがリサイタルのフィナーレを飾ります。この名曲は当時、パリ音楽院の教授を勤めていたフルートの名手P.タファネルに捧げられました。
(Y)

セレナーデの決定版!

この曲のプログラム解説を書かれる演奏家は大変苦労されると思います。何故なら、楽譜にはA.WOODALL作曲と書かれているのですが、ファーストネームさえ不明だからです。 単純で美しい旋律、9/8拍子が一層効果的な流れを表現しており、まさに名曲にふさわしい小品です。作風は19世紀後半位?でしょうか。演奏時間はフルートパート譜2ページ、約3分です。アンコール、サロンコンサートのプログラムにお勧めいたします。
【初・中級者向け】 (Y)

Trevor Wyeの「ラテンの花束」

[1巻収録曲]
1. Estilo
2. Maracaibo En La Noche
3. Milonga
4. Urpila
5. El Diablo Suelto!
6. El Contrabando
7. Junana
8. La Partida
9. Cielito
10. Camino Pelao

こちらの楽譜は、言わずと知れたトレバー・ワイがコレクションしたラテン曲集で、全2巻となっています。
演奏時間が1〜2分半程の小品で構成されており、ラテン独特のリズムが私たちを異国に連れていってくれるかのようです。2拍子と3拍子の複合リズムや6/8拍子と3/4拍子の交互進行からなる、いかにもラテン的な曲などが収録されています。普段のレパートリーとは雰囲気が違った曲は、演奏会のアンコールなどにおすすめです。
音源はワイ自身が演奏している「FLUTE RECITAL」より「A LATIN BOUQUET」として全曲ではありませんが、2冊からそれぞれ5曲ずつ収録され、ワイのアドリブも披露されていましたが、残念ながら廃盤となっています。
現在手に入る音源は、W.ボウスタニーの「WANDERING WINDS」(CD-ID:6610)に6曲が収録されています。あまり馴染みのないリズムなので、まずはCDで雰囲気を掴むのもよいでしょう。是非あなたのお気に入りの一曲を見つけてください。
【中級者向け】(MR)

[2巻収録曲]
1. Pasaje No.1
2. Sol en Merengue
3. El Frutero
4. Bailecito de Procesion
5. El Camaleon
6. El Quintapesares

「鳥」の物語

吉松隆さんといえば、「鳥の作曲家」と呼ばれるほど鳥がらみのタイトルの作品を書いていらっしゃいます。その中でフルート&ピアノの編成の曲といえば、「デジタルバード」。全5曲からなる小組曲で、1.鳥恐怖症 2.夕暮れの鳥 3.さえずり機械 4.真昼の鳥 5.鳥回路 と、なんとも不思議なタイトルばかりですね。鳥のさえずり、羽をバサバサ動かしながら飛び立つ姿など様々な光景が目に浮かんできます。上級者向けですが、現代曲のなかでは比較的演奏しやすいでしょう。ピアノとの息もぴったり合わせましょう。
(G)

定番!?ジャジーな現代フルート・ソナタ

サミュエル・ジーマンは、1956年にメキシコに生まれ、米国のジュリアード音楽院で長年にわたって音楽理論の教授を務める現代作曲家です。メキシコを代表する作曲家として評価され、様々なジャンルの作品を発表していますが、彼自身フルートを学んだ経験もありフルートを含む室内楽作品も多数出版しています。
この「フルート・ソナタ 第1番」は彼の代表作として知られ、1994年にメキシコで初演、1997年にTh.Presser社から楽譜が出版されました。日本での演奏機会はまだ多くありませんが、米国を中心に世界中で演奏されており、コンクールの推薦曲や課題曲にも選ばれるなど、フルートの定番レパートリーに数えられているようです。
曲は全3楽章で構成され、第1楽章 Allegro assaiは ♩=160 の急速なテンポで始まり、ピアノと対等に力強くジャジーな対話が繰り広げられます。途中歌う部分を挟み、冒頭の主題に戻ります。第2楽章 Lento e molto espressivoはフルートの緩やかな独奏から、哀しく神秘的なメロディーが歌われます。第3楽章 Prestoはフルートの3連符の技巧的なパッセージから、ピアノが力強く刻む伴奏に乗ってミステリアスな主題が繰り返され、勢いよく曲が閉じられます。
上級者向けですが、特殊な奏法はなく、第1楽章と第3楽章にはジャジーなリズム感が求められそうです。「カッコイイ!」と褒められること間違いなしのこのソナタ、演奏会やリサイタル、コンクールの自由曲などで、ぜひ取り上げてみてはいかがでしょうか。多数の演奏者がCDやYouTubeで演奏音源を出していますので聴いてみてください。
収録CDはこちらです。
(CD-ID:8207)ジーマン:フルートのための室内楽作品集
(CD-ID:8578)アンデスのフルート
【上級者向け】 演奏時間:約18分 (M)