スタッフのおすすめ「フルート・ピアノ」(作曲家H-N)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

かわいらしい小品です

レイナルド・アーンは、1874年にベネズエラの首都カラカスで生まれました。1885年にパリ音楽院へ入学して、マスネやサン=サーンスに師事。1912年にフランスへ帰化し、1945年にパリのオペラ座の監督に就任するなど、フランスで活躍しました。彼の作品の中では歌曲が約125曲と最も多いですが、ピアノ協奏曲やピアノ曲、弦楽四重奏曲、ピアノ五重奏曲、バレエ音楽なども書いています。
この「2つの小品」は、「女神の踊り」「魔法使い」の2曲からなっており、それぞれルイ・フルーリーとガストン・ブランカールに捧げられています。どちらも演奏時間3分未満で、とてもかわいらしい曲です。どちらか1曲だけ選んでアンコール曲としてお使い頂くことも可能です。
【上級者向け】 演奏時間 女神の踊り:約2分40秒、魔法使い:約2分45秒 (I)

代表作に続け…

アーン…1874年ヴェネズエラのカラカスに生まれ、フランスで活躍した作曲家です。その作品のほとんどは歌曲ですが、協奏曲や室内楽、器楽、劇音楽も残しています。
この曲はヴァイオリンとピアノの為に書かれた曲でM.ラリューによる編曲です。 歌曲を多く残しているということもあり、流れるような旋律を持った美しい曲で、ロマンスという曲名にピッタリです。 ロマンスというと…サン=サーンス、シューマンと代表作品がありますが、もう演奏されてしまったり、ちょっと違うロマンスを探されている方にオススメ致します。
一度聴いたら耳に残るこの1曲、演奏してみて下さい。
【中級者向け】 演奏時間:約5分 (N)

シンプルで美しいモーツァルトのヴァリエーション

モーツァルトが残したフルートのための作品といえば、協奏曲や四重奏曲がまず浮かびますが、今回は他の作曲家が書いたモーツァルトにまつわる作品をご紹介します。
アーンはラヴェルやコルトーと共に学び、当時の教授マスネに作曲を師事しました。協奏曲や室内楽曲、多くの劇場作品を書きましたが、特に繊細で美しい旋律の“歌曲”を多く書いたことで有名です。そんな“歌曲王”アーンが書いたこの『モーツァルトの主題による変奏曲』は、モーツァルトの劇音楽『劇場支配人』の中で歌われる、ロンド『若いあなた!』をテーマにしたものです。まずAndanteで朗々とテーマが歌われ、その後7つの変奏曲が続きます。モーツァルトらしさを生かしたままの、シンプルで美しいヴァリエーションが繰り広げられていきます。難しすぎず易しすぎず、ちょうど中級者の発表会などにも使えるかと思います。
演奏時間:約7分 (A)

美しい愛の歌です

レイナルド・アーン(1875-1947)はベネズエラ・カラカス生まれのフランスで活躍した作曲家です。パリ音楽院で、マスネに作曲を師事しました。またサン=サーンスにも個人的に師事していました。最も有名な歌曲「私の詩に翼があったなら」は、『20の歌曲 第一集』の中の1曲です。今回ご紹介する「クロリスに」もよく知られた歌曲で、こちらは『20の歌曲 第二集』に収められています。詩は17世紀のフランスの詩人テオフィル・ド・ヴィオー(1590-1626)の作。美しいピアノの伴奏と心洗われるような優しい旋律が魅力です。3分ほどの短い曲ですのでアンコールにもおすすめです。もともとは歌詞があることを意識して演奏してみてください。
楽譜ID:15736は、フルート(またはオーボエ、ヴァイオリン)とピアノへの編曲。
楽譜ID:36603は木管五重奏(オーボエはイングリッシュ・ホルン、クラリネットはA管)への編曲で、モラゲス五重奏団のオーボエ奏者、ダヴィッド・ワルターによるものです。
【初・中級者向け】 演奏時間:約3分10秒 (B)

アルフテルの伯父さんはアルフテル(Fl.Cemb./Fl.Pf.)

フルートの世界でアルフテルといえば、コンクールの課題曲にも取り上げられる、あの超難しい現代無伴奏作品「デブラ」を書いたクリストバル(1930- )を思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし、音楽の世界全体で見ると、さらに有名なのはクリストバルの伯父にあたるエルネスト・アルフテル(1905-1989)ではないでしょうか。父の代にドイツからスペインに移住してきたアルフテル一族は音楽一家でもあり、エルネストの兄ロドルフォ(1900-1987)もやはり作曲家でした。
エルネストは兄に作曲の手ほどきを受けた後、兄と同じマニュエル・デ・ファリャに作曲を学びました。指揮者としても名をなし、その指揮ぶりは、ファリャの「恋は魔術師」や「ペドロ親方の人形芝居」のCDなどで聴くことができます。
今回ご紹介するエルネスト・アルフテルの「パストラル」はフルートとチェンバロ(またはピアノ)のための作品で、1973年に作曲されています。19世紀の末に、現代のピアノの構造を取り入れたモダン・チェンバロともいうべき楽器が作られて、師匠のファリャは1926年にチェンバロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ヴァイオリン、チェロの室内楽編成の協奏曲を作曲しました。その後、イベールやプーランクらもこの“新しい”チェンバロの響きに触発された作品を残しています。この「パストラル」はその流れの上に作られたようで、作曲年代からすれば少々懐古的ではあるかも知れませんが、美しい佳曲に仕上がっています。曲は20世紀前半の作風を持った3つのパストラルからなり、第2曲には前半に無伴奏によるフルートの長大なカデンツァがあります。フラッターなどのごく基本的な特殊奏法が出てきますが、技術的にさほど難しいものではありません。知られざる名曲としてレパートリーに加えてみては如何でしょうか。
 (SR)

ヘンデル、12番目のソナタ<ニ長調 HWV378>

「ヘンデルはベーレンライターの“11のソナタ”だよ!」ということをよく聞きます。これはヘンデルの作品1の旋律楽器と通奏低音のためのソナタから、フルート用とリコーダー用のソナタを取り出して8曲、あとは3曲の「ハレ・ソナタ」を合わせて、11曲としたベーレンライター社の楽譜がよく使われているからです。それなら12番目のソナタって何? ということになるのですが、実は12番目のフルート・ソナタがあるのです。この曲も、ニ長調でHWV 378というヘンデルの作品番号が付けられた、れっきとしたヘンデルのフルート・ソナタなのです。「11のソナタ」が出版された後の1980年に発表されて話題を呼んだ作品です。
緩—急—緩—急の4楽章構成、第1楽章はヘンデルらしい大変のびやかな曲で、ヴァイオリン・ソナタ ニ長調の第1楽章や、フルート・ソナタ ホ短調の第3楽章と同じテーマが使われています。さらに第2楽章や第4楽章もヘンデルの別の曲と同じテーマが使われている、いかにもヘンデルらしい美しい作品です。このソナタは、今回ご紹介し楽譜の他に、ヘンレ社から出版されている「ヘンデル:フルート・ソナタ 第1巻」にも入っているので、お好きな方を選ぶことができます。ただし、2冊ともそれ以外の曲はベーレンライターの「11のソナタ」とダブるので気をつけて下さい。
(SR)

民族色豊かな一曲です

ハーティは、ヘンデルの「水上の音楽」のオーケストラ編曲で知られる、アイルランド出身の作曲家・指揮者です。 この「アイルランドにて」は、1918年にフルートとピアノの為のファンタジー として作曲され、1935年にフルート、ハープ、オーケストラのために編曲されています。 楽譜冒頭には“夕暮れのダブリンの街並み、二人のストリートミュージシャンが演奏している”と書かれており、叙情的な旋律とアイルランド風の音楽を用いたリズミックな部分が交互に現れながら、民族色豊かな音楽に乗って奏でられていく一曲です。
【中・上級者向け】 演奏時間:約7分 (NI)

即興!?ソナタ(Fl.Pf)

1967年6月から11月にかけて作曲された「フルートソナタ」はその年の11月にニューヨーク・カーネギーリサイタルホールにて、従姉でフルート奏者の林リリ子氏と初演されました。
第一楽章は、41歳という若さでこの世を去ったモダンジャズ界、サックス奏者ジョン・コルトレーン(1926-1967)へ追悼の意を込めて書かれました。ピアノが同一のシンコペーションのリズムを刻み、ベースのような低音の響きがとても印象的です。フルートはそのリズムにのってメロディーを奏でます。また、第三楽章では「花の歌」(詩・佐藤信)をテーマに展開していきます。軽快に進んでいきますが、時折ピアノが奏でる和音が重くのしかかり心に響きます。「花の歌」はキューバ革命・指導者チェ・ゲバラ(1928-1967)の死に捧げるために佐藤信の詩に林氏が作曲した劇中歌です。
「フルートソナタ」は1968年に改訂され、その後出版されました。林氏36歳の時の作品。1960年代の社会的背景を感じながら演奏をお楽しみ下さい。
(TO)

日本の作曲家、林光

林光(1931〜2012)東京生まれ。10代の頃に作曲されたものがこの曲集に集められています。
「セレナーデ」「ノクチュルヌ」「ファンタジア」「牧歌」「3つの小品」の全5曲。「セレナーデ」4分の3拍子、ト長調、ソナタ形式で短いカデンツァが有り、爽やかで軽快な雰囲気。「ノクチュルヌ」8分の6拍子、ト長調、なめらかなフレーズで、とても美しい旋律の小品。「ファンタジア」は少し手の込んだ構成や曲調になっており、華やかで多彩な印象。「牧歌」は「ノクチュルヌ」を題材に作られており、柔らかで優しさに満ちた美しい曲。「3つの小品」Tメヌエット、Uパストラール、Vロンディーノ、それぞれフルートの良さが存分に引き出されていて、魅力的な作品となっています。
【中・上級者向け】 (E)

イギリスの人気作曲家 ヒースの1曲!

デイヴィッド・ヒース(1956-)はイギリス、マンチェスター生まれの作曲家、フルーティストです。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校でフルートをウィリアム・ベネットとエドワード・ベケットに師事し、ジャズ・フルーティストとして活動しました。その後、仲間の勧めで作曲を始め、フルート作品、器楽作品、コンチェルトなどを作曲するようになり、ジェームズ・ゴールウェイのためにも作品を残しています。ヒースの音楽は、クラッシック音楽にジャズやロック、民族音楽の要素をプラスした独自のスタイルで、世界中で愛されています。
『Home from the Storm(嵐からの帰還)』は冒険家のポール・ヴァンダー・モレンに捧げられています。全体的にどこか懐かしく雄大な自然を感じさせます。途中からタイトルにもある「嵐」のような上行・下行の音形も見られます。師であるベネットのためにオーケストラ編成でもつくられており、そちらはヒースのYouTubeチャンネルで聴くことができます。
自然の雰囲気を感じながら伸び伸びと演奏してください。
【中・上級者向け】演奏時間:約5分 (U)

お洒落なヴェニスの謝肉祭です

ヴェニスの謝肉祭といえばジュナンやブリチャルディの作品を想い浮かべる方が多いかと思います。他にもクラカンプやドゥメルスマンが作曲したものがあります。
今回はエリシェのヴェニスの謝肉祭をご紹介させていただきます。 R.エリシェ(1907〜1991)は1921年にわずか13歳でパリ音楽院のゴーベールのクラスを卒業した天才フルーティストでした。 この曲はエリシェの友人でパリ・オペラ座のフルーティストだったギヨー氏に捧げられており、6つの変奏からなります。なかでも“ボサノヴァ”と指定されている第5変奏がとてもユニークです。ギヨー氏はジャズも得意でしたので、ボサノヴァ風の変奏を取り入れたのでしょう。 この部分の演奏にはセンスが必要かもしれません。ぜひお洒落な演奏にチャレンジしてみてください!!
【上級者向け】 演奏時間:10分 (OU)

典雅なソナチネ

平尾貴四男(1907-1953)は東京日本橋で生まれた作曲家です。裕福な家に育ち、幼いころから音楽の教育を受けていました。慶應義塾大学の医学生でしたが、文学部(独文学)を卒業しています。大学卒業後にフランスに留学して作曲、指揮、フルートを学び、帰国後は数々の作曲のコンクールで入賞するなど成功を収めました。戦後は国立音楽大学の教授に就任、作曲家グループ「地人会」の結成と、日本の音楽界に大きな影響を与えましたが、わずか46歳の若さで亡くなっています。
フルートとピアノのためのソナチネ(1941)は、ホテルオークラの創業者、大倉喜七郎が考案した『オークラウロ』という尺八の歌口にフルートのキー・システムを取り付けた楽器を想定して作曲されました。第1楽章のLentは5音音階が印象的な典雅な響きのする曲です。第2楽章のAllegretto moderatoは流れるようなピアノの動きとリズムに乗ってフルートが躍動、曲のフィナーレまで一気に駆け抜けていきます。
なんとなく『笛と琴』を連想させる曲調は、現代の日本では実はあまり聞くことのない響きで、とても新鮮に感じるのではないでしょうか。外国の方に紹介しても喜ばれると思います。作曲家が笛吹であったためか、とても吹きやすい音域です。多くの方に演奏していただきたい一曲です!
【中級者向け】 演奏時間:約7分30秒 (U)

フランクやサン=サーンスに愛された女性作曲家のフルート作品

オーギュスタ・オルメス(1847-1903)は、19世紀後半に活躍したフランスの女性作曲家です。裕福な家に生まれて音楽や文芸の才能を表し、セザール・フランクに作曲を学び、1889年にはパリ万博のためカンタータ「勝利の頌歌」を書き成功を収めました。その才覚と美貌で同時代の芸術家に称賛され、師フランクや、サン=サーンスから恋心を寄せられていたという逸話も残されています。近年録音等で取り上げられることも増え、再評価の機運が高まっているようです。
「3つの小品」は、舞台音楽や声楽曲を中心に作曲した彼女が残した唯一のフルートとピアノのための作品です。作曲家として成功を収めた後の1896年に書かれ、各2分程度の短い3曲で構成されています。フルートの流麗さや軽やかさといった魅力が引き出された、美しい作品です。
第1曲「Chanson 歌」ゆったりと流れるような旋律が歌われ、度々現れる臨時記号の音程感に独特の異国情緒を感じます。
第2曲「Clair de Lune 月の光」半音階で下行するピアノの伴奏に、シンプルながら神秘的なフルートの旋律が流れていきます。音を並べるのは簡単ですが、曲として完成させるには表現力が求められそうです。
第3曲「Gigue ジーグ」は付点音符のリズムの軽快な舞曲で、ピアノとの掛け合いを経て、勢いよく曲が閉じられます。
フランス近代の新しいレパートリーをお探しの方や、女性作曲家の感性に触れてみたい方、是非演奏されてみてはいかがでしょうか。全曲演奏しても7分程度ですので、発表会用等で難しすぎず綺麗な作品をお探しの方にもおすすめできます。
【中級者向け】演奏時間:約7分 (M)

セレナード(?)

ユーといって真っ先に思い浮かぶのは『ファンタジー』。。。ですが 今回ご紹介するのは『セレナーデ』です。
『セレナーデ』(小夜曲)とありますが、静かな夜のイメージの作品ではありません。 ここは注意が必要です。 ピアノが常動的にリズムを刻み、その上にフルートの旋律が心地良く流れます。 切迫感を感じるピアノの刻みとは対照的にフルートの旋律は美しく軽やかで。。でもどこかもの悲しいのは、彼の作品の特徴でしょうか。
ユーはパリ音楽院で作曲法を学び、カンカータの作曲でローマ大賞を授与しています。 その他にもオペラ・コミックでクレセント賞を受け、交響詩によってパリ市賞を受けるなど、数々の音楽賞を授けられている作曲家です。  『ファンタジー』だけでなく、ぜひこちらの隠れた名曲も!!  演奏時間は2分ちょっとと短めですが、コンサートピースにもお勧めできます。
(O)

アヴェ・マリア? ―そうではありません

「バッハ=グノー」で知られるアヴェ・マリア。メロディをご存知の方も多いと思います。 今回ご紹介するこの「アンダンテ」は最初の伴奏を聞くと、一瞬「アヴェ・マリアかな?」と思ってしまうかもしれません。バッハの「平均律クラヴィア曲集」のプレリュード第1番を基に、ユーゴンがフルートのメロディをつけました。3分ほどの短い曲ですが、ホーム・パーティーやアンコールなどにいかがでしょうか。
【初・中級者向け】 演奏時間:約3分 (B)

クセになる響きです

独奏ピアノのために書かれた10曲からなる小曲集「物語」から、M.モイーズが6曲を抜粋・編曲した、ファンタジーな世界観の小曲集です(残り4曲は2011年に「Vol.2」としてK.W.クラークが編曲しています。詳しくはコチラ)。
イベールはこれらの曲を作曲した頃、中近東や西欧の国々を旅行しました。全体的に異国情緒を感じる曲調のものが多く、旅で得たインスピレーションや聞き知った昔話が作曲に少なからず影響を与えたのであろうと考えられます。
主役はメランコリックな雰囲気の女性だったり、もつれ足で走る可愛いロバだったり、キラキラ光るガラスの鳥籠を持つ東洋人だったり。街をぴょこぴょこと駆け回る水売りの女性も、色彩豊かな群衆もいます。そして地を這うような哀しみを透明感溢れる美しさで表現した第3曲目が、全体のアクセントになっています。
全曲通しても、1曲だけ取り上げてアンコールなどで使用しても。技巧的な曲ではないので多くの方にお楽しみいただけるかと思います。聴き終わってからもしばらく余韻の残る、不思議な物語集。おすすめです。
【中・上級者向け】 (AN)

イベールの「物語」完結編

「物語」は、1917年、イベールが20代の後半に作曲したピアノ独奏曲集です。10曲の小品からなるこの曲集は、全体が一連の流れをもったすじのある物語ではなく、それぞれの曲が独立した一つの世界を描いています。1932年に「金の亀を引く女」「小さい白いロバ」「悲しみの家で」「ガラスの鳥篭」「水売り女」「バルキの行列」の6曲がマルセル・モイーズによってフルート用に編曲され、演奏されてきました。しかし、全曲をフルートで演奏したいとの希望が多かったのか、2011年に、続編として、残る「年老いた乞食」「おてんば娘」「廃墟の宮殿」「机の下で」の4曲がキンバリー・ワルター=クラークの手で編曲され、出版されました。すでに6曲を演奏された方、また全曲演奏をしてみようと思っておられた方には朗報です。難易度は曲によってまちまちですが、技術的内はかなり易しい曲もありますので、多くの方に楽しんでいただけると思います。
(SR)

寒い季節に心に優しく染みわたる曲はいかがですか?(Pic.Pf/Fl.Pf )

マイケル・アイザックソン(1946〜)はアメリカで映像音楽などを手掛ける作曲家です。これまでに出版された曲は500曲以上、アメリカ人なら一度は耳にした事があるのではないでしょうか。指揮者としても活躍しており、多数の映像作品のCD録音に携わっています。ポピュラー音楽を中心に活躍しているアイザックソンですが、今回ご紹介するのはピッコロの作品です。
「11月の歌」というタイトルのこの曲は、愛息であるアリ・ジョエル・アイザックソンのために作られた曲で、まるで息子に優しく語りかけるようにDolceで始まり、次第に流れるような旋律へと展開していきます。3分程度の短い曲ではありますが、ホッと一息つけるような親しみやすい旋律が心に優しく染みわたる1曲です。
フルートでも演奏していただけます。これからの季節に演奏してみてはいかがでしょうか。
【初級者向け】演奏時間:約3分30秒(NS)

日本人作曲家の名曲を紹介します

作曲者の石川榮作は、伊豆・下田に生まれ教員として勤めていた人物です。
故郷への感謝の気持ちを表現しこの曲を作曲したそうで、日本的でどこか懐かしい雰囲気を持ちます。「海」「祭」「峠」の3部構成で、演奏時間18分強の大作です。
第1楽章「海」“荒々と“の演奏指示から始まり、海の美しさと荒々しさの両面が表れた曲です。後半の長いカデンツァが印象的です。
第2楽章「祭」フルートの旋律はお囃子の笛、ピアノの音型は太鼓を表しているかのように終始賑やかで勇ましい曲です。後半にフラッターが度々登場します。
第3楽章「峠」ピアノの粛々とした長い前奏から始まります。哀愁のあるフルートのメロディーが徐々に情熱的な盛り上がりを見せて感動的に幕を閉じます。
テクニックとメロディーの両方を魅せることが出来る曲なので、コンサートのメインとしても使用できそうです。
是非、日本人の美しい感性に触れてみてください。
【中・上級者向け】 演奏時間:約18分 (HS)

ジャズ風クラシック

作曲家は、旧ソ連出身です。曲のあらゆるところに冷たい風の様な雰囲気を感じることもありますが、カプースチンの曲調が惜しみなくあふれ出ている1曲です。リズムを正確に演奏すること、ピアニストと息を合わせることなど、曲に向き合うたびにいろいろな課題と向き合えます。難しさも演奏のボリュームや、興奮度も満点なおすすめ曲です。 【中・上級者向け】 (H)

ロマンティックで情熱的です!!

カーク=エラートは1877年ドイツで生まれ、ライプツィヒ音楽院で作曲をライネッケに師事しました。後期ロマン派のスタイルで室内楽作品や交響曲、歌曲、オルガン作品を数多く残し、中でもオルガン作品で作曲家として広く知られるようになりました。フルート作品は20曲になります。ソナタ・アパッショナータや30の奇想練習曲はご存知の方も多いと思います。
今回ご紹介します「シンフォニッシェ・カンツォーネ」は1917年に作曲され、エラートにとって初めてのフルートの室内楽作品となりました。ハーモニーや進行は後期ロマン派のスタイルを用いつつも、カンツォーネのスタイルはイタリアの文学者ペトラーチ(1304〜1374)に影響を受けているようで、カンタービレなメロディーかつリリカルさが特徴的です。曲の最後は技巧的なカデンツァで終わりを迎えます。終始切れ目のないフルートのメロディーラインがロマンティックで情熱的な空間を創りだしています。
【上級者向け】 演奏時間:8分30秒 (OU)

AMERICAN COMPOSER 2

なんともミステリアスな気分で曲がはじまります。アメリカの作曲家、教育者であるケナン。この曲は彼が25歳の時の作品です。4分程の曲なので、小曲をお捜しの方は一見の価値ありです。神秘的な世界へのトビラを開いてみませんか?こちらも上級者向けです。
(G)

民族色あふれる難曲

ハチャトゥリアンのフルート協奏曲は、ヴァイオリン協奏曲をランパルの依頼により作曲者自身がフルート用に改作したもので、難曲ながら、民族色あふれる美しいメロディーを持ち、フルートのレパートリーとしても定着しています。今回ご紹介するフランスの出版社の版は、従来からあるインターナショナル社版(現在は日本での入手不可能)と同じくランパルの校訂で音型などの変更はないようですが、印刷が新しくきれいで、音符も大きく見やすくなっています。ただ、ページ数が増えているので譜めくりに多少の難があります。
(T)

色々な顔を持つ作曲者

ケックランは天文学者、数学者、画家、音楽家といった顔を持つ作曲家です。科学者としては自然の驚異の研究に身を捧げました。音楽家としては理工学校を勉強後、パリ音楽院で、マスネ、ジェダルジュ、そしてフォーレに学びました。ケクランの音楽は自身の性格の純粋さ誠実さが反映しており、音楽面での創造性は穏やかさが現われています。
この曲はケックランが60歳になろうとする1936年に書き下ろしました。14個の小品は短く小説でいえばショートショートを思わせる作品です。透明で軽快に書かれており、鳴り響く音楽は不思議と立体感にあふれています。
【中級者向け】演奏時間:約13分30秒 (N)

イタリア・ロマン派の小品

クラカンプはイタリア生まれのフルートの名手です。ヨーロッパや北アメリカで活躍し、ナポリ音楽院では木管楽器の教授として指導も行っていました。また、作曲活動においては数多くの作品を残しています。今回はその中の一曲である「6つの花のロマンス」をご紹介いたします。
皆さんはこの題名を聞いてどんなお花を思い浮かべますか?色や香り、形など思い思いに想像をふくらませてみてください。この曲は「バラ」「チューリップ」「ジャスミン」「スミレ」「マーガレット」「リラ」の6つの花が描かれている小品集になります。曲の長さはそれぞれ2〜3分前後ですので、数曲組み合わせて発表会で演奏される事もおすすめいたします。自分の好きな花を選んでステージに素敵な花を咲かせてみてはいかがでしょう。
【中級者向け】 演奏時間:約16分 (E)

クライスラー、人気の2曲のセットです

ヴァイオリンの名手だったクライスラーは、たくさんのヴァイオリンのための小品を作曲し、その多くは今も人々に愛されて演奏されています。中でもこの「愛の喜び」と「愛の悲しみ」の2曲は特に人気があり、ヴァイオリン以外の楽器でもしばしば取り上げられています。フルート用の編曲版は長く絶版で手に入らなくなっていましたが、このたび新しく2曲まとめた形で出版されました。アンコール用に、サロンコンサート用に、また結婚式などにも使えます。古いウィーン舞曲風の愛らしく魅力的なメロディーをお楽しみください。
【中級者向け】 (T) 

表情豊かな変奏曲

ピアノの重厚な前奏から始まるイントロダクションは、華やかで、それでいて悲愴感があり、情熱的な印象を与えることができます。次からはがらりと雰囲気が変わり、美しくかわいらしいテーマがはじまります。変奏が進むに連れて激しさが増していき、曲の変化も楽しめる1曲です。クーラウらしい、フルートの魅せる技巧が楽譜いっぱいに散りばめられています。レパートリーの中の1曲にしてみてはいかがでしょうか。
【中上級者向け】 演奏時間:約15分 (H)

組曲形式の可愛い小品集

作曲者のラウル・ラパラの名前はあまり知られていないかもしれません。1876年にボルドーで生まれパリ音楽院でフォーレやマスネに師事し、1903年にはローマ大賞を受賞しています。スペイン系の家系でスペイン音楽の研究にも取り組み、スペイン民謡を取り入れた作品やスペインを題材にしたオペラ・コミックなどを作曲しました。
この組曲「あけぼのの書」は、シューマンの「子供のアルバム」やドビュッシーの「子供の領分」などの形式に似た、12の小さな個性的な曲集です。「雪の踊り」「煙突の下の物語」「猫の友だち」といったユニークなタイトルがそれぞれについていて、曲はどれも快活で愛らしい、親しみやすくロマンチックな小品です。それぞれ1〜3分程度の短い曲で、抜粋しても、曲順を変えても演奏可能です。サロンコンサートやアンコールにぴったりです。
レパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
なお、ラパラは同じ「あけぼのの書」というタイトルでピアノ独奏と、ヴァイオリンとピアノのためにも曲を書いています。よほどこのタイトルが気に入っていたのかもしれません。
【中級者向け】(T)

名曲発見!?

ラウバー (1864-1952) はラインベルガーやマスネに学んだスイスの作曲家。指揮者、指導者としても活躍し、フルート作品では「バラード」が有名なフランク・マルタンの師にあたります。
この「グランド・ソナタ 作品53」は、彼が72歳頃、1936-37年に書かれた作品。長い間注目されることがなかったのですが、ウィーン交響楽団のフルート、ピッコロ奏者をつとめるスイスのフルーティスト、ラファエル・レオーネ (ウィーン国立音楽大学教授) の尽力によって“復活”を遂げました。最近では、K-H.シュッツのCD (ID:6734)に収録されています。メロディーやハーモニーの色彩感、小気味よいリズムなど、後期ロマン派から近・現代の時代にかけて活躍したラウバーの背景が感じられる素敵な作品です。
第1楽章:Patetico(Allegro moderato)[8分40秒]
第2楽章:Pastorale(Andante con moto)[4分40秒]
第3楽章:Burlesco(Prest)[6分]
(YS)

元・ダンサー

ジャン=マリー・ルクレールは1697年にフランスのリヨンに生まれました。 はじめは舞踊家としてイタリアのトリノで活躍しましたが、ヴァイオリン奏者に転向し、パリで成功を収めました。その頃から作曲も学び、多くのヴァイオリン曲を残しています。作曲はヴィヴァルディやコレッリなどイタリアの作曲家の影響を受けています。そして、そこにフランス風の優雅で華やかな雰囲気を取り入れ、当時フランスであまり知られていなかったイタリアの協奏曲などの形式をフランスに持ち込んだとされています。 この曲はフルート、またはオーボエ、ヴァイオリンのために書かれています。 同じ時代のバッハやテレマンとはまた少し違った優雅さと明るさがあります。 是非、踊るように軽やかに演奏して下さい!

第一楽章Allegroハ長調 曲全体に華麗な装飾がちりばめられていますが、技巧的な印象はなく、明るく爽やかです。
第二楽章Adagioイ短調 荘厳な雰囲気の前奏にはじまり、しっとりと憂いのあるメロディーが続いていきます。
第三楽章Allegro assaiハ長調 駆け抜けるような勢いのある楽章です。
【中・上級者向け】(U)

緩急の差が魅力の2楽章ソナタ

♩=40、という速さ(遅さ?)で始まる第1楽章は、不安を感じるような響きをピアノが奏でます。その上でフルートがppでとても長いフレーズを演奏します。息の使い方をしっかりイメージし、コントロールできるようになるといいと思います。第2楽章は打って変わってPresto energicoで、ピアノの16分音符刻みのリズムの上で、フルートも高音域で疾走します。ピアノとの掛け合いが難しいですが、合わせられるととても楽しく感じられます。両楽章ともに技巧的ですが、緩急・強弱のメリハリをつけて演奏できるといいですね。
ローウェル・リーバーマンはニューヨーク生まれの作曲家、ピアニスト。この曲は、1987年に書かれ、88年にポーラ・ロビソンにより初演されました。
【上級者向け】 演奏時間:約14分(B)

ソプラノの難役「ノルマ」をフルートで

イタリアのバーリに生まれナポリで亡くなったドナート・ロヴレーリョ(1841-1907)は、名フルーティストとして名を馳せ、作曲家としても活躍しました。イタリアでベーム式のフルートの導入に貢献し、コンサート用のファンタジーや、「リゴレット」「仮面舞踏会」「椿姫」「アイーダ」など、オペラの主題の編曲を多く手がけました。
今回ご紹介するこの曲は、19世紀前半のイタリア・オペラを代表する作曲家のひとり、ヴィンチェンツォ・ベッリーニの傑作オペラ「ノルマ」(1831)によるものです。紀元前50年頃のガリア地方で、ドルイド教の高僧オロヴェーゾの娘である巫女の長ノルマは、敵であるローマの総督ポリオーネとの間に密かに2人の子供をもうけていますが、ポリオーネの心が自分にはもうないことに悲しみと怒りをおぼえ復讐する…、といった話です。ソプラノ歌手にとっては超絶技巧を伴うアリアの数々で、難しい役のひとつとされています。
その中から、第1幕の厳かな「序奏」、有名なノルマのアリア「清らかな女神よ」、第1幕合唱「予言の御力で」、第2幕フィナーレ「犠牲にしてくれるな」を使った旋律的変奏曲で、「序奏」は原曲ト長調をニ長調に、「清らかな女神よ」はヘ長調をニ長調に、「犠牲にしてくれるな」はホ短調をニ短調に、それぞれ移調しています。(「予言の御力で」は原曲と同じト長調です。)
巫女のノルマを取り巻く三角関係、国を巻き込んでの復讐劇、最後にノルマが取った行動…、ひとつひとつの場面が目に浮かぶようなベッリーニの美しい旋律を、ぜひフルートの演奏で再現してみてください。
【上級者向け】 演奏時間:約12分 (B)

マーラーを笛で吹いてみようなんて考えるのはどんな人?

ふつうマーラーと言えば、あの長くて重い交響曲や管弦楽伴奏の歌曲などを思い浮かべて、フルートで吹いてみようなどと思うのはオケマンぐらいしかいないよ・・・と思っているアナタ! ところがいたのです。しかも、あのエマヌエル・パユさん!(・・・そういえば彼もオケマンだった!)です。
マーラーの歌曲の中には管楽器で吹いても良い効果が出せる曲があります。そんな中から特にフルートに向いた曲を選んだのがこの曲集。歌はどれも2〜3分の短いもので、交響曲や管弦楽またはピアノ伴奏の歌曲集から選ばれています。
まず「子供の魔法の角笛」から「この歌を作ったのは誰?」。“あの山の上の高い家から、かわいい女の子が外を覗いている・・・”と、この娘に恋した若者が歌います。
2曲目は「大地の歌」の第3楽章「青春に」。李白の詩によせて、中国風5音階が登場し、美しい春と青春そして、酒を言祝ぎます。
次は「子供の魔法の角笛」から「ラインの伝説」。ライン川に指輪を流すとなぜ恋人が見つかるのかが分かります。
4曲目も「子供の魔法の角笛」から「不幸なときの慰め」です。“馬に鞍をつけておさらばだ!”という軽騎兵、甘い時を思い出しながらも“もう沢山、とっとと出て行け!”と娘さん。愛想を尽かした二人の別れの歌が、勇ましい行進曲に乗って歌われます。
そして最後は「亡き子をしのぶ歌」から「私はふと考える、あの子達はちょっと出かけただけなのだと」。“こんなきれいな晴れた日に、子供たちはちょっと遠出しているだけだ・・・”と、子供をなくした親の悲しみが歌われます。
こうしてみるとこの曲集、様々な愛の形を歌った曲を集めていると思いませんか? さあ後はフルートを手に取って吹いてみるだけ・・・その前に、詩を読むこともお忘れなく。
(SR)

マレ/スペインのフォリア

「フォリア」はイベリア半島起源の古い3拍子系の舞曲で、8小節または16小節単位の決まった低音主題の上に変奏が繰り広げられる変奏曲の形を取っています。バロック時代にはスペインを始めイタリアやフランスでもこの舞曲が流行し、低音をもとにした上声の旋律も決まった形のものが出てきて、コレルリ、ヴィヴァルディ、クープランなど多くの作曲家が「フォリア」を作曲しました。 マラン・マレはバロック時代にフランスのヴェルサイユ宮殿で活躍したヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者でした。数年前にフランスで大ヒットし、日本でも公開されて話題となった映画「めぐり逢う朝」は、このマレと師匠のサント=コロンブを扱ったもので、ご覧になった方もおられると思います。フランスにはマレと同時代に活躍したヴィオール奏者でアントワーヌ・フォルクレがいて、「マレは天使のように、フォルクレは悪魔のように弾く」と謳われていました。このマレは、多くのヴィオール曲を残しており、マレの生前に「ヴィオール曲集」が5冊出版されました。 「スペインのフォリア」はその中の第2巻に収められ、彼の作品の中で最も有名な曲で、ニ短調、主題と31の変奏で構成されています。この第2巻は序文にマレ自身によって「その他の楽器で演奏してもよい」と書かれ、その楽器の例の中にフルートも入っていることから、フルート用の楽譜も数種類出版されています。

■こちらはフルートと通奏低音用の楽譜で、ト短調に移調され、主題と31の変奏による全曲版です。
(SR)
「フォリア」はイベリア半島起源の古い3拍子系の舞曲で、8小節または16小節単位の決まった低音主題の上に変奏が繰り広げられる変奏曲の形を取っています。バロック時代にはスペインを始めイタリアやフランスでもこの舞曲が流行し、低音をもとにした上声の旋律も決まった形のものが出てきて、コレルリ、ヴィヴァルディ、クープランなど多くの作曲家が「フォリア」を作曲しました。 マラン・マレはバロック時代にフランスのヴェルサイユ宮殿で活躍したヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者でした。数年前にフランスで大ヒットし、日本でも公開されて話題となった映画「めぐり逢う朝」は、このマレと師匠のサント=コロンブを扱ったもので、ご覧になった方もおられると思います。フランスにはマレと同時代に活躍したヴィオール奏者でアントワーヌ・フォルクレがいて、「マレは天使のように、フォルクレは悪魔のように弾く」と謳われていました。このマレは、多くのヴィオール曲を残しており、マレの生前に「ヴィオール曲集」が5冊出版されました。 「スペインのフォリア」はその中の第2巻に収められ、彼の作品の中で最も有名な曲で、ニ短調、主題と31の変奏で構成されています。この第2巻は序文にマレ自身によって「その他の楽器で演奏してもよい」と書かれ、その楽器の例の中にフルートも入っていることから、フルート用の楽譜も数種類出版されています。

■こちらはフルートと通奏低音用で、主題と31の変奏を全て含む全曲版ですが、原調の二短調での編曲で、ヴィオールの重音奏法なども楽譜を見てわかるように楽譜に反映されていて原曲を知るには良い楽譜です。 
(SR)

木管アンサンブルの中の1楽章です

チェコの作曲家マルティヌーは、1929年に「フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット2本にピアノ」という少し珍しい編成の六重奏曲を書きました。全体的にジャズっぽい雰囲気をまとった、お洒落な響きで、個人的にはなんとなく大人っぽいと感じる作品です。
第3楽章にあたるこのスケルツォは、フルートとピアノのみで演奏されます。躍動感のある楽章で、おどけた感じでピアノとの掛け合いを楽しんで最後まで一気に疾走してください。(ただし、ピアノとの練習は綿密に!)3分にも満たない短い作品ですので、アンコールなどにも取り上げやすいです。
メンバーがいれば、是非原曲の六重奏も演奏してみてください。
【ピアノと木管楽器のための六重奏曲 H.174】
I. Preludium : Poco andante
II. Adagio
III. Scherzo : Allegro vivo (Divertimento I)
IV. Blues (Divertimento II)
V. Finale
【上級者向け】 演奏時間:3分弱 (B)

本日の「サプリメント」

ボフスラフ・マルティヌーは、チェコを代表する作曲家です。彼の作品は、オペラやバレエ音楽から交響曲、合唱曲、室内楽と多岐にわたります。幼少のころからヴァイオリンを学び、オーケストラでも演奏していました。10歳ころから作曲を始め、プラハとパリで学びました。チェコ独特の民族性に加え、ジャズ的要素も盛り込んだ作風は彼の多くの作品に共通して見られます。1941年にアメリカに渡り、このフルートとピアノのためのソナタは1945年に作曲されました。急・緩・急の3楽章からなります。躍動感あふれるマルティヌー独自のリズミックなメロディは、一度聞くと忘れられないかもしれません。なお、この出版譜はファースト・ソナタと題されていますが、実際にはこの一曲しか書いていません。
【上級者向け】 演奏時間:約17分 (B)

忘れられたコンクール用小品2

ジュール・マゼリエは1879年に生まれ、1959年に没したフランスの作曲家です。パリ音楽院(コンセルヴァトワール)にて作曲をルネヴーとフォーレに師事。1879年と言えばゴーベールと生まれた年が同じで、ゴーベールが1905年にローマ大賞一等賞の次席を取ったのに続いて、1909年にローマ大賞一等賞をカンタータ《ルサルカ》にて受賞しました。この時二等賞を取ったのはハーピストとしても有名なマルセル・トゥルニエでした。前年度1908年には教育者ナディア・ブーランジェ、翌年1910年には理論の大家、ノエル・ギャロン、指揮者として活躍したポール・パレ―の名が見え、錚々たる顔ぶれが並んでいますが、その間に挟まれてしまった不運とでも言いましょうか、マゼリエの名前はぱっとしません。1918年から1922年まではオペラ=コミックの指揮者を務め、1928年より1952年まで母校で教鞭を取りましたが、1930年のコンセルヴァトワールのクラス写真にて、声楽科のソルフェージュ・クラスの教授として写っています。
1930年代に彼はコンクール用小品をいくつか作曲しています。今回のディヴェルティスマンと同年(1931年)にはバソン(フランス式ファゴット)のために《プレリュードとダンス》を、1936年にはクラリネットのために《ファンタジー=バレエ》といった具合です。残念ながら彼の作曲スタイルには目新しいところはなく、彼が時代に埋もれてしまった原因の一つとなりましたが、逆に言うと穏健な作風であり、ヴァイオリン等に比べると古典派、ロマン派のレパートリーの積み重ねが少ないフルートにとっては貴重なクラシカルなレパートリーとなることでしょう。
《ディヴェルティスマン・パストラル(田園喜遊曲)》は当時のフルート科教授、ゴーベールに献呈され、他のコンクール用小品にもれず、緩急の二部構成となっています。前半がアンダンテ、主題は流れるような分散和音に乗った息の長いタイトル通り田園風の旋律が特徴です。後半はアレグレット・モデラートで、伝統的なリズムにはのっとっていませんが、半音階や分散和音で目まぐるしく旋回する様は、雰囲気としてはタランテラに近いものがあります。サイレンのようなピアノのユニゾンによるトリル持続音が契機となり、七度の落下エネルギーをもとに旋回が始まり、こちらが後半の主題となっています。一度旋律が登りきったところでジェットコースターの落下運動のような動きをして小さなカデンツァを終えると、嬰ヘ長調に転調し再び主題が始まります。その後さらにタランテラの旋回は展開され、大きなカデンツァ、主題の再提示、すこし遅くなって(ジェットコースターの急降下直前の緊張感)、最後四分音符138のスピードで駆け上がって終焉を迎えます。1931年のコンクールで一等賞(プルミエ・プリ)を受賞した4人のうち、3人は大きな業績を残しませんでしたが、残る一人がアンドレ・ジョネでした。彼は後にスイスで活躍し、オーレル・ニコレやペーター=ルーカス・グラーフをはじめ日本人を含む多くの奏者を育て、フレンチ・スクールを国際的に広めたことはご存知の通りです。(2016年10月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

早熟の天才メンデルスゾーン

メンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタは3曲あり、そのうち2曲がヘ長調で書かれています。1820年、11歳の時に作曲されたこのソナタは、その前年の1819年から本格的な作曲の勉強を始めたメンデルスゾーンが瞬く間に作曲の基礎を修得し、完成させた最初の本格的な作品です。子供の時の作品であるこということでは、モーツァルトが9歳のころに作曲し、フルートでもよく演奏されるKV10からKV15の初期ソナタと状況が似ています。彼は後に音楽の上で様々な改革を行いましたが、この時期の作品としてオーソドックスでシンプルな作りながら、生き生きとした佳曲となっています。この楽譜は実力派フルーティスト、フェリックス・レングリの編曲によるものです。
(SR)
モーツァルトの陰に隠れて、ビゼーやメンデルスゾーンが早熟の天才だったことは忘れられがちです。彼は代表作のひとつ、「真夏の夜の夢」序曲を17歳で作曲しています。今回ご紹介する1曲目はそんなメンデルスゾーンが14歳で作曲したヴァイオリン・ソナタです。シューベルトが「しぼめる花による変奏曲」や「アルペジョーネ・ソナタ」を作曲する1年前の1823年に作曲され、メンデルスゾーンはその前年に、最初のヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲なども作曲しています。14歳の少年が作曲した曲とは思えないほどの深みを持ちながら、若々しい勢いと豊かな叙情性を持った作品です。この曲は当時チェロ用やフルート用に編曲され出版されていますが、この楽譜はフルートの教則本で有名なアンリ・アルテスによる編曲です。
(SR)

メンデルスゾーン唯一のフルート曲(Fl.Pf/Fl solo)

いいですよね、メンデルスゾーン。
今日ではメンデルスゾーンといえば作曲家ですが、当時は指揮者・教育者としても有名でした。死後約80年間一部の音楽家・知識人などにしか知られていなかったJ.S.バッハを、「マタイ受難曲」再演で広く世に伝えたのは、彼の大きな業績のひとつです。後世の作曲家の多くはバッハの作品に影響を受けていますので、彼の残したものの大きさは計り知れません。
さて、作曲家としては「結婚行進曲(あの有名なパパパパーンです)」「フィンガルの洞窟(表題音楽の先駆け)」「ヴァイオリン協奏曲(3大ヴァイオリン協奏曲に数えられています)」「歌の翼(後にシュテックメストが幻想曲を作曲しました)」などで有名な彼ですが、残念ながらフルートのオリジナル・ソロ曲はこの「羊飼いの歌」しか残されていません。
たった30小節の素朴な旋律に寂しさと温かさが同居しており、メロディーが耳に残る味わい深いおすすめ曲です。個人的には風の冷たい秋冬に吹いていただくと気分も盛り上がるのではないかと思います。
3分ほどの曲なのでアンコールにいかがでしょうか。残りますよ。余韻。
【初・中級者向け】 (AN)

「言葉のない歌」をフルートで!

「無言歌集」(Lieder ohne Worte)は、ドイツ・ロマン派の大作曲家メンデルスゾーンによって1829年から1845年にかけて作曲され、各6曲ずつ、全8巻で出版されたピアノ独奏のための曲集です。これまでにもUniversal社やその他様々な出版社から、フルートのために編曲され単品や曲集で出版されていますが、このVigor社から新しく出版された曲集がおそらくこれまでで最も曲数が多く、全22曲がまとめられた充実の1冊になっています。
編曲者はイタリアのフルーティスト、作曲家、指揮者のルカ・ルッソ。各巻から3〜4曲ずつ、フルートで「歌う」のに向いたゆったりめのテンポの曲やより旋律的な曲が抜粋され、フルートとピアノ伴奏のためにアレンジされています。調性は大部分の曲が原曲から移調されていますが、うっとりするような美しいメロディはそのまま、フルートで演奏して楽しむことができます。
メンデルスゾーンは残念ながらフルートのためのオリジナル作品はほとんど残していませんが、ぜひこの傑作「無言歌集」で、彼の抒情的な美しい音楽に酔いしれてみてください。音楽的に「歌う」ことを学ぶためのエチュードとして利用されても面白いかもしれません。技巧的には易しいので初〜中級者の方からお楽しみいただけます。
この楽譜に基づいて全曲録音したCDも発売されましたので、合わせてチェックされてみてはいかがでしょうか。(CD-ID:8645)
【初・中級者向け】 (M)

ディズニー映画「ポカホンタス」より

ディズニー映画「ポカホンタス」のテーマ、挿入曲の曲集です。
メロディーは民族的なイメージを彷彿とさせるもので、ディズニー映画ならではの聴きやすさがあります。♭の多い調性や、転調がある曲が含まれていますので、初級者の方でレベルアップを目指している方にもおすすめ出来る一冊です。
アラン・メンケンは、この他にも「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「ノートルダムの鐘」など、多数のディズニー映画の音楽を手掛けているアメリカの作曲家です。
※パート譜と伴奏譜とのセット販売となりますので、お買い求めの際はパート譜・ピアノ譜ともにご購入ください。
(H)

フルートで 『鳥』

メシアンは20世紀を代表する作曲家のひとりで、生涯をフランスで過ごしました。 作曲家としてだけではなく、ピアニストやオルガニストとしても活躍し、パリのサン・トリニテ教会のオルガン奏者を60年以上も勤めました。 カトリック信仰を題材にした曲や、鳥の歌声を取り入れた曲などを作りました。
この曲は1951年にパリ音楽院卒業試験の課題曲として作曲されました。随所に鳥の鳴き声の模倣がみられます。 ピアノ伴奏の上で繰り広げられるさえずりが次第に盛り上がり、最高潮を迎えて終結します。
【上級者向け】 演奏時間:約6分 (I)

ファンタジー・ソナタ

マックス・マイヤー=オルバースレーベンは、1850年4月5日にワイマール近郊のオルバースレーベンで生まれました。ワイマールで学んだ後ミュンヘンへ移り、そこでヨーゼフ・ラインベルガーらと共に学びました。1876年にヴュルツブルクの王立音楽学校の教授になり、その後、校長に就任しました。合唱団体「リーダーターフェル」の指揮者として活躍し、1927年12月31日にヴュルツブルクで亡くなりました。このファンタジー・ソナタは、古典的形式でありながら第2・3楽章には暗示的なタイトルがつけられています。
第1楽章:Lebhaft(活発な)は、対照的な主題を持ち合わせたソナタ形式。
第2楽章:Standchen(セレナーデ)は、夢見るような旋律で始まり、途中起伏があり、再び静けさに戻ります。
第3楽章:Baccanale(バッカナーレ:酒神バッカスの祭り)は、大変にぎやかな楽章で、ロンド形式です。全体的にかなりエネルギッシュな曲です。演奏時間は約19分30秒で、各楽章とも6〜7分です。
【中・上級者向け】

イタリアフルート奏者のオペラ・ファンタジー

ヴィンセンツォ・デ・ミケリス(1825-1891)はイタリア・ローマ生まれのフルート奏者です。アポロ劇場の首席奏者で、ローマのサンタセシリア国立アカデミアの教授を務めました。ミケリスについては現在も研究がすすめられていますが、フルートの改良に努め、ピッコロやフルートのための作品をいくつか残しています。フルートの腕前は作品を見ると分かるように、超絶技巧を披露できるぐらいのテクニックがあったようです。
今回ご紹介するのは、ウェーバーの歌劇『魔弾の射手』を題材に、フルートの魅力が詰まったオペラ・ファンタジーです。序曲の第1主題が所々に使われ、フルートパートには第2幕のアガーテのアリアや、第3幕の「たとえ雲が覆い隠しても」の美しい旋律が作品に盛り込まれています。また、その旋律の後には超絶技巧の変奏曲やカデンツが組み込まれ、最後まで飽きさせない構成となっています。ミケリスが作曲したこの作品は、現代譜で初めての出版です。ぜひフルートで美しいアリアと、聴衆を驚かせる技巧を演奏してみてください。
【上級者向け】 演奏時間:約10分 (TO)

演奏会にピッタリのファンタジーです!

モルラッキは「スイスの羊飼い」で知られたイタリアの作曲家ですが、その生涯についてはよくわかっていません。
この曲はイタリア人フルーティスト、グリミネッリなどが最近演奏会で取り上げ、楽譜のお問い合わせも多かったのですが、やっと発売となりましたのでご紹介します。 タファネルやジュナンなどの19世紀に書かれたオペラ・ファンタジーの様式にのっとった技巧的で華麗な曲です。ロッシーニの軽快なメロディを生かして楽しく聞き映えのするアレンジになっていますので、リサイタルにもぴったりです。ぜひ演奏会のプログラムに加えてみてください。
【上級向き】 (T)

もうひとつの勘違い

 前回、「愛の喜び」の作曲者とされたマルティーニについての間違いをご紹介しましたが、もう一曲、作曲家を間違ったまま知られてきた曲があるのです。それがジェームズ・ゴールウェイも愛奏する、このモルラッキの「スイスの羊飼い」です。印象的なピアノの旋律に乗って奏されるフルートのパッセージと泣かせるアンダンティーノからなる序奏、主題の「スイスの歌」から華やかで技巧的な2つの変奏へと続き、最後は“超絶技巧”のスケルツォで締めくくられます。いかにもロマン派の多くの演奏家たちが、よく歌うメロディーと華やかな変奏で自分の音楽と技術を聴かせた時代の作品で、“スイスの”というよりは、全編“イタリア”色に充ち満ちた歌心を持った曲です。
 ちょっと変なのは、その作曲家がフランチェスコ・モルラッキ(1784 – 1841)とされていたことで、そうだとするとベートーヴェンと同じ時代の作品???古典派の時代にドレスデンのイタリア歌劇場総監督を務めた、マジメを絵に描いたような人の曲とは思えない!!!
 そうです。実は違っていたのです。ずっと疑いもされずにフランチェスコ・モルラッキ作曲と思われてきたこの曲、楽譜の表紙をよく見てみると、何と“P.(!=昔出ていた楽譜にはこのP.が無かったのです)MORLACCHI”と印刷されているではありませんか。よくよく調べてみたら、この人、全くの別人。ピエトロ・モルラッキという19世紀後半の人で、ミラノ・スカラ座でフルートを吹いていた人物でした。同僚のファゴット奏者と共作した「ヴェルディの主題による協奏的二重奏」(Fl.Fg.Pfの曲で楽譜も出ています)という曲も残っています。
 まあ作曲したのが誰かはともかく、なかなか派手できれいな曲なので、我こそはと思うアナタ、是非試してみて下さい。
(SR)

ブラームスはハンガリー、ドヴォルジャークはスラヴ、そして…

19世紀から20世紀初めにかけてのフランス音楽界のスペイン趣味はよく知られています。ラロの「スペイン交響曲」やビゼーの「カルメン」などから、20世紀に入るとラヴェルの「スペイン狂詩曲」、ドビュッシー「イベリア」など挙げればいくらでも出てきそうです。しかし、実際にはこのスペイン趣味は他の国にもあったようで、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」などはその代表例、1887年にペテルブルクで初演されています。
ここでご紹介する作品もフランスで書かれたものではありません。ポーランドで生まれたピアニストで作曲家、モシュコフスキーが作った「5つのスペイン舞曲 作品12」です。彼はドイツで活躍した後、パリに移住しますが、この曲はパリに移る前の1876年にピアノ連弾用として作曲、出版されています。ブラームスやドヴォルジャークにも見られるように、ピアノ連弾の楽譜は、当時よく売れたのです。「スペイン舞曲 作品12」も人気があったらしく、1883年にはペータース社から複製出版され、旋律楽器(ヴァイオリン、コルネット、フルートまたはクラリネット)とピアノのための編曲版も同社から出版されました。この楽譜はそのペータース版を復刻出版したもので、フルート用のためパート譜はフルートしか付いていませんが、ピアノ・スコアはヴァイオリン用になっています。調性はピアノ連弾用の原調、ハ長調、ト短調、イ長調、変ロ長調、ニ長調のままにしてあります。今ではオーケストラへの編曲で聴く機会が多い曲ですが、当時のサロンや家庭内の雰囲気で楽しむのも悪くありません。
(SR)

5つの小品

フランス・パリで生まれたジュール・ムーケ(1867-1946)はドビュッシーと同時代に活躍した作曲家で、1896年にカンタータ「メリュージーヌ」でローマ賞を受賞します。残された作品はフルート以外に木管楽器のためにも作曲されているようですが、1904年に作曲された「パンの笛 op.15」が今ではよく演奏される作品となっています。
「5つの小品」は1925年、ムーケが58歳の時に作曲されました。各曲が2分ぐらい、全曲演奏しても約6分と気軽に取り組める作品です。
第1曲:Andantino 16分音符で奏でるピアノから始まり、ノスタルジックな雰囲気がフルートへと受け継がれます。短調の心地よいメロディーが耳に残ります。
第2曲:Allegretto 異国を訪れて故郷を想うような、哀愁を漂わせる響きが印象的です。
第3曲:Adagio これまでとは違って半音階で表現されており、不安定で悲しげですが最後は長調のハーモニーで終わりホッとします。
第4曲:Andante フルート(12/8拍子)が低音域でゆったりと吹くメロディーとピアノ(4/4拍子)の奏でるリズムの掛け合いが面白く表現されており、聴衆を惑わせる1曲です。
第5曲:Allegro 雰囲気がガラッと変わり、高音域ではつらつとしたメロディーでフィナーレを迎えます。
【中級者向け】 演奏時間:約6分 (TO)

忘れられたコンクール用小品

ジュール・ムーケ(1867-1946)は《パンの笛(フルート・ソナタ)》 Op.15 (1906年)が有名で、フルーティストには名が通った作曲家ですが、残念ながらその他の曲は現在耳にする機会が多くありません。彼は商人の息子としてレ・アール(中央市場)に近いパリ1区で生まれましたが、早くから音楽に興味を示し、パリ音楽院(コンセルヴァトワール)の和声のクラスにおいてはグザヴィエ・ルルー(1863-1919)に、作曲のクラスにおいてはテオドール・デュボワ(1837-1924)に師事しました。1896年にカンタータ《メリュジーヌ》にてローマ大賞を受賞。1913年より1927年まで母校の和声の教授を務めました。
《エグローグ》は1909年にコンセルヴァトワールのフルート科のコンクール用小品(卒業試験課題曲)として作曲され、いわば《パンの笛》の「続編」となっています。献呈先は当時のフルート科教授、エヌバン(1862-1914)で、彼が教授に就任して最初のコンクールでした。
「エグローグ」という言葉は訳すと牧歌、田園詩となりますが、語源は古代ギリシャ語で初出はラテン詩人のウェルギリウスになり、古典古代に思いを馳せる点で《パンの笛》と共通しています。冒頭には《パンの笛》の時と同じく詩の引用が掲げられています。やはり田園詩で有名な古代ギリシャの詩人テオクリトスのエピグラムの引用です:「ねえ君、ミューズの名において、君のアウロス(二本笛)で我々に甘美な調べを演奏してくれないかい?」
この曲は3つの主題からなり、第一主題は3連符によって田園を駆け抜ける一陣の風を模倣したパストラール主題です。第二主題は《パンの笛》の第二楽章にも見いだされる「マリンコーニコ」の表情指定のついた、東洋風の響きを持つ抒情主題。第三主題はオクターブの跳躍を契機とした軽快で動的な主題、これらの組み合わせと転調により一つのタペストリーの如く織り上げられ、最後は第一主題がつむじ風のようになり熱狂の内に幕を閉じます。(2016年6月記)
(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

最近ジャズにハマっている方へ!

作曲者のM.マウワー(1958〜)は、ロンドンのロイヤル・アカデミーでフルートを学んだそうですが、現在は作編曲家、ジャズ・サックス奏者として特に名が知られています。坂本龍一やティナ・ターナ、ビョーク、そしてジェームズ・ゴールウェイといった人気ミュージシャンの録音に参加したり、BBCビッグバンド、ストックホルムジャズ管弦楽団など多数のビッグバンドのために作品を書いたりと、様々なジャンルで目覚しい活躍をしています。この「オパス・ディ・ジャズ」は、1.Shuffle 2.Ballad 3.Bluebop の【急(?)−緩−急】三楽章から成るソナタ形式で書かれています。全体を通し、和音やリズムすべてにおいてとにかくジャズの要素が満載のノリノリの作品です。すべて音符で書かれていますので、即興演奏やアレンジの心配もありません。現代奏法もほとんどありません。リズムに乗ってスイングし、早いテンポでもピアノとピタリ合わせられれば超カッコいい!!一曲です。ただフルートもピアノも難易度が非常に高いので、腕に自信の有る上級者向きかと思われます。最近ちょっとジャズっぽい作品にハマっているかた、ぜひチャレンジしてみてください。
演奏時間:約17分 (A)

あのモーツァルト?いいえ、息子さんの作品です

F.X.モーツァルト(1791-1844)はW.A.モーツァルトの末子(四男)で唯一作曲家、ピアニストとして活躍しました。生後4ヶ月程で、父モーツァルトが他界したため、直接音楽の手ほどきを受ける機会は残念ながらなかったのですが、幼少期より音楽の才能を発揮、ピアノを弾く姿は父モーツァルトの幼い頃のようだ、神童だと評され、やがてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト2世と名乗りました。ピアニストとして活躍していたためかピアノ作品を多く残しました。
今回ご紹介するフルートとピアノのために書かれたロンド ホ短調は、当初、フルート・ソナタの第一楽章として作られたそうで、「素晴らしいフルート・ソナタが出来るだろう」と周囲に話していたようなのですが、その他の楽章は見つかっておりません。ソナタ形式で、ウィーン古典派のクラシックな趣と19世紀初頭のロマン的な叙情を併せ持ち、繊細で情熱的なメロディが印象的な作品です。比較的取り組みやすい曲ですので発表会などにいかがでしょうか?
【中級者向け】 演奏時間:約8分 (NS)

きらきら星

W.A,モーツァルトはピアノのための変奏曲をいくつか作曲しました。1778年のパリ滞在中には4曲書かれており、その中で最も知られた名曲が「『キラキラ星』による12の変奏曲 ハ長調(キラキラ星変奏曲)」です。原題はフランスで当時流行したシャンソン「ああ、お母さん、あなたに申し上げましょう」で、若いお嬢さんがお母さんに恋人への想いを打ち明けようとする「恋歌」です。フルート用に様々な編成で楽譜が出版されていますのでご紹介いたします。主題はとてもやさしいメロディですが、変奏部分は技巧的になっていますので、全て中・上級者向けです。 原曲に忠実にフルートとピアノ用に編曲されています。
(I)

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ

このモーツァルトの6つのソナタは,原題が「ヴァイオリンまたはフルートを伴うチェンバロ・ソナタ」ですが、従来広く使われてきたBopp編曲のReinhardt社の版ではピアノパートをかなりフルートに移すなど大幅なアレンジが行われていました。 今回ご紹介する版では、今一度原典版を詳細に研究し、間違いなども直した上で、Boppとは違うアプローチで手を入れてあります。オリジナルそのままでもありませんが、モーツァルトの貴重なフルートのための作品であるこの曲に新しい光を当てる楽譜といえるでしょう。
すでに校訂者のSCHMEISER氏による演奏のCD(ID:5085)が発売されており、お問い合わせも多かった楽譜です。Reinhardt版をお持ちの方にも比較のためにご覧になっていただきたいと思います。
【中級者向け】 (T)

「マンハイム・ソナタ」

モーツァルトの中期のヴァイオリン・ソナタ6曲のセットで、1778年にパリのシベールから「作品1」としてまとめて出版されたもので、「マンハイム・ソナタ」と呼ばれる曲です。第1巻に入っている3曲はいずれもマンハイムで作曲されたもので、2楽章からなり、演奏時間も10分から12分ぐらいの比較的短い曲ばかりです。明るく若々しい力の溢れるKV 301、華麗なKV 302、大胆な構成を持つKV 303と夫々個性的な作品ですが、どの曲もフルートで演奏しても十分に楽しめる名曲ばかりです。3曲ともオリジナルのヴァイオリンの調性(ト長調/変ホ長調/ハ長調)をそのままに編曲してあります。
(SR)
「マンハイム・ソナタ」の第2巻です。KV 305はマンハイムで作曲され、アレグロと変奏曲という珍しい楽章構成の2楽章からなっています。KV 304はパリで作曲され、ヴァイオリン・ソナタとしては唯一の短調で書かれた作品で、二つの楽器の親密な対話、確固とした構成など完成度の高い作品になっています。KV 306もパリで作曲されており、KV 304とは対照的に、二つの楽器が協奏的に華々しく活躍する雄大な曲で、この曲のみ3楽章からなっています。この第2巻もオリジナルと同じ調性(ホ短調/イ長調/ニ長調)での編曲です。6曲それぞれが独特の個性をもったこれらのソナタを、是非フルートのレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
(SR)

選び抜かれたモーツァルトのソナタ集を

モーツァルトにはフルート・ソナタがありません。よく演奏されるKV10からKV15までの6つのソナタは、モーツァルトが8歳のとき、父レオポルトと滞在したロンドンで作曲した“ヴァイオリンまたはフルート伴奏付のクラヴィーア・ソナタ”でした。フルートでは「ピアノの右手」と「フルート・パート」を入れ替えて、フルートを目立たせて演奏するように編曲した楽譜がよく使われています。
こうした初期のソナタから中期になると、旋律楽器の役割りは大きくはなってきますが、まだピアノの役割りの方が大きいソナタで、しかもこの時期以降フルートは使われず、ヴァイオリンだけになってしまいます。その後、ヴァイオリン・ソナタは後期の作品に向かいピアノよりもさらにヴァイオリンの役割が大きくなっていきます。ベートーヴェンやシューベルトなどにも通じる充実したソナタになっていくのに、フルート・ソナタが無いのはいかにも残念です。
フルート用に編曲された作品では、1992年に音楽之友社から工藤重典氏編曲による「モーツァルト/フルート・ソナタ集」@(KV301/KV302/KV378/KV360)とA(KV376/KV403/KV454/KV570)の楽譜が出版されました。この2冊は、このヴァイオリン・ソナタを取り上げて、原曲のヴァイオリンとクラヴィーアの組み合わせを考慮し、オリジナルを大事に生かしながらフルート用に移し替えた編曲と、中期から後期にかかる代表的なソナタを集めた選曲の良さから評判を呼びましたが、長らく版元切れで入手できず、問い合わせの多い楽譜でした。
今回ご紹介する「[新版]モーツァルト/フルートとクラヴィーアのためのソナタ集」は、この2冊の中から、特に人気がありフルート向きと考えられる4曲の中期のソナタ(KV301/KV305/KV376/KV378)と、後期の先駆けとなったソナタ1曲(KV454)というさらに厳選した曲目になりました。編曲も旧版の方向を踏襲しながら、KV454はさらに進化した編曲になっています。
プロ・アマ問わず、モーツァルトの充実したソナタを吹きたい方にお勧めしたい楽譜です。
【中・上級者向け】 (SR)

THE MAGIC FLUTE

W.A,モーツァルトの歌劇の中で最も有名な歌劇「魔笛」をフルート用に編曲した楽譜をご紹介いたします。
ム、ム、ム・・・ああ、なんと強力な魔法の音が 〜 私は鳥刺し 〜 ああ、愛の喜びは露と消え 〜 僧侶の行進 〜 何と素敵な鈴の音  によるメドレーになっています。変奏部分はあまりありません。
【中級者向け】

べーレンライター版/フルート協奏曲 ト長調

ベーレンライター社の「フルート協奏曲 ト長調」の楽譜が改訂されました。今までのものは「新モーツァルト全集」の原典版に、フルート奏者のグンター・ポールが演奏上の注意を加えたもので、完全な原典版とは言えないものでしたが、今回の楽譜はそれを「新全集」の原典版に戻してあります。さらにこの楽譜にはそれ以外の大きな変更点が3つあります。「アンダンテ ハ長調」が省かれたこと。伴奏をシンプルにして弾き易くしたこと。これまでフルート・パート譜に直接印刷されていたカデンツァやアインガングを別冊にして、新しく人選された3人の演奏家の最新の研究による様々な可能性のあるカデンツァやアインガングが付き、丁寧な解説が付けられたことです。これから、モーツァルトのフルート協奏曲を演奏するときのスタンダードとなることでしょう。
(SR)

クラリネットをフルートで 2

モーツァルトがその死の年、1791年に友人のクラリネット奏者アントン・シュタットラーのために作曲した「クラリネット協奏曲 イ長調」は、同じ年に作曲された「ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調」と並んで、彼の協奏曲の最高傑作です。フルート奏者に限らず、現代の演奏家・愛好家はどうしても作曲された楽器で演奏しないといけないと考えがちですが、モーツァルトの時代は音楽はもっとずっと自由な感覚で演奏されており、この曲も1801年にはフルート用に編曲されて演奏されていたようです。ちなみに彼の「クラリネット五重奏曲」も当時からフルート用に編曲され、演奏されていました。この楽譜はA.E.ミュラーが1801年にト長調に編曲した楽譜を元にピアノ伴奏用にしてあります。当時のバセット・クラリネットという、現代のクラリネットより低音域に向かって音域が拡張された楽器のために作曲されているため、オクターブの入替えなどもかなり多いのですが、大いに楽しめる楽譜です。
(SR)

あなたも知っている、モーツァルトの名旋律。

以前出版されたチャイコフスキーに続き、ゴールウェイ編集によるモーツァルトの名曲集が発売になりました。 チャイコフスキー同様、今回もフルートのオリジナル曲だけでなく、オペラ、室内楽、ピアノやヴァイオリンの曲など幅広い作品からモーツァルトの珠玉のメロディーを選んであります。きっと、一度は吹いてみたかったあの曲この曲が見つかるに違いありません。
【初・中級者向け】 (T)

ピアノ伴奏で四重奏を。

フルートと弦楽器で演奏される室内楽といえば、フルートとヴァイオリンの二重奏、フルート、ヴァイオリンとチェロの三重奏、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロの四重奏・・・と様々な形があります。その中で最も数多く作曲されているのが「フルート四重奏」でしょう。この形は“通奏低音”が無くなった古典派の時代に作られ、現代でも作られていますが、その中で最も有名な作品が、W.A.モーツァルトが作曲した4曲の四重奏曲です。この4曲は、モーツァルトの他のフルート作品(協奏曲)より技術的には易しく、アマチュアの方々にももっと楽しんで吹いていただきたい曲です。
室内楽を演奏する時に困るのは、メンバーを集めなければならないことです。3人も弦楽器の知り合いが居ないという方に朗報です。今回ご紹介する楽譜はこの4曲をピアノで伴奏できるようにした楽譜で、フルート・パートは原曲と同じなのです。ピアノ伴奏譜は出ているけれど、協奏曲は難しくて吹けない・・・でもモーツァルトは吹きたいと思っていたアナタ。是非この楽譜でオリジナルのモーツァルトをお楽しみください。
(SR)

ソナタに続け!

ムチンスキというと一番にソナタが思い浮かびますよね。ですが、今回ご紹介しますのはモーメンツという曲です。ソナタに負けない華やかさ、陽気な主題そしてちょっとミステリアスなメロディーも出てきます。
それでは、解説です。ムチンスキは現代のアメリカを代表する作曲家の一人でポーランド系のアメリカ人です。元々ピアノを専門で学んでいた為、自作自演の曲を数多くこなしています。作曲家としてもとても実力があり、数々のコンクールで賞を獲得しています。  この曲は1992年に作曲家である母アレクサンドラ・ハーレイの為にかかれ1993年に初演されています。 新たな曲を探されている方にはもってこいの曲です。試験曲、演奏会などにいかがでしょうか。
【上級者向け】 演奏時間:約13分 (N)

バッハ最後の弟子のフルート・ソナタ(Fl.Bc.)

1728年1月17日にドイツのメルンで生まれたヨハン・ゴットフリート・ミューテルはオルガニストだった父からピアノ、オルガン、フルート、ヴァイオリンの手ほどきを受け、さらにリューベックで聖マリア教会のオルガニスト、パウル・クンツェンに音楽を学びました。1747年、19歳でメクレンブルク・シュヴェーリンの宮廷に奉職した彼は、3年後の1750年に1年間の休暇をもらい、5月4日にライプツィヒのJ.S.バッハの家を訪ね、バッハ家に住み込みで教えを受けています。バッハは直前の3月と4月に目の手術をうけ、失明状態に近かったので、ほとんど教えを受けていないとも言われていますが、いわば内弟子の形で過ごした期間はミューテルにとってとても重要な時間だったに違いありません。バッハは7月末に亡くなりましたが、彼はその臨終の場にも居たとされています。ミューテルはさらにテレマンやC.P.E.バッハ他からも教えを受けました。その後、彼はリガに移り1755年には同地の中央教会のオルガニストになって1788年7月14日に同地で亡くなるまでその職を務めました。
ミューテルの作品は鍵盤音楽を中心にごく僅か残されています。その中にたった1曲あるフルート作品がこのソナタです。師匠筋のJ.S.バッハやC.P.E.バッハのフルート作品の多さに比べてたったの1曲。書き残した手紙などから想像するとミューテルの性格は内向的で多少不安定なところもあったかも知れません。そんな性格がこの作品数の少なさの原因だったのでしょうか。しかし、この1曲が抜きんでて素晴らしい名曲なのです。様々に転調を繰り返し、特徴的なリズムと間(休符)をもった音楽で、その旋律的な美しさと繊細な表情は、同じ傾向を持ったC.P.E.バッハやクヴァンツ、キルンベルガーらを凌ぐほどです。何で1曲だけ?と考える前に是非吹いてみてください。この時代の音楽を知ることがさらに深い理解につながると思います。
演奏時間:約13分 (SR)

日本の秋を奏でましょう♪

「だれかさんが だれかさんが だれかさんが 見つけた・・・」日本の童謡、「ちいさい秋みつけた」を歌ったり、聴いたことのある方は多くいらっしゃると思います。作曲者である中田喜直氏は、「夏の思い出」や「めだかの学校」など教科書にも載っている歌曲をはじめ、校歌や合唱曲など、数多く有名な作品を残した作曲家として知られています。
この作品はフルートのオリジナル曲で、「ちいさい秋みつけた」の変奏曲です。冒頭はフルートの独奏、その後ピアノが主題を演奏し、6つの変奏が登場します。原曲はホ短調で、全体的に暗めの印象ですが、この作品では第四変奏がホ長調、また第五変奏がハ長調に転調し、曲中は明るく生き生きとした雰囲気もあります。
夏が終わりに近づき、紅葉が色づき始めたころに演奏してみてはいかがでしょうか。
(KM)

20世紀フルート協奏曲の傑作

作曲者晩年の1926年に作られたこの曲は2楽章からなり、調性が次々に展開する中、ソロフルートがオーケストラの中のいろいろな楽器と対話を繰り返すユニークな作品で、イベールやジョリヴェの協奏曲と並んで20世紀のフルート協奏曲を代表する傑作の一つです。ニールセンはデンマークを代表する作曲家で、この新しい版は同国の出版社W.Hansenが最新の研究に基づいて刊行中の「ニールセン全集」に拠るものです.従来使われていた1953年版の出版後発見された作曲者自筆の鉛筆書きのスコアも参照され、アーティキュレーション、ダイナミクスなど随所に改訂が行われています。これからこの曲を演奏される方にはスタンダードとして、旧版をお持ちの方にもぜひ参照していただきたい版です。
【上級者向け】 (T)

対照的な2曲の小品でニールセンの世界観を味わってみませんか?

ニールセンといえばフルート協奏曲が有名ですが、今回は「2つの幻想的小品」をご紹介いたします。
原曲はオーボエとピアノのために書かれた作品で、このW.Hansen版はゴールウェイとクリスチャンセンによってフルート用に短3度上に移調して出版されています。「ロマンス」と「ユーモレスク」の2曲からなり、第1曲「ロマンス」は、冒頭から哀愁漂う叙情的なメロディが非常に印象的です。何度も繰り返される美しく繊細なメロディは3分足らずの短い曲でありながらも、切なく静かに余韻が残る作品となっています。第2曲「ユーモレスク」は、1曲目の雰囲気には想像がつかないほど非常にリズミカルで踊りだしたくなるようなユーモア溢れる曲です。晩年のフルート協奏曲の冒頭とそっくりな衝撃的なピアノのパッセージから始まり、初期の作品でありながらもニールセンの独特の感性、作曲技法が際立つ作品となっています。対照的な2つの小品をぜひレパートリーに取り入れてみてはいかがでしょうか?
【中級者向け】演奏時間:約7分 (NS)