スタッフのおすすめ「フルート・ピアノ」(作曲家A-G)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

泣きのアルビノーニ

「アルビノーニのアダージョ」はアルビノーニの作品ではありません。「バロック名曲集」には必ずと言っていいほど収録されているこの名曲、以前は残されたアルビノーニの作品の断片を基に音楽学者レモ・ジャゾットが復元した作品という触れ込みで出版・演奏されていました。しかし、今では完全にジャゾットの創作だということが分かっています。ジャゾットがアルビノーニの研究家だったことが、この“逸話”の信憑性を高めてしまったのかも知れません。いずれにしてもオルガンの重厚なハーモニーと、泣かせる弦のメロディー、ヴァイオリン・ソロのアルペッジョ、どこを聴いてもバロックというよりは高級なムード・ミュージックまたはセミ・クラシックの作品です。
フルートとピアノで「泣かせて下さい」。
(SR)

大王の妹、アマーリアのフルート・ソナタ

2012年は、バッハ、グラウン、クヴァンツ、ベンダ他多くの音楽家と関係が深く、自らフルートを演奏したフリードリヒ大王の生誕300年にあたり、CD、演奏会などでその名前を見る機会が増えています。今回ご紹介するのは、そのフリードリヒ大王の妹アンナ・アマーリアが作曲したフルート・ソナタです。兄に劣らず音楽を愛し、多くの音楽家を擁護したアマーリアは、1758年にキルンベルガーを楽長に迎えると、その指導の下に本格的に作曲を学びました。このヘ長調のソナタは、当時のロココ趣味を反映した美しい作品で、1771年に作曲され2月14日に兄のフリードリヒに送られています。フリードリヒ大王が演奏したのでしょうか。エマニュエル・パユが録音したCD「ザ・フルート・キング」の中にもこのソナタが収録されています。
(SR)

東洋と西洋が出会った音楽

アミロフはアゼルバイジャンの作曲家です。アゼルバイジャンは、チェロ奏者のムスティスラフ・ロストロポーヴィチの出身地でもあり、東洋と西洋に挟まれたこの地域では独自の音楽の世界があります。
アミロフは、民族音楽の歌い手でタールという弦楽器奏者であった父のもとで民族音楽に恵まれた環境に育ち、生地ギロヴァドと、バクーで音楽教育を受けています。
アミロフの音楽はアゼルバイジャン民謡に強く影響されており、この「6つの小品」には、T.アシュグの唄 U.子守歌 V.舞曲 W.アゼルバイジャンの山脈で X.泉にて Y.夜想曲 と各楽章にタイトルが付けられ、アゼルバイジャンの民族色を感じられる作品です。
【中級者向け】 演奏時間:約14分 (NI)

エチュードでも小品でもないアンデルセン

「アンデルセン」と聞くと、フルート関係者はすぐにエチュードが浮かびますよね。今回ご紹介する「演奏会用小品(コンチェルトシュトゥック) OP.3」は、フルート奏者、作曲家、指揮者として活躍した彼の初期の作品です。また、アンデルセンの作品ではエチュードのほかに小品のイメージも強いですが、こちらは大ぶりの曲で、演奏時間は19分近くに及びます。技巧的に華やかな面を持ち合わせながら、たっぷりと歌い上げることも求められます。ロマン派の作品が他に比べて少ないフルートにとって、貴重なレパートリーでしょう。
カール・ヨアヒム・アンデルセン(1847-1909)はデンマーク出身で、後にベルリン・フィルの創立メンバーとなり、第一フルート奏者として活躍、指揮者としての仕事も行いました。この「演奏会用小品」の作曲年は資料によって諸説ありますが、ベルリン・フィルが創立された1882年近辺と考えられ、当時活躍していたハンブルクのWilhelm Tieftrunkというフルート奏者に捧げられました。また、後世まで知られる偉大なフルート奏者ポール・タファネル(1844-1908)は、この曲を高く評価していたようです。(この楽譜の解説によると、タファネルは1895年のパリ音楽院の試験課題曲に、おそらくカットして当曲を採用したとありますが、試験課題曲の記録では、曲名は「Morceau de Concert」と記されています。)
エチュードで練習するような音形がたくさん出てきますから、日頃の成果の見せどころ?! ちなみに、「第18回日本フルートコンヴェンション 2017 in 川崎」のコンサートで、ウィーン・フィル首席のカール=ハインツ・シュッツ氏が演奏しました。現在手に入るものだと、ザヴィエル・ラック氏のCD(ID:7425)などで聴くことができます。
【上級者向け】 演奏時間:約19分 (YS)

エチュードだけじゃない!アンデルセンの世界♪

K.J.アンデルセン(1847-1909)はデンマーク出身のフルーティスト。作曲家や指揮者としても活躍しました。彼が残した作品は主に練習曲や演奏会用小品で、その数は膨大です。「24の練習曲 作品15」など、エチュードでの印象が強い方もいらっしゃるのではないでしょうか。彼は草創期のベルリン・フィルを支える重要なソリスト、指揮者をつとめ、病気でフルートの演奏が困難になった後はコペンハーゲンで宮廷管弦楽団の指揮者、ティヴォリ公園オーケストラの指導者をつとめるなど、デンマークの音楽界で重要な役割を果たしました。
 この曲集には「マズルカ」や「子守歌」などからなる「6つのサロン用小品 作品24」や「即興曲 作品7」など、上品で綺麗な小品や華やかな作品が集められています。演奏会のアンコール曲や、パーティー等での演奏の場にもおすすめです。特に、パリ音楽院のP.タファネルに献呈された「即興曲 作品7」は、華麗な技巧やドラマチックな曲想が特徴の、聴き映えのする素敵な作品です。
(YS)

おすすめします!

アーノルド…イギリスの作曲家で代表作は、映画音楽「戦場にかける橋」、管弦楽「ピータールー」序曲 など様々な分野で活躍しました。 作曲家として本格的にデビューする前はトランペット奏者として活躍しておりオーケストラ、ロンドン・フィルの首席奏者でした。
この曲は、1948年から1972年まで長くロンドン・フィルの首席フルート奏者を務めアーノルドと同じオーケストラ団員でもあったリチャード・アデニーのために作曲し1954年初演されました。3つの楽章はどれも短いですが中身がつまった音楽です。特に2楽章!! とてもきれいな曲で一度聴いたら忘れないメロディーです。1、3楽章はとてもパワフルで華やかな曲になっております。試験曲、演奏会など…曲をお探しの方におすすめ致します!
【上級者向け】 演奏時間:約12分15分 (N)

メモリアル「マルコム・アーノルド」

「ソナタ OP.121」は1977年1月に作曲され、同年の3月、ウェールズのカーディフで行われた「カーディフ20世紀音楽祭」でジェームズ・ゴールウェイと、イギリス人ピアニストのアンソニー・ゴールドストーンにより初演されました。
曲は3楽章からなっています。
どことなくミステリアスな響きの1楽章【Allegro】、装飾的な半音階と流麗な音階の動きが印象的です。2楽章【Andantino】はゆったりとした憂いのあるメロディーが続きます。3楽章【Maestoso con molto ritmico】は少しおどけたような、また洒脱な雰囲気で聴く人を楽しませてくれます。
アーノルドはこの曲について「できる限り音楽的に面白いものにしようとしている。」と述べています。ソナタの各楽章はとても自由で、まさに「音楽の楽しみ」に溢れています。ですが、とくに1楽章は難しいです。そしてピアノとの掛け合いも巧みです!
「音楽の楽しみ」を是非感じていただきたいと思います。
【中・上級者向け】(U)

フランスの女流作曲家、クロード・アリューをご存じですか?

フランスの作曲家、クロード・アリュー(本名:ルイーズ・マリー・シモン [1903-1990])のソナチネをご紹介いたします。
彼女はパリ音楽院でポール・デュカスをはじめ、多くの著名な作曲家とともに作曲を学びました。1932年にはパリ音楽院で第一回作曲賞を受賞しており、フランスの作曲家が当時好んでいた新古典主義のスタイルを得意とする、多作な作曲家です。
この曲は、第二次世界大戦中の1943年(39歳)にマルセイユで作曲されました。1944年にパリでジャン=ピエール・ランパルによって初演され、国営ラジオで放送されました。その放送は好評を博し、感謝したアリューはこの曲をランパルに捧げました。
メロディックな面とエネルギッシュな面のどちらも持ち合わせ、彼女の特徴である、少し風変わりで遊び心のある1曲です。第1楽章はト長調でエネルギッシュなアレグロ・モデラートで始まります。第2楽章はイ長調の抒情的なアンダンティーノです。その後、元気なプレストの第3楽章が続き、楽しいフィナーレで締めくくります。
少し個性的で素敵な新しい曲をお探しの方、フランス近代のレパートリーをお探しの方や、他の人が知らない発表会の曲をお探しの方におすすめの1曲です。
【中級者向け】演奏時間:約6分(M.M.)

忘れられたコンクール用小品3

ルイ・オベールはブルターニュ地方で現在サン・マロ市の一部となっているパルメで1877年に生まれました。子供の頃から歌が上手で、音楽の才能を感じ取った両親のおかげでパリに行き、マドレーヌ寺院の聖歌隊の一員となりました。1888年のフォーレの《レクイエム》の第一稿の初演の際、〈ピエ・イェス〉のソロを任されたほどでした。1887年に彼はコンセルヴァトワール(パリ音楽院)に入学し、ピアノをルイ・ディエメルに、和声をアルベール・ラヴィニャックに、伴奏法をポール・ヴィダルに、そして作曲をフォーレに師事しました。オベールはピアノでも頭角を現し、1911年に名前を伏せて初演され作曲家名を当てる実験が行われたことで有名なラヴェルの《高雅で感傷的なワルツ》の初演を行い、作品を献呈されたことでも知られています。彼は母校で教鞭をとる傍ら、1956年にギュスターヴ・シャルパンティエの後を継いでフランス学士院(音楽アカデミー)のメンバーとなりました。彼の代表作はペローの童話を元にしたオペラ《青い森》や、管弦楽のための《シャトーブリアンの墓》などがありますが、ミュージック・ホールの歌手のためのポピュラー・ソングも作曲しています。
ルイ・オベールの作風は、当時盛んになった生地ブルターニュのナショナリズムから距離を置き、最初フォーレ、次いでラヴェルの影響を受け、旋法を多用しています。《序奏とアレグロ》は1922年のコンセルヴァトワールのフルート科のコンクール(卒業試験)のために作曲されました。当時の教授であったフィリップ・ゴーベールに献呈されています。オベールは1917年から1919年にかけて《6つのアラビアの詩》を作曲し、1919年の夏にゴーベールの指揮でオーケストラ伴奏版の初演がなされており、そういった縁もあって作曲の依頼が来たのでしょう。タイトルの通り二部に分かれており、前半の緩と後半の急というコンクール用小品の一般的なスタイルです。《アラビアの詩》は当時のフランスにおける東洋趣味を反映していますが、《序奏とアレグロ》にもその残り香が引き継がれ、冒頭において旋法的な主題がフルートによって提示されます。「序奏」部はこの主題を元にした一種の長大なカデンツァと言っても良いでしょう。後半はアレグロの通り軽快な主題で広い音域を駆け上がったり下がったりして、拍の頭に休符があって音楽がほとばしるような音型が多用されます。クライマックスには序奏のテーマが回帰し、音価が引き伸ばされて朗々と歌い上げられ、コーダではさらにテンポが上がって一陣の風が過ぎ去るように締め括られます。
《序奏とアレグロ》の初演ともなった1922年の試験で一等賞(プルミエ・プリ)を取ったアルフォンス・カルパンティエとジャン・デュボスはその後それほど有名にはなりませんでしたが、二等賞でロジェ・コルテ、リュシアン・ラヴァイヨット、フェルナン・カラジェといった錚々たるメンバーが入賞しました。
(2017年2月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

一粒で二度おいしいC.P.E.バッハ(2Fl.Bc/Fl.Pf)

ヨハン・セバスティアン・バッハの次男、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは、音楽を父に学んだ後、ライプツィヒとフランクフルトで法学を学びましたが、音楽で身を立てることになります。1740年、プロシアの国王フリードリヒ大王の宮廷楽に職を得た彼は、チェンバロ奏者として大王のフルートの伴奏を務める事になりました。そのため彼の室内楽作品はフルートを中心とした曲がかなりの比率を占めています。
今回ご紹介する2つの楽譜は楽器編成の異なる同一の曲です。1749年にポツダムで作曲された「ソナタ ホ長調」は“フルートとオブリガート・チェンバロ”または“2本のフルートと通奏低音”のためのソナタとして作曲されました。フルートとオブリガート・チェンバロのソナタでは、トリオ・ソナタの第1フルートがチェンバロの右手、第2フルートがフルート・パートに当てられています。エマヌエル・バッハの場合、「フルートとヴァイオリンのためのトリオ・ソナタ」と「フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ」が同一曲であるものは幾つか存在しますが、2本のフルートを使ったトリオ・ソナタはこの曲のみです。優雅で華やかなギャラント様式で書かれ、繊細な表情と大胆な和声が特徴です。
大王とそのフルートの先生だったクヴァンツがフルートを吹き、エマヌエル・バッハがチェンバロを弾いて演奏されたのでしょうか。
(SR)

再発見されたバッハの息子達の協奏曲

ヴィルヘルム・フリーデマンはヨハン・セバスティアン・バッハの長男として1710年に生まれました。父親ゆずりの楽才は、バッハの息子の中でも最も天才肌と称されましたが、晩年は身を持ち崩し、不遇の内に亡くなりました。
作品は伝統に根差したオーソドックスな作風のものと、ロマン派の先駆けか、むしろ近代を思わせるような斬新な作風の曲が混在しており、この協奏曲はどちらかと言えばオーソドックスな部類に入るものです。おそらく彼が晩年を過ごしたベルリンで1773年以降に作曲したものと思われます。当時のベルリンの趣味「多感様式」の影響を受けたこの協奏曲は、Un poco Allegro−Largo−Vivaceの3楽章から成っています。オーケストラ用のスコア・弦パートも別に出版されています。
(SR)
バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルは1714年に生まれました。長男とは違って独立心の強いエマヌエルは豊かな才能だけでなく、社会性や経済感覚にも優れ、ベルリンのフリードリヒ大王の宮廷音楽家を経て、彼の名付け親だったテレマンの後を受けて、ハンブルグの音楽監督にまで上り詰めた人物です。
今まで知られていた彼のフルート協奏曲5曲は全て彼自身の手によって、彼の楽器であるチェンバロ用にも編曲され、さらにその中の2曲はチェロ用にも編曲されています。作品番号のWq.13は、すでに知られているチェンバロ協奏曲の番号が代用されています。他の5曲に勝るとも劣らないこの協奏曲は、Allegro−Un poco andante e piano−Allegro assaiの3楽章から成り、この楽譜には、ブリュッセル音楽院に所蔵されているエマヌエル自身の手になる第2楽章のカデンツァも掲載されています。オーケストラ用のスコア・弦パートも別に出版されています。
(SR)

フルート用になったバッハの協奏曲

この曲は「チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV 1056」によるものです。原曲は失われていますが、ヴァイオリンかオーボエのための協奏曲であったと推定されています。フルート用にするにあたってイ短調に移調されました。特に、美しいメロディーの第2楽章は人気があり、終結部の形は違いますがカンタータの第156番のシンフォニアとしても使われていて、カンタータではオーボエがソロになっています。編曲はジェームズ・ゴールウェイとフィリップ・モルが行っています。
この曲はチェンバロ協奏曲としては第7番 ニ短調にあたりますが、「ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV 1041」という原曲が現存します。大変有名な曲で第1楽章の急速楽章であるにもかかわらずゆったりとした情感のある佇まいや、第3楽章のスピード感もさることながら、第2楽章の装飾音形の美しさは特筆に価します。フルートへの編曲にあたっては、ヴァイオリン用とチェンバロ用の両方を参考にしながらも、概ねヴァイオリン用に準拠しているようです。調性も原曲のヴァイオリン協奏曲と同一になっています。

バッハのパルティータをフルートで(Fl.Pf/Fl)

バッハのパルティータ。原曲は、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータBWV1006ホ長調(1720、ケーテン)です。 その無伴奏パルティータをロベルト・シューマンがハーモニーなどを補充してヴァイオリンとピアノ用に編曲した楽譜をもとに、ウェルナー・リヒターがフルート用に直しました。 バッハは無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを3曲ずつ書いており、この曲はパルティータの第3曲にあたります。
本来、ヴァイオリン1本でバス、ハーモニーから対旋律まで弾くところを、かなりの部分がピアノ伴奏に移してあるので、フルート・パートのみを無伴奏で演奏した場合、原曲を知っている人にとっては、物足りなく感じるかもしれません。 3楽章のガヴォットは、耳にしたことがある方も多いことでしょう。 原調のホ長調からイ長調に移調されています。
因みに、この曲は、バッハ自身の手によって、1楽章がカンタータBWV120/a(1728〜1736頃、ライプツィヒ)の第二部の冒頭のシンフォニアとカンタータBWV29(1731、ライプツィヒ)の冒頭のシンフォニア、全楽章がリュート組曲BWV1006a/1000(1735〜1740頃、ライプツィヒ)に、転用されています。同じメロディを全く違った曲としてお楽しみいただけます。是非聴いてみてください!
尚、この楽譜には無伴奏ヴァイオリンのためのソナタBWV1005も収録されております。
【中・上級者向け】 (B)

クイケン校訂のバッハ

トラヴェルソの第一人者B.クイケンによる校訂のバッハのソナタ集です。このト短調のソナタは以前はJ.S.Bachの作と考えられ、近年は息子のC.P.E.Bachの作と見なされることが多くなっています。この楽譜でも表紙ではどちらとも限定せず、作品番号も2つ併記しています。しかし中の解説を読むと、クイケン氏は様々な考察の上で、この曲の作曲者はクヴァンツではないかという驚くべき可能性を示唆しています。真偽の解明は今後の研究、あるいは新資料の発見を待たねばなりませんが、フルーティストには実に興味深い説ではないでしょうか。もちろん楽譜も資料の入念な検討の上で校訂されています。別の版をすでにお持ちの方にも、勉強のため手に取っていただきたい版です。
(T)

ヴィオラ・ダ・ガンバの名曲をフルートで吹くなんて…!

バッハの2本のフルートと通奏低音のためのト長調のトリオ・ソナタ(BWV 1039)は大変よく演奏されるフルート作品です。この曲をバッハ自身がヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのために編曲したのが、3曲残されているガンバ・ソナタのうちの第1番です。そのような経緯から、フルートのレパートリーを増やすために、他の2曲のガンバ・ソナタも2本のフルートと通奏低音に編曲した楽譜が出版され、よく演奏されてきました。それなら、この3曲のガンバ・ソナタをフルートとオブリガート・チェンバロ用に編曲するアイディアも出てくるわけですが、これまでそのような楽譜はほとんど出版されていませんでした。「ガンバ・ソナタなら第1番より第2、第3番の方が好きなのに・・・」と思う方もおられると思います。
この不足を埋めるべく、この度、フルーティスト、ヘンリック・ヴィーゼ氏が編曲を担当して出版されたのがこの楽譜です。強くしっかりした低音を持つヴィオラ・ダ・ガンバの曲を、むしろその逆の音の構造を持つフルートで演奏するのは、音楽の表現上難しい部分があるのは承知の上で、それでもガンバ奏者になったつもりで吹くも良し。また、ガンバとは違った新たな表現を目指すも良し。どちらにしても充実した音楽の時間を持てることは間違いありません。
そういえばフルートでよく演奏するマラン・マレの「スペインのフォリア」も元はガンバの曲です。
(SR)

バッハの捧げ物(Fl.Vn.Pf/Fl.Cemb)

「フーガの技法」とならんでJ.S.バッハ晩年の大作「音楽の捧げ物」の中のトリオ・ソナタです。「音楽の捧げ物」は、次男カール・フィリップ・エマヌエルがチェンバロ奏者として奉職しているフリードリヒ大王の宮廷を訪ねたおり、大王から提示されたテーマをもとに作曲し、献呈した作品集です。鍵盤楽器のためのリチェルカーレが2曲、楽器指定の無いカノン9曲とフルート、ヴァイオリンと通奏低音の指定があるトリオ・ソナタと無限カノンからなる特殊な曲集です。この楽譜はその中から楽器指定のある2曲を集めたものでバッハの代表的なトリオ・ソナタというだけでなく、この時代のトリオ・ソナタの最高峰ともいうべき作品です。原典版で定評のあるヘンレ社の出版で、トリオ・ソナタのほかに無限カノンが付いていることがこの楽譜の特長です。
(SR)
J.S.バッハの傑作、「音楽の捧げ物」のトリオ・ソナタはやってみたいけれど、ヴァイオリンが居ないという方、こんな楽譜はいかがでしょう。これはこのトリオ・ソナタを、ヴァイオリンのパートをチェンバロの右手に置き換えて、フルート1本とチェンバロの右手が上声部を、そしてチェンバロの左手が通奏低音を受け持つという形に編曲したもので、基本的には原曲と全く変わりません。このような形の曲は当時のテレマンやC.P.E.バッハの作品などに多く見られるもので、特殊な編曲というわけではありませんが、この曲に関しては現代の編曲です。
(SR)

バッハの魅力がつまった一曲です!

この曲はもともとリュートのための作品で、チェンバロなどの鍵盤楽器のレパートリーとしても知られています。1740年頃、バッハがライプツィヒでトーマス教会の音楽監督をつとめた時期の作品です。プレリュード、フーガ、サラバンド、ジーグ(ドゥーブル付き)の4曲からなり、第3曲サラバンドの冒頭部分は《マタイ受難曲》の終曲と類似しています。バッハのオリジナルのフルート作品と並んでレパートリーに挙がる事も多く、フルート吹きにとっても魅力的な作品です。
この楽譜の編曲は、ヨゼフ・ボップによる現代のものです。フルートの声部がソリスティックに書かれている一方で、フルートとピアノのかけあいや華麗なフーガの魅力も表現されています。
(YS)

美しいオブリガートをピアノ伴奏で

J.S.Bachのフルート作品にはソナタや無伴奏パルティータといったフルーティストには聖典のような曲がありますが、ミサ曲などの宗教曲にも美しいフルートのメロディがたくさんあります。
この楽譜は「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「ミサ曲 ロ短調」といったバッハの代表的な宗教曲の優れたフルート・オブリガートを集めたものですが、従来こういうオブリガート集は原曲のフルート・パートを抜き出しただけのいわばオケスタ的なものが多いのに比べ、これはフルート・パートはほぼオリジナルのまま、歌のパートとオーケストラのパートを編曲してピアノ伴奏にしてあるため、単独の曲としての演奏が可能です。
宗教曲は長いものが多くとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、これらの曲はほんとうに美しく心打たれるものばかりです。プロのオーケストラプレイヤーでもなければこういった曲を演奏する機会はないと思いますが、このような独立した形で演奏することができるのは、フルーティストにとって喜ばしいことだと思います。演奏会のアンコールなどにも使えるのではないでしょうか。
【中・上級者向け】 (T)

フルート・ソナタ発掘

バーネットは1837年アメリカで生まれました。もとはピアノ専攻でロンドンの王立音楽大学で学んだのち、ドイツに渡りました。その後、作曲家としても注目を集め、管弦作品やピアノ曲も多く残しています。
このグランド・ソナタは、全体に華やかで美しさのある作品です。特に2楽章はメロディーラインがとても綺麗で、あるときは解放的で輝かしく、そしてピアノ伴奏との絡みがとても美しい楽章です。終楽章の3楽章は、しばしば聴かれるフルートとピアノの右手パートのユニゾンや掛け合いで盛り上がります。
是非、演奏会の最終曲に入れてみてはいかがでしょうか。
【中・上級者向け】 演奏時間:約19分 (N)

中欧の薫り漂う小品です♪

この曲は、ハンガリーの巨匠バルトークが26歳でブダペスト音楽院ピアノ科教授となった1907年に作曲されました。トランシルヴァニア(ルーマニアの一部の歴史的な地名)のチーク地方の民謡採集を行った際に得た旋律に基づいており、ハンガリーの民族楽器である「ティリンコ」という指穴の全くない縦笛とピアノのために作曲され、その後、ピアノ独奏用に編曲されて出版されました。この楽譜は、ハンガリーのフルート奏者ヤーノシュ・シェベニーによってフルートとピアノ用に編曲されたものです。Rubato / L'istesso tempo / Poco vivo と短い3曲が一続きになっていて、短いながらも、哀愁漂う部分と活気のある部分それぞれが印象的な曲となっています。
【中級者向け】 演奏時間:約3分 (I)

さまざまな踊りが楽しめます!

1915年、バルトークが34歳の時に作曲された「ルーマニア民俗舞曲」は、6曲からなるピアノの小品です。ルーマニア各地で採集した民謡を題材としており、親しみやすい旋律に加え約5分という演奏時間なので、コンサートでもよく取り上げられています。バルトーク自身が編曲したオーケストラ版の他にヴァイオリンとピアノ版、弦楽合奏版もあり、彼の作品の中でも人気が高いものとなっています。

第1曲 棒踊り:それぞれのフレーズ終わりに棒で地を打つようなリズムが感じられる、表情豊かな曲です。
第2曲 飾り帯の踊り:メロディーが2度繰り返されますが、一定のテンポではなく少し緩急をつけて演奏される農民舞踏です。
第3曲 足踏み踊り:どこかあやしい雰囲気があり、増2度のメロディーが特徴的です。
第4曲 角笛の踊り:流れるような舞踏曲で、スラーが活かされています。
第5曲 ルーマニアのポルカ:生き生きとした躍動感あるリズムが印象的で、この中でも特に有名な曲です。
第6曲 速い踊り:ダイナミクスがより華やかになり、勢いに乗ったまま締めくくります。
テレビ番組でも使用されているので、どこかで聴いたことがあると思われる方も多いかもしれません。発表会等でぜひ挑戦してみてくださいね。
【中級者向け】演奏時間:約5分(OY)

ピッコロのレパートリーにいかがですか?(Pic.Pf)

ピアノ曲「14のバガテル OP.6」は、バルトークが26歳でブダペスト音楽院ピアノ科教授に就任した翌年の1908年に作曲され、自筆譜を見せに行ったブゾーニから高い評価を受けました。「弦楽四重奏曲 第1番」などとともに、初期の代表的作品といわれています。
この楽譜はアメリカのダン・フォックスが14曲の中から2、12、14曲目の3曲を選び、「ピッコロとピアノのための組曲」として出版されたものです。「組曲」として演奏するだけでなく、アンコール用にこの中の1曲だけ演奏するのもオススメです☆
T.Allegro giocoso 30小節の短い曲ですが、変拍子が出てきます。駆け抜けるような曲です。演奏時間:約1分
U.Rubato sostenuto accelerando 冒頭の次第に早まる同音連打のリズムパターンが繰り返しあらわれます。変拍子も多く、リズムやテンポの変化が印象的な曲です。演奏時間:約4分
V.Valse (Ma mie qui danse…)(踊る恋人) 速いテンポの情熱的なワルツです。演奏時間:約2分
【中級者向け】 演奏時間:約7分 (I)

「楽聖」ベートーヴェンのセレナーデ

セレナーデを作った作曲家は数多くいますが、今回ご紹介するのは「楽聖」と称されるベートーヴェンの作品です。フルートのソロで始まるこの曲は全7楽章からなっており、演奏時間は約24分です。冒頭2小節は、最後の16部音符以外全てニ長調の1度の和音の構成音(D,Fis,A)だけで書かれており、一見単純で簡単そうに見えますが、曲の始まりにふさわしく吹くのは意外と難しいかもしれません。穏やかな子守歌のような楽章、付点のリズムを多用した躍動的な楽章など様々な顔を見せ、最後はPrestoでフルートとピアノがユニゾンとなりffで曲を締めくくります。
なお、原曲である「フルート、ヴァイオリンとヴィオラのためのセレナーデ 作品25」も同じHenle社より出版されております。※ポケットスコア(ID:27790)、パート譜(ID:27789)別売 
【中級者向け】 (I)

ヴァイオリン ソナタの名曲 『春』

ベートーヴェンは10曲のヴァイオリン・ソナタを作曲していますが、中でも特によく演奏されるのが第9番の「クロイツェル」とこの「春」です。男性的で力強い「クロイツェル」に対し、女性的で優美な「春」と対比されることもある名曲です。この版は、アルテスがフルート用に編曲したものにマリオンが手を加えていますが、ピアノ譜は原曲のままで、フルートパートも音の異同は最小限にしてあります。またピアノ伴奏譜のソロパートは原曲のヴァイオリン譜が書かれていますので、フルートパートと見比べることもできる、大変便利な版です。フルートソナタを書いていないベートーヴェン(変ロ長調のソナタは疑作)の世界にぜひ挑戦してみて下さい。
【上級者向け】 (T)

さらっと奏でたいお洒落な一曲

リチャード・ロドニー・ベネット(1936〜2012)はイギリスの作曲家で、映画音楽やテレビドラマのほか、クラシックやジャズの作曲、また彼自身が演奏して活躍しました。代表作はアカデミー賞にノミネートされた作品「オリエント急行殺人事件」(1974)や「フォーウェディング」(1994)などの映画音楽が中心ですが、管弦楽曲、ピアノ曲、合唱曲などの作品も作曲しています。
彼の残した数少ないフルートのための作品の中から、今回ご紹介する「SUMMER MUSIC」は、1982年に作曲されたフルートとピアノの作品です。3楽章形式で1.SUMMER MUSIC、2.SIESTA(昼寝)、3.GAMES(遊戯)となっています。
どの楽章もお洒落な美しい響きで、フルートとピアノのなめらかな掛け合いが特徴です。映画やテレビドラマの劇中に流れてきそうな曲調で、多数の映画音楽を手掛けたベネットの個性に溢れた10分程度の作品です。
サロン・コンサートやBGM演奏などの機会に、プログラムに取り入れてみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 (KM)

波と風を感じてください(Pic.Pf)

ピッコロとピアノの曲をご紹介します。 ケン・ベンシューフ作曲の「波しぶき」は1992年にアリシア・スアレスによって初演されました。 テンポ、拍子などはたびたび変化し、少し暗めですが、ジャズっぽい面白い曲です。
ピアノ譜を見るとよくわかりますが、音の流れが波のようにうねっているように見えるのもお洒落です。
【中・上級者向け】 (B)

発見!フルートで吹くダークタンゴ!

クリフォード・ベンソン(1946-2007)はイギリス生まれのピアニストで、フルートを嗜む皆さんの中にはウィリアム・ベネットの伴奏者といえばピンと来る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ベンソンによるフルートとピアノの作品は今回ご紹介する「TANGO VARIATIONS」と、ベネットの誕生日に寄せて作曲された「A SONG FOR WIBB」(絶版)があります。
さて、この作品は1つのテーマと3つのヴァリエーションにより構成されています。
皆さんはタンゴというと明るいイメージなどを持たれるかもしれませんが、この曲は暗く、うねるようなテーマをもって始まります。
VAR.1【Allegro vivace e gusto】はテーマのダークな雰囲気からは打って変わって、快活な変奏となっています。
VAR.2【Andante espressivo】は表情豊かに歌い上げます。次に続くヴァリエーションへの持っていき方にも注目です。
VAR.3【Prestissimo con fuoco】はノリが良いリズムと共に始まり、そこから徐々にテーマに戻っていきます。
テーマではピアノが奏でる2拍子は典型的なタンゴのリズムですが、それに乗るダークなフルートの旋律がなんとも忘れられない一曲です。
【中・上級者向け】 演奏時間:約5分 (M.R.)

もう一つの「愛の喜び」

「愛の喜び」といえば名ヴァイオリニスト、フリッツ・クライスラーの名曲を思い出す方が多いでしょう。でももう1曲あるのです。ここで「ああ、あのナナ・ムスクーリが歌っていた曲ね」と分かるアナタは相当古い・・・・・・。そうです、今回取り上げるのはその「愛の喜び」なのです。
このポピュラー・ソングとして大流行した「愛の喜び」は、実はイタリアの古典歌曲とされていて、マルティーニが作曲した曲です。でも間違ってはイケマセン。よく混同されるのですが、イタリアのマルティーニとして有名なのは、モーツァルト少年にも音楽を教えたジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニ(1706 – 1784)ですが、「愛の喜び」の作曲者はジャン・ポール・マルティーニというイタリア名を名乗ってパリで活躍した、本当はヨハン・パウル・シュヴァルツェンドルフ(1741 – 1816)というれっきとした(?)ドイツ人なのです。この人はパリ音楽院の監督官まで務めた人ですから、それなりに実力はあったのでしょう。えっ、なんて面倒なですって・・・そうです、この世の中、実に複雑で面倒くさいんです。
(*ちなみに、今回ご紹介しているチュルーの楽譜の表紙には、ジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニと記されています)
この歌は当時から人気があったらしく、2人の名フルーティストがそのメロディーを使ったファンタジーを書いています。ひとりはイタリアのB.T.ベルビギエ、64小節の序奏に続いて主題と5つの変奏がくり広げられます。もうひとりはフランスのJ-L.チュルーで、こちらは72小節の序奏、主題、3つの変奏と123小節からなる長い終曲から出来ています。どちらも名フルーティストの作品ですからそこそこ難しいのですが、チュルーの方がより難易度が高そうです。演奏会のプログラムなどに肩の凝らない曲として是非使ってみて下さい。
(SR)

不思議な雰囲気が漂います(Rec.Bc)

バークリーは1903年生まれのイギリスの作曲家です。 パリでブーランジェの下、作曲を学び、プーランク、オネゲル、ルーセル等、フルートの重要なレパートリーを残した作曲家とも親交があったようです。
このSONATINEは本来リコーダーとピアノのために作曲された曲ですが、フルートで演奏される事も多い作品です。 3楽章からなり、ミステリアスに始まる1楽章、ゆったり落ち着いた2楽章、軽快なテンポ、ピアノとの掛け合いが楽しい3楽章へと続きます。 全体で10分程の曲で、演奏会の曲として組み込み易いおすすめの一曲です。
【初・中級者向け】 (SH)

お洒落な一曲

ベルトミューはフルートアンサンブル曲「猫」や「アルカディ」の作曲者としておなじみですが、フルートとピアノの編成の曲もございます。このロマンティック組曲は「アレグロ・モデラート」「ロンド」「メヌエット・グラーヴ」「プレスト」の4つの楽章から成るチャーミングな作品。フルートとピアノがおりなす色彩豊かな響きが魅力的です。
演奏時間:約9分 (E)

ミステリアスな一曲です。

ブロッホはスイスで生れたユダヤ系の作曲家です。ブリュッセル音楽院でヴァイオリンを、フランクフルトのホッホ音楽院で作曲を学びました。第二次世界大戦の影響でアメリカへ移住し、市民権を取得しました。作曲家として活躍する一方、教育者としても名を馳せ、アメリカ各地の音楽学校で教鞭を取り、多くの優秀な生徒を輩出しました。作品はユダヤ的な題材を扱っているものを数多く残しています。
「旋法の組曲」はブロッホ晩年の1956年にアメリカのフルーティスト、エレーヌ・シェファーに捧げられた曲です。中世からルネサンスの旋法が用いられ、全体が神秘的な雰囲気に包まれています。ある程度テクニックをお持ちの方なら、演奏しながらメロディーの美しさをじっくり味わうことができるでしょう。フルートのもつ、繊細で優雅で美しいイメージをそのまま音楽にしたような大人の一曲です。
【中・上級者向け】 演奏時間:22分 (U)

お好きなほうをどうぞ!

「動物界」という言葉を聞いたことがありますか?今回おすすめします曲は、テオドール・ブルーマーの作曲です。全部で6つの小曲からなり、それぞれにタイトルがつけられています。
1. きつね狩り 2.白鳥 3.南へ向かう鳥の飛行 4.羊飼いと羊たち 5.ジプシーと踊る熊 6.ガゼル
1曲3〜4分程の曲ですので、アンコールや発表会などで抜粋して演奏しても良いと思います。
動物たちの生き生きとした様子や、優雅さ、また、ジプシーと踊る熊とは・・・?など考えてみると、物語がまた広がるのではないでしょうか。
【中級者向け】 (B)
一風変わったタイトルの作品をご紹介いたします。テオドール・ブルーマーの作曲で、こちらも「動物界より」と同じく、全部で6つの小曲からなり、それぞれにタイトルがつけられています。
1.ユリ 2.サクラ草のお話 3.ヒルガオ 4.サボテン 5.スギ 6.ラン
花々の可愛らしい様子やサボテンのトゲトゲなど、イメージして吹いてみると、面白さがより出てくるのではないでしょうか。
【中級者向け】 (B)

忘れられた19世紀フランス・オペラ9

フランソワ=アドリアン・ボワエルデュー(1775-1834)の作品の中で、現在耳にする機会が多いのはロココ風の名残の典雅なハープ協奏曲でしょうか。彼はマイアーベーアやオーベールの一世代前の作曲家で、19世紀初頭の仏蘭西楽壇における重鎮でした。この時代はグランド・オペラの確立前ですが、オペラが音楽生活の中心を既に占めており、ボワエルデューも多くのオペラを残しましたが、現在上演されることは少なく、今回取り上げる《バグダッドの太守》や彼の代表作である《白衣の婦人》の序曲が演奏される程度です。
《バグダッドの太守》は1800年に初演され、19世紀前半に高い評価を得てボワエルデューの名声を確立したオペラ=コミックです。オペラ=コミックとは元来は字義通り滑稽な内容のものであり、シリアスな歌劇との差別化を図るために台本の一部は歌われることなくセリフで語られ、短時間で終わる軽いものでした。上演される劇場も「オペラ=コミック座」という専用のものがあり、「オペラ座」では上演しないといった厳密な区別、ヒエラルキーが存在しました。ただ、社交界の上流紳士淑女が集い、貴賓を接待するといったオペラ座の役割から観客動員を安定させるためレパートリーが硬直化したのに対し、本作やビゼーの《カルメン》といった若手作曲家の新作の受け皿となったのがオペラ=コミック座でした。そのため、後年は喜劇の制約は無くなりましたが、その他の制約はそのままで、パリ音楽院(コンセルヴァトワール)においてもオペラ科とオペラ=コミック科は別々に存在していました。
《バグダッドの太守》はその名の通り、主人公はイザウンという太守(カリフ)で、自由に街でお忍び歩きをするために偽名を使い、身なりをみすぼらしくして出かけていました。ある日、山賊からヒロインのゼトゥルベを救い出し、恋に落ちます。彼女の母親はイザウンの姿を見て結婚を許可せず、逆にイザウンが宝石を用意したのを見て、彼が山賊なのではと勘違いし、ひと騒動が起きて最終的に素性が明らかになり、めでたく結婚のハッピー・エンドとなります。
設定がバグダッドとあるように、東洋趣味(オリエンタリスム)の作品ですが、18世紀末の作品ですので、真正な東洋の音階や楽器が取り入れられているわけではなく、ラモーの《華やかなインドの国々》の系譜につながる、幻想世界を描いた優雅な音楽となっています。序曲に始まり、主要なアリアがポプリとしてつなぎ合わされ、華やかなコーダで締めくくられます。超絶技巧のファンタジーではなく、録音再生装置の無い時代にサロンや家庭で楽しめるよう編曲されたものですので、発表会や演奏会のアンコールにご活用いただけると思います。
(2022年8月記)(M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

天才姉妹の妹

リリ・ブーランジェはフランスを中心に活躍した若手の女性作曲家でした。わずか24年の短い人生でしたが、作曲家として大成功を収めました。歴代の受賞者にはベルリオーズ、ビゼー、ドビュッシーやイベールがいる、フランスを代表する作曲家コンクール「ローマ賞」で女性として初めて大賞を受賞しました。これにより、社会で女性の活躍が認められなかった時代に、女性も男性と同じ土俵で戦えるということを証明した立派な作曲家でした。
一流の音楽一家に生まれたリリは、年上の姉ナディアと一緒に幼い頃からパリ音楽院で作曲を勉強しました。リリのあまりの才能ぶりに、ナディアはリリの影に隠れてしまいましたが、ナディアは有名な作曲家の指導者として音楽界に長年貢献しました。
リリは声楽曲を中心に作曲しました。多くの評論家は彼女の楽曲を「美しいメロディーを持つ印象派のようなフランスっぽさ、時にはフォーレを思わせるような哀愁ただよう豊かな表情がある」と評価しています。
今回ご紹介する曲は、リリの晩年(1918)に作曲されました。オリジナルはヴァイオリンとピアノの編成でしたが、姉・ナディアの力を借りながら、後に自らオーケストラ用、弦楽トリオ、フルート用に編曲しました。冒頭は軽快な付点のリズムが次々と転調しながら続きます。中間はレガートで横に流れる美しい旋律が続き、終盤は前半の生き生きとしたリズムが再登場します。
【中級者向け】演奏時間:約5分30秒 (C.K.)

「春の朝に」だけじゃない、リリ・ブーランジェのフルート作品!

初めて女性でローマ賞を獲得し、24歳という若さで亡くなったフランス近代の作曲家、リリ・ブーランジェの「フルート作品全集」がSchott社から出版されました。この曲集には、コンサートやCDへの録音でもよく取り上げられている人気作「春の朝に」(1917/1918)をはじめとして、「ノクチュルヌ」(1911)、「序奏―行列」(1914)、「小品」(1910)の全4曲が収められています。ヴァイオリンのために書かれたものも含みますが、ブーランジェのフルート作品を網羅した内容で、最後に所収された「小品」は世界初出版。いずれも2分から5分程度の短い作品で、難易度も高くありませんが、作曲者の繊細な感性が光る生き生きとした音楽が描き出されています。
また編集者によって“この4曲は個々の作品だが、必要に応じて2楽章、3楽章、4楽章の組曲として一緒に演奏することができる”と記されていますので、演奏会や発表会用にお好みの曲を組み合わせて演奏してみてはいかがでしょうか。
ぜひ「春の朝に」だけじゃない、ブーランジェの才気あふれる作品の魅力をご堪能ください!
【初・中級者向け】(M)

可憐です

ボニスはフランスの女流作曲です。 パリ音楽院で作曲を学び、数多くのピアノ曲、室内楽曲、歌曲などを残しました。 しかし、当時はまだ女性が作曲をする時代ではなく、また両親の理解も得られず、 大変苦労をしました。
この曲は、女性らしい軽やかで可憐な小品です。 ピアノの動きが美しく、影響をうけたとされるドビュッシーを思わせます。 4分程度の短い曲ですが、印象に残る、『この曲は誰の曲?』と気になってしまう作品です。 サロンコンサートなどでプログラムに加えて頂きたい一曲です!
【中級者向け】 (U)

フランスのフルート音楽のレパートリーを増やしてみませんか?

ボニスは、1858年にパリで生まれたフランスの女性作曲家です。
この曲はルイ・フルーリーに捧げられています。第1楽章は、どことなく郷愁を感じさせる旋律が印象的です。第2楽章は吹きぬける風のような感じで、わずか2分程度の短い楽章です。第3楽章はしっとりとしたイメージ。第4楽章は全体的に壮大な感じで、冒頭のメロディがあちらこちらに顔を出します。
とても素敵な曲ですので、フランス作品のレパートリーに加えてみませんか?
【中〜上級者向け】 演奏時間:約17分 (I)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1

フルートのレパートリー、特にフレンチ・スクールの楽曲には「オペラ(作品名)によるファンタジー」といった作品を多く見かけます。これらは、当時の人々がオペラ座で観劇して聴きなじんだメロディをサロンや家庭で再現し、なおかつ超絶技巧をアピールできるよう作編曲されたものですが、クラシック音楽といえども流行や地域性があり、現代の日本の我々にはなじみの無いオペラにしばしば遭遇し、練習の際、作品背景を勉強するのに苦労された方も多いのではないでしょうか。そもそも、19世紀フランスのグランド・オペラ(グラントペラ)というジャンル自体が既に縁遠く、現在フランス・オペラの代表格とみなされるビゼーの「カルメン」はグランド・オペラではなく格下のオペラ・コミックなのですが、説明が長くなるのでまたの機会に譲ります。それでは、チュルー、アルテス、タファネル、ゴーベールなどが活躍した時代のオペラ座の観客席にタイム・トラベルしてみましょう。
《「アフリカの女」による華麗なファンタジー》
本年2019年はパリ・オペラ座創立350周年ですが、それを記念し、2018−19年のシーズンの最初を飾って上演されたプログラムはジャコモ・マイアーベーアの《ユグノー教徒》でした。実はこの《ユグノー教徒》、パリ・オペラ座で初めて1000回以上の上演を記録した空前の大ヒット作だったのです。その後もマイアーベーアは《預言者》などの作品により、グランド・オペラの作曲家としての不動の地位を確立しました。しかし、生前の成功は大勢のライヴァルの嫉妬を買い、多くの批評により攻撃され、死後は急速に忘れ去られてしまいました。
今回取り上げる《アフリカの女》はマイアーベーアの遺作です。ただし、作曲者自身が最終的に考えていたタイトルは「ヴァスコ・ダ・ガマ」で、メインの筋書きはヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を発見するという話ですが、波乱万丈の冒険物語というより、アジアへの案内人としてアフリカからヴァスコのもとに連れてこられた男女の奴隷のうち、女性のセリカが実はインド洋上の島の女王で、彼女と、ヴァスコのフィアンセのイネス、ヴァスコのライヴァルのドン・ペドロとの間で繰り広げられる恋物語が中心になっています。
ボルヌがこの《ファンタジー》で用いたモチーフは以下の通り。冒頭と最後に使われるメインのテーマは、第一幕終結でヴァスコが自身のインド航路開拓のための計画を実現させようとするも、案内人として連れてきた奴隷が口を割らないために出身国が判明せず、計画が議会で否決され、怒りのあまり無礼な態度をとったヴァスコが議会側から糾弾され牢送りになるシーン。第一幕冒頭、ヴァスコの帰りを待つイネスが歌うロマンス。第四幕、セリカの母国の島に捕らわれの身としてたどり着いたヴァスコが、美しい東洋の国の情景に幻惑されて歌うアリア「素晴らしい国、おおパラダイス」。第四幕冒頭、帰国したセリカを迎える戴冠式の音楽、異国情緒あふれるバレエです。
(2019年10月記)【中・上級者向け】(M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

忘れられたコンクール用小品8

ロジェ・ブトリは日本の吹奏楽ファンにはおなじみの名前でしょう。1973年から1997年までの長きにわたり、フランスの軍楽隊の名門、ギャルド・レピュブリケーヌ管弦楽団の首席指揮者を務めました。吹奏楽編成で何度も来日しており、日本公演の模様がDVDで発売されたこともあります。親日家で、「Ikiru Yorokobi (生きる喜び)」という吹奏楽曲や、「Asuka (飛鳥)」というクラリネットとピアノのための曲も作曲しています。彼は1932年に音楽一家に生まれ、コンセルヴァトワール(パリ音楽院)にてナディア・ブーランジェ、トニー・オーバンらに師事、作曲や伴奏をはじめ、8つのクラスで一等賞を取り、1954年には若手作曲家の登竜門、ローマ大賞を受賞しました。1962年には母校の和声科の教授となり、1997年まで務めています。
《コンチェルティーノ》は1955年のコンクールのために作曲されました。ローマ大賞の受賞の翌年です。どうやら、他の管楽器クラスの課題曲の例を見ても、コンクール用小品の作品の委嘱が、有望な若手作曲家に対する支援となっていたようです。当時のフルート科の教授、ガストン・クリュネルに献呈されています。「小協奏曲」ということで単一楽章の曲ですが、大きく分けると緩−急−急の3つの部分に分かれます。半音上行を素材とした旋律の導入部で始まり、アンダンテではまず付点による旋律が大きな弧を描き、次に遠くから叙情的で静的な主題が聞こえます。三連符による主題で次の部分に向かってアッチェレランドをかけます。第2部はアレグレットで、3拍子のダンスのリズムに乗り、流れるような息の長い旋律をフルートが奏でます。次第に音価が短くなって盛り上がりを見せた後、元の旋律に戻ります。第3部はアレグロ・ヴィーヴォです。第1部の導入部の旋律を展開させた後、その断片を契機としてフルートが上行跳躍主題を奏でます。半音下行進行を含む叙情的な旋律が応答となり交互に繰り返された後、第二主題は三連符による舟歌のような旋律です。アニマートで頂点を迎えた後再現部となり、その後は第一主題とは逆に下行跳躍をバネにした旋律を元に第二の頂点を作り上げ、カデンツァに突入します。コーダではオクターヴの下行エネルギーを元にした旋律がヴィヴァーチェで駆け抜けて終わります。
6月6日に行われたコンクールで一等賞を取ったのはジャン・サイヤール、モーリス・シェヴリ、ジョルジュ・ゲヌーの3人ですが、残念ながら特に大きな足跡を残していません。ゲヌーがかつてグラーフと一緒にチマローザの2本のフルートのための協奏曲を録音しましたが、現在廃盤です。
(2018年10月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

イギリスの作曲家

英国の作曲家といえば、エルガー、ブリテンが有名ですが、今回はエドウィン・ヨーク・ボーウェンの作品を紹介いたします。 彼はイギリスの王立アカデミーでピアノと作曲を学び、「イギリスのラフマニノフ」と呼ばれ近年再評価を受けています。ピアニストとして活躍しながら、作曲家としてピアノ曲を数多く作曲しています。その中でフルートの作品もいくつか作曲しており、このフルート・ソナタ 作品120は、1946年にフルーティストのガレス・モリス氏のために書かれました。3楽章構成。 華やかな派手さはありませんが、しっかりした1曲として新しいレパートリーの一つに加えてみてはいかがでしょうか。
Allegro, non troppo - Andante piacevole -Allegro con fuoco 
【中級者向け】 演奏時間:約18分 (B)

フランスから逆輸入

ボザは、フランスのニースに生まれ、幼少期からヴァイオリンを学び、その後パリ音楽院で作曲・指揮を学んだ、フランスを代表する作曲家の一人です。交響曲からオペラやバレエ、室内楽と多くのジャンルを手掛けた多作家として知られています。彼の管楽作品の多くはパリ音楽院の試験曲のため、高度な演奏技術を要する場合が多いのですが、晩年に作曲されたこの「日本民謡の主題による5つの歌」は技術的には比較的やさしい作品に仕上がっています。
5つの民謡は、今日まで代々謡い継がれているものばかりです。表紙及び曲の始めに引用された民謡が示されていますが、順番が入れ替わって表記されているようですので(※ボザが間違えて曲名を記憶してしまったのか、出版社が出版する時に曲順を入れ替えてしまったのかはわかりません。)お気を付けください。正しくは、1曲目・力強い相馬武士の馬追い「相馬流れ山」、2曲目・草津温泉の湯もみで歌われる「草津節」、3曲目・宮崎県高千穂に伝わる茅を刈り取る際の仕事歌「刈干切唄」、4曲目・盛岡のお祭りで有名な「さんさ踊り」、5曲目・悲恋に散った男女を謡った「江島節」の順です。
フランス作品らしい響きを大切にしつつフランス作曲家目線で日本的な「こぶし」や「溜め」を表現しており、両者が絶妙なバランスを保っているのもこの曲の大きな特徴です。短くシンプルな5曲なので、幅広い層の方にお楽しみいただけそうです。あまり知られていない作品ではありますが、フランスの「粋」を採り入れた日本民謡を楽しんでみてはいかがでしょうか。新たな発見があるかもしれません。
【中級者向け】 (AN)

ボザのアラビア風子守唄

技巧的な作品が多いボザには珍しく、短くゆったりとした美しい曲です。
子守唄というと優しく透明感溢れるイメージがありますが、予想をねっとり裏切り、穏やかに寄せては返す纏わりつくような旋律を、アラビアの民族音楽を思わせる独特な装飾音が彩ります。曲名へのイメージと実際の雰囲気とのギャップがたまりません。
全体的に音域は低めで、演奏時間は約4分。ボザ入門にもおすすめの一曲です。
【中級者向け】 (AN)

発表会やサロンコンサートにおすすめ♪

ボザ(1905-1991)はフランス人とイタリア人を両親に持つ、ニース生まれの作曲家です。パリ音楽院でヴァイオリン・指揮・作曲を学び、ローマ大賞を受賞。指揮者としても活躍しました。管楽器曲を数多く残しており、フルート・ソロのための「イマージュ」、4本フルートの「夏山の一夜」のほか、「アグレスティード」や「14のアラベスク練習曲」など、フルートのための重要なレパートリーも豊富です。
『イタリアン・ファンタジー』は5分半くらいの短い曲です。少し哀愁漂うカデンツァ風のパッセージに始まり、印象的なシチリアーノのメロディーを挟んで、スケルツォの軽やかなテンポに乗って様々な上行・下行音形を繰り返し、華やかにフィナーレを迎えます。
このシチリアーノのメロディーは、フルートとギターの編成の『子守歌』にも使われています。ボザのお気に入りの旋律だったのかもしれません。
演奏する人も聞く人も飽きさせない、変化に富んだ作品です。
ボザの隠れた名曲をレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか!
【中・上級者向け】 演奏時間:約5分半 (U)

クラリネットをフルートで

ブラームスは1894年に2曲の「クラリネット・ソナタ」(作品120の1と2)を作曲しました。クラリネットは特にブラームスが好んだ楽器のひとつで、これらの2曲以外にも「クラリネット五重奏曲 ロ短調」「クラリネット三重奏曲イ短調」などが残されています。これらの作品はモーツァルトにとってのシュタットラー兄弟のように、当時の名クラリネット奏者だったR.ミュールフェルトとの交友から作られた作品です。2曲の「クラリネット・ソナタ」はヴィオラでも演奏され、さらに第1番はピアノ部分を改訂したヴァイオリン版も存在します。4楽章からなり、全体で25分程かかる大曲ですが、ブラームス晩年の作らしく、内面的な情熱を感じさせ、簡潔な書法で書かれた洗練された名作です。 IMC社からフルート用に編曲・出版された新刊です。
(SR)

ヴァイオリンソナタに挑戦

19世紀ドイツロマン派を代表する作曲家ブラームスは、4曲の交響曲を始め、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲、室内楽に歌曲と多彩な作曲活動をしましたが、残念ながらフルートのためのオリジナル作品はありません。このため、クラリネットソナタやヴァイオリンソナタのフルートへの編曲版の出版がここ数年相次いでいます。このヴァイオリンソナタ第2番は初めてのフルート用の楽譜と思われます。この第2番は3曲あるブラームスのヴァイオリンソナタの中でも特に歌曲を思わせるメロディーの美しさが印象的です。
第1楽章 Allegro amabile (速く、愛らしく)、第2楽章 Andante Tranquillo (やや遅く、静かに)、第3楽章 Allegretto grazioso (quasi Andante) (やや速く、壮大に) からなり、ほかの2曲のソナタよりやや小粒な印象ですが、とかく渋いと言われがちなブラームスの室内楽の中で、叙情的で晴れ晴れとした美しさが心に残る名曲です。技巧的な難しさより、ピアノともども曲の内面の解釈が求められますが、ぜひフルーティストにも挑戦していただきたいと思います。
 【上級者向け】 (T)

上品な間奏曲です

原曲はピアノ独奏曲の「6つの小品 作品118」の第2曲目、原調はイ長調です。 1892年に作曲され、1894年にロンドンで初演されました。
この曲は、3拍子の3拍目が1拍目に聞こえたり、へミオラの取り入れ方などがさりげなかったりと、ブラームスらしく、静かながらもとても上品で美しい間奏曲です。
心洗われるような旋律をお楽しみください。

なお、ご紹介している第2曲目はこの楽譜では1曲目に入っており、同じ作品118の1曲目も収録されております。
(B)

名フルーティスト・ブリッチャルディ作曲

「アイーダ」による劇的幻想曲 OP.134/ 「椿姫」による自由な編曲/ 「トロヴァトーレ」による幻想曲/ 「ドン・カルロス」による幻想曲 OP.121/ 「マクベス」による幻想曲 OP.47
オペラのメロディーを主題にしたフルート曲は、19世紀には数多く作曲されました。 中でもヴェルディのオペラは人気が高く、ジュナン、ユグーなどの作品が現代でもよく演奏されています。 このブリッチャルディの作品もそういった一つで、名フルーティストであったブリッチャルディが自らの技巧を披露すべく作った華やかな名曲ぞろいです。 長らく絶版になっていたもので、新しく校訂された上、見やすい現代譜としてよみがえりました。テクニックと歌心の両方が要求されますが、リサイタルや上級者の発表会のレパートリーにいかがでしょうか。
【上級者向き】 (T)

“ワーグナー・イヤー”にぴったり♪

19世紀に活躍したフルートのヴィルトゥオーゾ、ブリッチャルディの作品で、ワーグナーの「ローエングリン」から有名な「婚礼の合唱」や「聖杯の動機」のテーマなどが抜粋して使用されています。技巧的で華やかなフレーズや美しい歌を奏でる一節など、フルートの魅力が充分に発揮される曲です。ブリッチャルディは他に「『ランメルモールのルチア』による終曲」や「マクベス・ファンタジー」など、この作品のように有名なオペラを題材とした曲を数多く残しました。
今年2013年に生誕200年を迎えるワーグナー。この「ローエングリン」はもとより、「トリスタンとイゾルデ」「タンホイザー」など多くの有名な作品を作曲し、自ら「楽劇」というジャンルを提唱しました。この「楽劇」という名称は、「トリスタンとイゾルデ」(1865年)以降の作品に対してつけられているようです。彼の熱狂的なファンも多く、影響力の強さがうかがえます。“ワーグナー・イヤー”の今年、演奏会や発表会などのステージにぴったりな1曲と言えそうです。
【上級者向け】 (YS)

忘れられたコンクール用小品5

フランソワ=ジュリアン・ブランは作曲家というより、フルート奏者、吹奏楽ファンの方ならばギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の楽長としての指揮姿でなじみがあるかもしれません。1961年には同楽団と来日しています。ブランはリヨンの南西、サン=テティエンヌにて1909年に生まれました。コンセルヴァトワール(パリ音楽院)においてゴーベールやモイーズに師事し、1928年に卒業コンクールで一等賞を取りました。その時のコンクール用小品はゴーベールの《バラード》でした。また、同時に一等賞を取った同期の一人が、後にスイス・ロマンド管弦楽団の首席奏者として活躍したアンドレ・ペパンでした。ブランはフルートだけでなく、和声や対位法などの作曲書法(エクリチュール)のクラスにも所属し、一等賞を得ました。そのことが今回の作曲につながっています。1937年頃には既にギャルドのフルート奏者として活躍していましたが、1945年から1969年まで楽長を務めました。その後も客演指揮者として様々なオーケストラで活躍しました。
 《アンダンテとスケルツォ》は1948年の卒業コンクールで取り上げられましたが、1945年の出版です。モイーズに献呈されています。1948年当時の教授はモイーズとクリュネルの二人体制でしたが、その後モイーズは辞職しましたので彼にとっては最後のコンクールとなりました。〈アンダンテ〉はメリスマ的な息の長い主題が特徴です。第一主題から少し変形された第二主題が展開され頂点を迎えた後、最初の主題に回帰して静かに終わります。〈スケルツォ〉は八分音符=180の中に三連符をスタッカートで入れていかなければならず、演奏者にとっては冒頭からトリプル・タンギングによるマラソンが始まります。少し変形された第二主題においても雰囲気は変わらず、53小節耐え忍んだ後に初めて伸びやかな旋律主題が現れ、光が見えます(ランナーズハイ?)。しばらく展開された後、第一主題に戻り、そのまま苦しい息の中マラソンを走りきるかのようにディミヌエンドで(力尽きて?)終わります。このコンクールで一等賞を取ったうちの一人がクリスティアン・ラルデで、二等賞の一人がペーター=ルーカス・グラーフでした。また、コンクールを受験した生徒にはイージー・リスニングの第一人者と知られるレイモン・ルフェーブルの名前が見えます。彼もモイーズの弟子でした。
ブランのフルーティスト、指揮者だけでなく、現在忘れられた作曲家という一面を再発見するきっかけになれば幸いです。
(2017年10月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

新たに発見されたビュファルダンのフルート協奏曲!

ピエール・ガブリエル・ビュファルダンといえば、バロック時代のフランスのプロヴァンス出身の大フルーティストで、長年ドレスデンの宮廷で活躍し、かのJ.J.クヴァンツのフルートの先生であり、またバッハ家との関係から、J.S.バッハのフルート作品にも多大な影響を与えた人物といわれています。
これほどまでにフルート界に貢献し、大きな業績を残していながら他の作曲家に比べて演奏や録音の機会が少ないのは、残された作品がごくわずかであることが影響していると思われます。ビュファルダンの作品としては、「フランス・バロックのフルート協奏曲」としてよく取り上げられるホ短調のフルート協奏曲以外は、1曲のトリオ・ソナタが知られているのみでした。
今回ご紹介する「フルート協奏曲 ヘ短調」は、この楽譜の校訂者(Wim Brabants)がドレスデンのザクセン州立図書館で発見したもので、有名なホ短調の協奏曲に作風が大変良く似ていること、手書きの楽譜の第1ページ右上(作曲者を記す部分)に「B.G.」または「P.G.B.」と読めるモノグラムが記されていることから、ビュッファルダンの作品と同定したものです。
バロック時代の、またフランスのフルート協奏曲の新しいレパートリーとして注目すべき作品です。
(SR)

愛らしい組曲

ビュッセルは1872年フランス生まれ。この曲は温かい優しさが伝わってくるとても美しい4つの曲で構成されています。お洒落なサロン音楽風のサラサラとした心地よい流れの組曲です。
T.En Sourdine(声を弱めて) 穏やかな雰囲気でとても繊細な響きに魅了されます。ヴァイオリン演奏の場合は弱音器を付けて演奏します。
U.Valse Lento(ゆっくりなワルツ) 美しくしっとりとしたフレーズが転調したり、音域を変えながら繰り返し現れます。
V.Vieille Chanson(古めかしい歌) どこか素朴で懐かしい哀愁のあるメロディです。
W.Scherzetto(スケルツェット) 最終曲にふさわしい、軽やかで明るく可愛らしい曲です。
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (E)

カゼッラ!!!

カゼッラ…と言うとシシリエンヌとブルレスクを思い浮かべる方が多いと思いますが、今回はカゼッラがフルートとピアノの為に書いたもう一曲“バルカローラとスケルツォ”を紹介したいと思います。カゼッラはイタリアの作曲家・ピアノ奏者・指揮者・評論家で1896年(13歳)パリ音楽院に入学し1900年フォーレに師事しました。バルカローラとスケルツォは1903年にカゼッラが20歳の時にフリップ・ゴーベールに捧げた曲です。曲調はバルカローラ=舟歌らしく流れるきれいなメロディーからスケルッツォ=快活でおどけた感じが特徴で、当時のフランス楽壇の空気を十分に伝える作品となっています。
【中・上級者向け】 演奏時間:約9分15分 (N)

偉大なフルートの父のお墨付き曲

アルフォンス・カトリン(1868-1927)は、ベルギー出身で、後にパリ・オペラ座のボーカルディレクター、オペラコミック座の指揮者を務めました。
今回ご紹介する「ノクチュルヌ」は、1900年に近代のフルートの父とも呼ばれるポール・タファネルへ捧げた曲です。20世紀の名曲揃いの中、作曲された当時はあまり広く知られてはいませんでしたが、タファネルはカトリンの音楽性に感銘を受けたといわれています。
ロ長調で曲はスタートし、ピアノの低音と小刻みに進むフレーズが穏やかな雰囲気を作ります。 アリアのように始まるフルートの冒頭部分は抒情的で美しく、中盤は次第にドラマチックな展開へと移り変わっていきます。フルートの良さを存分に発揮できる、あたたかく包み込むような旋律の音型に、聴衆も思わず聴き入ってしまうでしょう。知られざる名曲。演奏時間は4分程度ですので、アンコールピースとしてもおすすめです。
収録CDはこちらです。
(CD-ID:4077)峰岸壮一/50th ANNIVERSARY〜21世紀への贈り物〜
(CD-ID:6064)ケネス・スミス/「無言歌」:ポール・タファネルの遺産(3枚組)
【中級者向け】演奏時間:約4分 (A.K.)

フランスのサロンをイメージしてください!

華やかでおしゃれなワルツをご紹介します。
「コンチェルティーノ 作品107」で有名なフランスの女性作曲家、シャミナードの作品です。 5分くらいの短い曲ですが、メロディーの美しさ、華やかなパッセージ、そして躍るような軽やかなリズムに溢れた素敵な小品です。発表会やサロン・コンサートでさらりと吹くと、ファンが増えるのではないでしょうか!?
【中・上級者向け】 演奏時間:約5分 (U)

春夏秋冬、いつでもどうぞ。

「コンチェルティーノ作品107」でお馴染みのセシル・シャミナード。彼女は作曲家、ピアニストとしてフランスで活躍しました。フルートの作品も数曲残していますが、ピアノの作品が多数です。今回ご紹介する「秋」も、ピアノのために書かれた独奏曲「6つの演奏会用練習曲 作品35」の中の一曲で、シャミナードの作品の中で、人気のある曲として演奏されています。こちらを英国のフルーティストであるトレヴァー・ワイが、フルートとピアノの編成に編曲しました。
穏やかな秋の空気や匂いが感じられそうな美しいメロディで始まったと思いきや、何事かと突風が吹いてきたかのような荒々しい雰囲気になり、徐々に静まり、最後は穏やかさを取り戻します。原曲は変ニ長調ですが、変イ長調に移調されています。5分程度の小品ですので演奏会のプログラムに取り入れやすい一曲です。四季の作品をお探しの方、是非演奏してみてはいかがでしょうか。
【初・中級者向け】 (KM)

曲名に偽りなし!

タイトルにつられて、見たり、聴いたり、買ったりしたことは有りませんか?この曲は題名から想像されるように、ロマンティックで魅惑的な作品です。シャミナードと言えば「コンチェルティーノ」が有名ですが、是非、この曲もアンコール曲やサロンコンサートのプログラムに加えてください。「看板に偽りなし!」の代表曲を紹介いたしました。
シャミナード…パリ生まれ。女性ピアニスト・作曲家。彼女の作品には、甘く洗練されたメロディが多く使われ、当時のサロン・ミュージックとしても相当の人気を得ていました。この作品は当時パリ音楽院教授であったM.HENNEBAINSに捧げられました。
(Y)(K)

ロッシーニの主題による「変装」曲

ロッシーニ作曲の喜劇「チェネレントラ」は、世界的に有名な童話「シンデレラ」を題材にした作品です。シンデレラの物語には様々なバリエーションが存在し、最も古いものは紀元前1世紀に書かれたようです。ロッシーニ版の「シンデレラ」の内容は、一般的に知られているものとは異なり、魔法のおばあさんやガラスの靴は出てきません。しかし、物語は「シンデレラ」に似ています。それに加え「変装」が中心の題材になっています。王子は花嫁探しの為、彼自身や部下をあえて変装させ、主人公の家を度々偵察し、主人公や異母姉を見定める物語になっています。
今回の楽曲は、劇中のアリア「もう悲しくありません」を、ショパンが変奏曲にアレンジしたものです。主人公のチェネレントラが大喜びで、いじわるな父姉が住む家を出ていく場面で歌われるアリアです。
14歳の時に作曲されたと言われていますが、ピアノ伴奏が非常にシンプルなので、本当にショパンが作曲したかどうか疑われています。しかしフルートでの演奏にぴったりで、とても可愛らしくチャーミングな変奏曲です。
楽譜はショパンの父の友人の手元で保管されていた為、1953年まで発見されなかったという説もあります。主題と4つの変奏曲で構成され、第2変奏のみ短調です。この時代に作曲された多くの変奏曲が派手で長いのですが、この楽曲は比較的洗練されており、演奏時間もたったの3分半です。変奏曲に気軽に挑戦したい方におすすめの一曲です。
【中級者向け】演奏時間:約3分30秒(CK)

序奏と華麗なるポロネーズ

フレデリック・ショパンは、残した作品99パーセントはピアノ曲といってもいいほど、ピアノ以外の曲を書かなかった人です。それでも数曲の室内楽と歌曲を書いています。その中の1曲はフルートとピアノのための「ロッシーニの主題による変奏曲」ですが、チェロとピアノの作品は3曲残っています。これは、友人にチェロ奏者が2人いたためで、1人は1846年にチェロ・ソナタを献呈したA.フランショーム、もう1人はそれより前の1829年に今回ご紹介する「序奏と華麗なるポロネーズ」を献呈したJ.メルクです。
曲はポロネーズの部分が1829年に作曲され、序奏は1830年に追加されています。チェロの語法を上手く使いながら、作品は正に「ピアノの詩人」の面目躍如といった趣で、フルートへの編曲も上手く出来ています。ショパンの作品のフルートへの編曲のなかで、おそらく最も成功した例のひとつではないでしょうか。演奏会のプログラムとしても充分使える楽譜になっています。
(SR)

ピアノの詩人のチェロソナタ

ピアノの詩人、ショパンのピアノ以外の楽器の曲はあまり知られていませんが、フランショムというチェリストの親友のためにチェロとピアノのためのデュオを3曲書いており、このソナタはその中でも最も規模の大きいものです。ショパン36、7歳の頃作曲され、4楽章からなる、対位法を駆使したソナタ形式のスケールの大きな曲で、結果的に彼の最後の大作となりました。特に長大な第1楽章は、華麗なピアノの導入部に始まり、チェロが加わって両者が絡んでいく様子が印象的です。また第3楽章の夢見るようなメロディーの美しさはショパンの曲の中でも際立つものがあります。
ショパンの曲ですので当然ピアノパートの比重はとても高くなっており、ピアノの音も厚いので、フルートで演奏する場合はバランスに注意が必要でしょう。ぜひ腕の立つピアニストと共演なさってください。なお、フルート版へのアレンジは、フルーティストのトマス・ロバーテロです。
【上級者向け】 (T)

催眠

ヨーロッパを中心に活躍する現代作曲家、フルート奏者でもある、イアン・クラークをご紹介します。クラークは、フルートで演奏しながら途中で声やジェットホイッスルが入るなど、現代音楽の雰囲気をおもしろおかしく表現した作品を数多く作っています。
そんな中でも、今回ご紹介する作品は「Hypnosis / 催眠」です。この曲は、ピアノの叙情的なメロディーから始まる雰囲気に、自然と深い眠りに入ってしまうような不思議な感じを醸し出す作品です。
残念ながら、この曲の中では声やジェット・ホイッスルなどを取り入れた部分はありませんが、クラシックやポピュラー音楽とは違ったフルート音楽を楽しんでみてはいかがでしょうか。
演奏時間:約4分30秒 (O)

クラシックとジャズの融合!!

アーロン・コープランドは20世紀のアメリカを代表する作曲家です。
曲中に民族音楽や大衆音楽を取り入れ新しいアメリカのクラシック音楽を作り上げました。
今回ご紹介する曲の中にもジャズのリズムやアドリブ的な音形がところどころに散りばめられ、クラシックとジャズが融合された、親しみやすい作品となっています。
T.「Flowing」
フルート1本で奏でられる冒頭の牧歌的な美しい旋律が印象的です。次第に躍動感が生まれ後半の音階はジャズの即興を彷彿とさせます。
U.「Poetic somewhat mournful」
移り変わる変拍子の上でシンプルな旋律が奏でられます。静けさの中で徐々に熱を帯びてゆき、中間部には大きな盛り上がりを見せます。
V.「Lively, with bounce」
テンポの変化を繰り返しながら軽快に進んでゆきます。途中、混沌としたピアノとの掛け合いを見せたかと思えば、クライマックスに向け賑やかに駆け抜けます。
譜面に書かれた細かなアクセントや強弱の指示にはコープランドのこだわりが伺えます。
都会的で垢抜けた曲をお探しの方におすすめの一曲です。
【中級者向け】演奏時間:約15分(HS)

天使のフォリア

フルートの世界では「フォリア」と言えばマラン・マレの「スペインのフォリア」を思い出す方が多いでしょう。でも、クラシック音楽全体で見ると、何と言ってもよく知られているのは、コレッリが書いた「ラ・フォリア」です。これは、1700年に出版された「12のヴァイオリン・ソナタ 作品5」の第12番にあたり、当時大ヒットしました。ジェミニアーニがこの曲を合奏協奏曲に編曲したのは有名ですが、他にもリコーダー用、フルート用、ヴィオラ・ダ・ガンバ用など多くの編曲楽譜が出版され、楽しまれていました。
この楽譜は、そのコレッリの「フォリア」を原曲と同じニ短調(別の編曲でアルト・リコーダー用にト短調に編曲した楽譜も出ています)で、当時フルートと通奏低音用に編曲された楽譜をもとにしています。ゆったりしたテーマから、変奏へ進んでいくと迫力のある通奏低音との掛け合いもあり、最後の第21変奏へ向かって変化と緊張感溢れる名曲で、原曲の形がそのまま生かされています。
もともと“フォリア”は16世紀にイベリア半島で発祥した3拍子系の舞曲で、その当時は“騒々しい舞曲”とされていました。それが17世紀に入るとゆったりしたテンポに変化し、一定の低音の動きとハーモニーが出来あがって、その上に独奏楽器が変奏を繰り広げていくという形になったのです。このために、独奏の旋律も良く似た形になってマレやコレッリ他、多くの作曲家が同じテーマのフォリアを残しているのです。
「フォリア」のフルート用の編曲版が出ているマレとコレッリ、当時、マレは「(ヴィオールを)天使のように弾く」、コレッリは「ヴァイオリンの天使」と讃えられていたのはご存知でしょうか? 
(SR)

恋の季節にぴったりの曲です♪(Rec.Pf)

フランソワ・クープランは音楽一家に生まれました。一族が音楽家である為、“大クープラン”と呼ばれて区別されています。フランスバロック期の作曲家で教会のオルガニストとしても活躍しました。 クープランの重要な出版物として「クラヴサン奏法」や「クラヴサン曲集」があります。「クラヴサン曲集」は全4巻あり、27組曲から構成される曲数は200曲を超えます。その1曲ずつにとても興味深いタイトルがついています。
今回ご紹介します、「恋のうぐいす」はそのクラヴサン曲集の第3巻、第14組曲の第1曲目にあたります。この楽譜には第14組曲の第5曲「勝ち誇るうぐいす」も収められています。
リコーダーやフルート・トラヴェルソ、ピッコロで演奏される機会も多い曲です。多彩な装飾を用いてかわいい囀りを表現してみてはいかがですか?
【初・中級者向け】 演奏時間:約3分45秒 (OU)

フランスとアフリカ音楽の融合( Fl.Hp/Fl.Pf)

ジャン・クラ(1879〜1932)は、フランスの海軍士官として従事しながら作曲を続け、声楽曲や室内楽をはじめ様々な作品を残しています。音楽好きの両親に育てられた彼は、幼少期から音楽が大好きで、音楽の美しさに触れながら成長しました。アンリ・デュパルクから作曲を習い、海軍としてのキャリアを積み、作曲もあきらめることなく続けました。彼の作品は、海軍生活で訪れた国々の音楽が影響しており、今回ご紹介する作品も、西アフリカのパーカッションのパラフォンからインスパイアされて、1927年に作曲されました。
第1曲「Preambule」序奏。ハープのグリッサンドから始まり、フルートがハープの和音を受け継ぎ分散和音で奏でます。フランスの田園風景が思い浮かぶような優しく軽やかな響きが印象的です。
第2曲「Modere」モデラート。第1曲に続き、軽やかな舞曲風のメロディ。
第3曲「Assez lent」十分に遅く。音の動きが波のようで、中間部に向かって激しくなり、航海中の荒れた海のように揺れ動きます。交互に奏でる16分音符の刻みや、ハープの響きはパラフォンを連想させます。
第4曲「Danse a onze temps」11拍子のダンス。陽気で軽快なリズムをフルートの低音から高音まで使って演奏します。
この作品は、フルートとハープにために作曲されましたが、楽譜はピアノでも演奏できるように書かれています。ぜひ演奏してみてください。
【中級者向け】演奏時間:約15分(TO)

春にぴったりな軽やかな小品はいかがですか?

セザール・キュイ(1835-1918)はフランス系ロシア人で19世紀後半、民族主義的な音楽の創造を目指した「ロシア5人組」の一人です。軍人で軍事教育家として教壇に立ち、余技で作曲家、音楽評論家として活動をしていました。
今回は唯一のフルートとピアノの作品、スケルツェットをご紹介します。この曲は晩年の作品でロシア革命直前の1916年に作曲されました。フランスのフィリップ・ゴーベールに捧げられた作品なのですが、実際にキュイとゴーベールの交流があったのかは定かではありません。三部形式でロシア的というよりは、近代フランス音楽を思い起こさせるような雰囲気です。3分弱の短い小品ではありますが、耳に残る軽やかで陽気なかわいらしい旋律が印象的。ぜひこの春の季節に演奏して頂きたい作品です。アンコール・ピースとしてもおすすめです。
(NS)

ピアノ練習曲ではありません。

ウィーンで生涯を過ごし、数多くのピアノ練習曲で有名なツェルニーは交響曲、室内楽曲等、膨大な数を作曲しました。 ベートーヴェンの弟子で、フンメル、リスト、ショパン等とも親交があったようです。 ウィーンの心地よい風を感じ、心豊かにしてくれる名曲です(私はウィーンに行ったことがありませんが)。
よくリサイタルのプログラムの一曲目として、HUMMEL/SONATE D-DUR、KUHLAU/INTRODUCTION ET RONDO、MOZART/6 SONATEN、DONIZETTI/SONATE等を選曲されますが、そのような感覚でこの曲を入れてもいいと思います。
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (Y)

ピッコロ(Pic.Pf)

ダマレはフランスのバイヨンヌの生まれで、様々なバンドやオーケストラでピッコロ奏者を務め、数多くのピッコロの作品を残しました。ピッコロの曲で何かいい曲ないかな?とお探しのあなた。いい曲がありますよ。とっても可愛らしくって、楽しくって(^o^)小鳥たちが青く澄んだ大空を飛び回っているのが目に浮かんできます。演奏時間も4分と短めなので、お手ごろですね。
(G)

主役はどっち?(Pic.Pf)

ダマレといえばピッコロの作品がほとんどですが、この「森のこだま」は、どちらかというとピアノが旋律で、ピッコロはその上を軽やか、そしてリズミカルに飾っていきます。以前ご紹介致しました「白つぐみ」よりは多少難しくなりますが、こちらも是非レパートリーに加えてみてはいかがでしょうか?演奏時間は6分30秒です。
(G)

ポルカで気分もうきうき!(Pic.Pf.)

とても小さな楽器で可愛らしい音を出すピッコロの作品をご紹介します。
ピッコロの作品と言えば・・、フルート、ピッコロ奏者として活躍したフランス出身のウジェーヌ・ダマレ。ダマレは、自ら奏者として活躍した他、ピッコロの作品を数多く残しました。
ピッコロという楽器のイメージから可愛らしい作品がとても多いですが、今回ご紹介する作品「ピッコロ・ポルカ」は、まるで踊りたくなってしまうような2/4拍子でできた、とても軽快な作品です。可愛らしいイメージの作品から、一風変わったダマレの作品は、もっとも流麗な音楽で楽しめる作品の一つです。この曲は、約3分程度の短い曲なので、アンコールなどで取り上げてみても良いでしょう。
(O)

冬のお話、奏でてみませんか?

フルート界におけるダマーズといえば、フルートとチェロ(任意)、ピアノのための作品「演奏会用ソナタ」や「フルートとハープのためのソナタ」を耳にする機会が多いことと思います。フランスの作曲家でありピアニストでもあるジャン=ミシェル・ダマーズ。彼は音楽教育の分野でも活躍し、パリ音楽院の副院長をも務めました。
今回ご紹介するこちらの作品は、1987年にフルート(またはオーボエ)とピアノのために作曲されました。音楽教育の目的で作曲されたようですが、ダマーズらしい華麗な調性と拍子の変化があり、情景の移り変わりが特徴で充分な聴きごたえがあります。曲の中に小さな物語が一話、組み込まれているかのような印象です。静かな冒頭と終止は、寒くてひんやりと冷たい空気を感じるような、まさに冬らしい情景が思い浮かびます。難易度が少々高く長めの曲が多いのでは…と感じるダマーズ。この作品は3分30秒ほどの小曲です。
寒い季節に暖かい部屋で、ゆったり演奏してみてはいかがでしょうか。
【初・中級者向け】 (CM)

エレガントな一曲

フランス楽派の流れを汲む最後の巨匠の一人、ダマーズの最新作で、フルーティストの工藤重典氏に捧げられ、彼のCDにダマーズ自身のピアノ伴奏で収録されて話題になりました。タイトル通り九つの独立した小品からなりますが、各々に副題はついていません。ダマーズらしいエレガントで美しい旋律に満ちた、魅力的な作品です。特殊奏法も必要とせず、技術的にそれほど難度の高い曲ではありませんが、頻繁に繰り返される転調と転拍子を瞬時に理解する読譜力が要求されます。
【上級者向け】 (T)

エッセイストでもあった作曲家

團 伊玖磨(1924-2001)は「花の街」や「ぞうさん」、オペラ「夕鶴」、またラジオ体操第2ほかの作曲者として知られています。また、エッセイストとしても数々の作品を残し、中でも1964年からアサヒグラフに連載された「パイプのけむり」は、後に読売文学賞を獲得する代表作となりました。ムラマツでも1983年か ら93年にかけて「もがりぶえ」を季刊ムラマツの巻頭言として執筆していただきました。(ホームページにて掲載中⇒こちら
このフルートとピアノのためのソナタは、1986年に作曲され、翌87年に大和田葉子さんによりワシントンD.C.で初演されました。
曲は2楽章構成。第1楽章 Allegro ma non troppo は、ソナタ形式で書かれています。特殊奏法としてはフラッターが出てきます。第2楽章は変奏曲です。穏やかなテーマをフルートが奏で、変奏では主題は形を変えながらピアノが受け持ちます。フルートはその上で軽やかに舞います。第5変奏とロンディーノを経て曲を閉じます。
【上級者向け】 演奏時間:約17分 (B)

若き日のドビュッシーの歌曲集

「シランクス」「牧神の午後への前奏曲」などの名曲を書いているドビュッシーですが、残念ながらフルートとピアノのための作品はありません。これまでもいくつかの編曲集が出ていますが、ほとんどがピアノ作品からのアレンジでした。今回ご紹介するのはドビュッシーが10〜20代の頃に書いた歌曲をフルート用にしたものです。ハイフェッツの編曲でヴァイオリンなどでもよく演奏される「美しい夕暮れ」や「マンドリン」などの美しく繊細な魅力に満ちたメロディーをお楽しみください。
【初・中級者向け】 (T)

忘れられたコンクール用小品6

ドゥメルスマン(1833-1866)の名はフルートを演奏される方には大変なじみがあるので、伝記的な説明は他に譲るとして、彼の作曲家としての面を見ていきましょう。
フルートのフレンチ・スクールに興味のある方には、1898年のフォーレの《ファンタジー》をもってコンセルヴァトワール(パリ音楽院)のフルート科の卒業試験(コンクール)における新作初演の伝統が始まることは有名ですが、コンセルヴァトワールはそれ以前より存在し、当然コンクールもありました。課題曲に関して、チュルー教授時代は自作の《ソロ》がほとんどで、アルテス教授時代は自作とチュルー作で半々程度、その間に挟まれたドリュス教授は……、どうやら彼は作曲が苦手だったようです。フルート・ソロのロマン派のレパートリーは少ないですが、演奏家と作曲家の垣根が低かった当時は、演奏家自らが作曲すれば解決ということで、コンセルヴァトワールの管楽器の教授の素養としては作曲能力が求められたのでしょう。挫折したものの作曲家の登竜門であるローマ賞にまで挑戦した若きドゥメルスマンが、コンセルヴァトワールの次の教授の座を見据えつつ良いポストに付くための実績作りとして作曲を行ったのは想像に難くありません。実際、今回取り上げる《演奏会用ソロ 第2番 変ホ長調》は1860年出版で、献呈先のドリュスの教授就任は同年ですから、アピールするつもりだったのではないでしょうか。残念ながらドリュス時代にはコンクールに取り上げられず、アルテスにより1891年の課題曲に採用されました。
曲はアンダンテ、アレグロ・ブリランテの二部からなります。前半アンダンテは劇的な和音の強奏に始まり叙情的な第一主題の対比、というオペラ全盛の時代を反映したスタイルです。短いカデンツァの後、第一主題が戻ってアタッカで第二部に入ります。後半アレグロ・ブリランテは6/8拍子のサルタレロです。冒頭の第二主題はそれほどテンポも速くなく、華やかなダンスですが、転調して中間部に入ると何やら雲行きが怪しくなり始め、旋回するような分散和音の旋律を繰り返してはどんどん早くなって一旦最高潮を迎えます。第二主題がエスプレッシーヴォで回帰し、ゲネラルパウゼの後第一主題も回帰して少し冷静になったかと思いきや、再び第二主題が始まり、コーダではプレストで踊り狂って劇的に締めくくられます。このコンクールで一等賞を取ったジュール・ヴェルスト(1866-1906、リール歌劇場)とルイ・バルロン(1869-1916、オペラ=コミック座)は共に早世してしまい、後世に大きな名を残すことはありませんでした。
(2018年1月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

魔法の笛

「魔法の笛の踊り」。モーツァルトの「魔笛」からインスピレーションを得て作られたフルート協奏曲です。
どこか遠くから聴こえてくるような旋律から始まり、夜の女王のアリア“復讐の炎は地獄のように我が心に燃え”のモチーフがところどころ現れます。1小節ごとに拍子がめまぐるしく変わり、少し短いカデンツのあと自由なゆったりしたメロディとなります。後半はテンポが上がり、フラッターも出てきますが、全体的に美しく、またテンポ感のある楽しい作品です。伴奏と合わせるのはなかなか大変な曲ですが、カッチリはまるととてもカッコイイと思います。
あなたの「魔法の笛」で「踊って」みてください。
【上級者向け】 演奏時間:約20分 (B)

フルートで吹くマズルカ

アレクサンドル・デュフォウ(1828-1889?)は、フランス・ボルドーの作曲家兼フルート奏者です。13歳でオーケストラと共演、15歳にはボルドーのオーケストラのソリストとなります。その後も地元のボルドーで活動していましたが、1853年にはパリで様々な演奏会に出演し、成功を収めました。また、この時代の他の著名なフルート奏者とは違い、デュフォウはパリの音楽院で学んでいないようです。
今回取り上げる「アンダンテとマズルカ」は、デュフォウの友人であり生徒でもあった、ジェームズ・マクスウェルという人物に捧げられています。
前半はゆったりとしたアンダンテ、後半は軽快なマズルカとなっており、全体的に聴きやすい曲調となっています。マズルカというのはポーランドの舞曲で、ショパンが50数曲を残したことで有名です。フランス、ロシアなどの作曲家たちもショパンの影響を受け、多くの作品を残しているジャンルです。
また、デュフォウの作品は、いくつか自身で演奏した記録が残っていますが、出版されたのはこの曲のみのようです。ほとんど忘れられた作曲家ですが、矢野正浩氏の「フルートアルバム2020」(CD-ID:8217)に収録されています。
フルートのオリジナル作品としては珍しいマズルカの一曲、是非レパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
【中・上級者向け】演奏時間約7分30秒 (MR)

デュカスによるドビュッシーの追悼曲

『魔法使いの弟子』でお馴染みの作曲家、ポール・デュカスの作品をご紹介します。
この曲は、もともとデュカスと親交の深かったドビュッシーを追悼して作られたピアノ独奏曲です。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」の旋律が引用され、その神秘的な雰囲気がフルートの音色によく合い、ランパルなどの著名なフルーティストも演奏しました。
所々現れる“牧神”の旋律は、まるで黄泉の国に迷い込んだドビュッシーの姿を表しているかのようで少々不気味さを伴います。3分半ほどの短い曲ですが、一度聴いたらその雰囲気に浸ってしまうような、印象の強い作品です。是非演奏してみてください。
収録CDはこちらです。
【CD-ID:5413】ジャン=ピエール・ランパル/現代最高のフルーティスト(3枚組)
【CD-ID:7743】クリスティアン・マティック/ドビュッシーと彼の友人たち
【CD-ID:8405】ランソン・ウィルソン/ドビュッシーの時代
【中級者向け】演奏時間:約3分30秒 (HS)

フルートで奏でるヴァイオリンの名曲

ヴァイオリンの名曲をフルート用に編曲したものがたくさんありますが、今回はその中からドヴォルザークのヴァイオリンの名曲、「ロマンス」をご紹介致します。
スメタナと並び、チェコ国民学派最大の作曲家と呼ばれるアントニン・ドヴォルザークは、ブラームスに才能を認められ世に知られるようになった作曲家です。交響曲9番「新世界」や弦楽四重奏曲「アメリカ」に見られるような哀愁漂うメロディがこの「ロマンス」でも見られます。全体的にゆったりとしたテンポで奏でられますが、途中少し自由に演奏するところ、やや情熱的に演奏するところもあります。
しっとりとした雰囲気の曲をお探しの方にオススメします。
この楽譜は、もともとヴァイオリンと弦楽合奏のための曲だったものをフルーティストであるドナルド・ペックがフルートとピアノ用に編曲したものです。編曲する際に間奏部分などをカットしています。
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (B)

ロマンティックです Part2

後期ロマン派を代表する作曲家のひとり、アントニン・ドヴォルジャークの、その名のとおり「ロマンティック」な作品を紹介いたします。
この楽譜は、もともとヴァイオリンとピアノのための「4つのロマンティックな小品集 作品75」(弦楽三重奏のための「ミニアチュール」からの改作)をフルート用に編曲したもので、4曲のうちの第2曲を除く3曲が収録されています。穏やかで優美な第1曲、流れるような旋律が印象的な第3曲、哀愁漂う第4曲。どれかひとつをとってアンコールで演奏するのも良いでしょう。
第1曲は、色々な出版社の曲集にも収録されているので、ご存じの方も多いかもしれません(弦楽三重奏のための「ミニアチュール」での楽章の題名をとって「カヴァティーナ」と記載されていることもあります)。
第1曲:Allegro moderato
第2曲:Allegro maestoso(この楽譜には収録されていません)
第3曲:Allegro appasionato(この楽譜では3曲目に収録されています)
第4曲:Larghetto(この楽譜では2曲目に収録されています)
(※ちなみに、この第1曲は2015年2月まで村松楽器新宿店の電話応答保留音に使用されていました)
【中級者向け】  (B)

ジャジーで楽しいダンスはいかが?

作曲者のジェフ・イールズは1951年生まれのイギリス人で、作曲家・ジャズピアニストとして活躍しています。
この「エルフ・ダンス」は3つのパートからなっていて、美しいルバートでつながれた2つの速いパッセージの部分はジャズ色の濃い、跳ねるようなピアノに乗ってリズミカルなダンスが繰り広げられます。3つ目のパートは短いスローバラードで、牧歌的な踊り。最後に第一のメロディが再び現れて躍動的に終わります。それぞれのパートの対比が鮮明で、どの部分もピアノとの絡みが軽快で美しい、楽しいダンスです。
特殊奏法は出てきませんが、目まぐるしく変わるリズムにピアニストもフルーティストもジャズのセンスとノリが求められそうです。ジャズがお好きな方はぜひ挑戦してみてください。
なお、イールズの作品は、この曲も含めフルーティストのフィンドンと作曲者自身のピアノ伴奏のCDが出ています(ID:6728)。
【上級者向け】 演奏時間:約7分 (T)

ルーマニアの雰囲気に浸ってみませんか?

ファルカシュは、1905年ハンガリー南西部のナジカニジャ生まれの作曲家です。ブダペスト音楽アカデミーで作曲を学んだ後、ローマの聖チェチーリア音楽院でレスピーギに師事しました。1949年からはブダペストのリスト音楽院教授を務め、リゲティらが彼に師事しました。ウィーンとコペンハーゲンで映画音楽の作曲を行うなど様々なジャンルで活躍し、700曲以上の作品があります。
この「ルーマニア民族舞曲」は1950年に作曲され、元気よく踊る部分とゆったりと歌う部分がはっきり分かれている曲です。バルトークがビホル県(ルーマニア西部の県)で集めたメロディがもとになっています。楽譜の表紙に“ヴァイオリン、ヴィオラ、フルートまたはクラリネットとピアノ”と書かれおり、また同じタイトルで“リコーダーまたはヴァイオリンとツィンバロン”と書かれている楽譜もあるようです。(出版譜ではなく、アンドラシュ・ファルカシュによる手稿譜のようです。)フルート以外の楽器のパート譜を参考にして、オクターブ上げたり下げたり、また装飾をつけたりすることも出来るのではないでしょうか。ルーマニアの美しい自然の中で踊っている様子を想像しながら、演奏してみて下さい!!
【中級者向け】 演奏時間:約5分 (I)

「ドリー」をフルートで

「ドリー」は銀行家バルダック家の娘エレーヌの愛称です。エレーヌは1892年に生まれました。フォーレは彼女のために、その2、3、4回目の誕生日にピアノ連弾の小品を作曲し捧げています。それらの曲は最終的に「子守歌」ホ長調(1893/4)、「ミ・ア・ウ」ヘ長調(1894)、「ドリーの庭」ホ長調(1895)、「キティのワルツ」変ホ長調(1896)、「優しさ」変ニ長調(1896)、「スペインの踊り」ヘ長調(1897)の6曲にまとめられ、今ではフォーレの最も愛されるピアノ作品となっています。
こうしてまとめられた組曲「ドリー」は、1898年にE.リスレルとA.コルトーによって公開の場での初演が行なわれました。翌年にはA.コルトーの編曲によるピアノ独奏版が作られ、1913年にはH.ラボーによって管弦楽に編曲されてバレエが上演されていることから、この曲は作曲当時から人気があったようです。ちなみに、エレーヌの母親エンマ・バルダックは、1904年にドビュッシーとジャージー島に駆け落ちし、後にドビュッシーと結婚しますが、この2人の間に出来た娘エマ(愛称シュウシュウ)にはドビュッシーが「子供の領分」を作曲しているので、エンマの娘2人は夫々、フランス近代の大作曲家から、後々大変よく知られ愛されるようになった作品を捧げられていることになります。
なお、第2曲の「ミ・ア・ウ」、第4曲の「キティのワルツ」は、以前夫々が猫の名前とされてきましたが、現在では、「ミ・ア・ウ」はドリーの兄ラウルが呼んでいたドリーの愛称、「キティ」は「ケティ(Ketty)」のミスプリントで、そのラウルが飼っていた犬の名前とされています。ご紹介する楽譜は全曲で、各編曲とも全楽章、原曲の調性のままです。可愛らしく、美しいこの組曲が十分に楽しめると思います。
(SR)

アンコールにお悩みの方におすすめです

原曲は1906年に作曲、1907年に出版された、声楽とピアノのための作品です。ヴォカリーズ-エチュードと呼ばれており、歌詞はなく、母音でメロディを奏でます。
この楽譜ではフルート(またはオーボエ、ヴァイオリン)用に編曲されるにあたり、原調のホ短調からイ短調に移調されています。
同じフォーレの作品で、パリ音楽院のフルート初見試験のために作られた「コンクール用小品」と雰囲気が似ています。2分半ほどの短い作品ですが、心にしっとりと響き渡る美しい曲です。
アンコールにいかがでしょうか。
【中級者向け】 (B)

フォーレの曲集を紹介します

■ ファンタジー 作品79 ■ 初見用小品「サラバンド」 ■ 間奏曲(「ペレアスとメリザンド」より) ■ パヴァーヌ 作品50 ■ シシリエンヌ 作品78 ■ 舞曲(「カリギュラ」より) ■ 初見用小品「舟歌」 ■ 子守歌 作品16 ■ 子守歌(組曲「ドリー」より) ■ ヴォカリーズ・エチュード 
イギリスのPETERS社から出版されているフォーレ作品集です。フォーレは、音楽の世界全体から見れば「レクイエム」、「ペレアスとメリザンド」、数多く作られたピアノ曲や歌曲が圧倒的に有名ですが、フルートの小品にも美しい曲があり、またヴァイオリンなど、他の楽器からの編曲などでも楽しまれています。この曲集はフルートのオリジナル作品のほか、編曲作品も含めて、10曲のフルート作品が収められています。特に間奏曲、舞曲、初見用小品などのフルート版は珍しく、「舟歌」は、フルーティストのエミリー・バイノンがCDや演奏会で取り上げたことで、大変評判になりました。
(SR)

フランスの空気に触れて

フランスを代表する作曲家、フォーレの歌曲集です。
言葉の意味や語感を大切に演奏できるよう、伴奏譜にはすべての曲に歌詞が付随されています。フランス語に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、この曲集がフランス語の辞書を引いてみるいい機会になるかもしれません。
流れるような旋律で、フォーレらしさをめいっぱい感じることのできる1冊です。3拍子系を苦手とされる方は、フォーレの美しいメロディーで克服してみませんか?
【初・中級者向け】 (H)

この響きがクセになるかも??

フェルト(1925-2007)はチェコ生まれの現代作曲家です。このフルート・ソナタは1957年に書かれ、親友のランパルに捧げられました。
ピアノの和音伴奏に乗って軽やかにフルートの旋律が始まる第1楽章。不安定な和音で独特の響きを効果的に発揮する第2楽章。そして、第3楽章はフルートとピアノの駆け引きが楽しい軽快な音楽です。
現代音楽によく見られる特殊奏法は出てきませんが、協和音のような不協和音のような、なんともいえない響きが全体にちりばめられている面白い作品です。
T.Allegro giocoso U.Grave V.Allegro vivace 全3楽章

【上級者向け】 演奏時間:約18分30秒(全3楽章) (B)

「魔笛」ファンタジー

『モーツァルトの魔笛』と言えば、フルート吹きにとって特別な存在です。
天才モーツァルトの生涯最後のオペラであり、笛が活躍する作品です。
オペラの内容を知らなくても「序曲」「私は鳥刺し」「夜の女王のアリア」など、聞いたことはあるのではないでしょうか。
ご紹介する楽譜は、「魔笛」に使われている音楽、8曲が次々に登場するスペシャル・メドレーです。モーツァルトの美しいメロディーの数々をお楽しみいただけます。それぞれのテーマが変奏されているものも多く、フルートならではの『歌』を表現することができるでしょう。なお、こちらの曲は、パユさんのCD「ファンタジー:オペラ座の夜」の中に収録されています。CDは伴奏がオーケストラの豪華版です。(CD ID:7379)こちらも是非お聞きください!
1「恋を知る者たちは」、2「恐れるな若者」の後半、3「生意気な小僧め、来い」、4「魔笛のソロ」、5「私は鳥刺し」、6「ザラストロ万歳」、7「イシス・オシリスの神よ」、8「聖者らの凱旋」
【中・上級者向け】演奏時間:約13分15秒(U)

爽やかな流れ

アメリカの作曲家のアーサー・フット。アメリカ音楽の発展に貢献し、ピアニスト、オルガニストでもありました。
今回ご紹介するこちらの曲は、聴いていると音楽がすっと体に入っきてとても心地よい小品です。一曲目は「村の朝の歌」、トリオの部分ではフルートパートの長い旋律と伴奏の響きがとても美しく、曲を盛り上げています。二曲目は「メロディ」、ピアノ伴奏が分散和音になっており爽やかに流れて行きます。三曲目は「パストラーレ」、最終曲らしく穏やかな中にも叙情的な部分があり包み込むような音楽で締めくくられています。幅広い層の方にお楽しみいただけます。(E)

フォスターの名曲をフルートで

フォスターの代表的な歌曲「CAMPTOWN RACES/草競馬」「JEANIE, WITH THE LIGHT BROWN HAIR/金髪のジェニー」「OH SUSANNA/おお スザンナ」「BEAUTIFUL DREAMER/夢みる人」「SWANEE RIVER/スワニー河・故郷の人々」をB.ホルコムがフルートの特性を生かしたアレンジに仕上げています。組曲になっておりますが、以前は一曲ずつ出版されていましたので、一曲だけ取り上げて演奏するのもいいと思います。ピアニスト(伴奏者)の表現力が大切です。
【中上級者向け】 (Y)

演奏家泣かせの名曲!

フランセは自由でユーモア溢れる中に、洗練された音楽センスをうかがわせる独特の世界観で、20世紀フランスを代表する作曲家の一人に数えられています。 作品はピアノ曲から室内楽、交響曲、オペラ、バレエ音楽など幅広く、200曲以上にのぼります。
ディヴェルティメントは1953年にJ.P.ランパルに捧げられた名曲です。 この曲を聴くと作曲家の洒落にとんだ性格がはっきりとわかります。 聴く方にとっては魅力的で楽しい曲ですが演奏者にとっては大変難しい曲で、フランセは其の辺りを十分に意識して書いたのではないでしょうか。
I Toccatina  II Notturno  III Perpetuum Mobile  IV Romanza  V Finale
【上級者向け】 演奏時間:約12分 (Y&U)

プッチーニ好きにおすすめです

オペラの中で歌われるアリアなどをフルートで歌い上げる作品は、今までもたくさん作曲されてきました。今回ご紹介するのは、プッチーニの四幕のオペラ「ラ・ボエーム」の中の美しいアリアを繋ぎ合わせた華麗なファンタジーです。
チャールズ・ゴッドフリーによるピアノ曲をもとに、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団のフルート&ピッコロ奏者、ユルゲン・フランツさんがフルート用にアレンジしました。
使用曲目は、第一幕:ロドルフォ「Che gelida manina(冷たき手を)」/ショナール「Legna! Sigari! Bordò!(薪だ!葉巻だ!ボルドー酒だ!)」/第四幕:ロドルフォとマルチェッロ「O Mimì, tu più non torni(ああミミ、君はもう戻ってこない)」/第四幕:ロドルフォとミミ「Sono andati?(みんな行ってしまったのね)」/第四幕:ロドルフォ、マルチェッロ、ショナール、コッリーネの4人が舞踏会だ、と踊って(ふざけて?)いる場面/第二幕:ムゼッタ「Quando me'n vo soletta per la via(私が街を歩けば)」(ムゼッタのワルツ)/第二幕:最後の軍楽隊の行進曲、です。(最後の行進曲はピッコロに持ち替えてもOK)
「ラ・ボエーム」はプッチーニのオペラの中でも人気の高い作品です。内容も分かりやすく、登場人物それぞれにモチーフがあり、どのアリアも美しく素敵です。是非オペラをご覧になって、それぞれの登場人物に思いを馳せながら演奏してください。
※フルートのレパートリーにオペラのファンタジーが多い背景については、以前のスタッフのおすすめ楽譜、楽譜ID:26347ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー の紹介文をご覧ください。
【中・上級者向け】 約12分30秒 (B)

コンサートにおすすめ

フリューリンク(1868-1937)は、ウクライナで生まれ、ウィーンで亡くなった作曲家です。
あまり知られていませんが、見つかっているリストによると、100点ほどの作品があるようです。残念ながらほとんど出版されておらず、多くが消えてしまっているようで、知る人ぞ知る作曲家となっています。
この『ファンタジーOP.55』の楽譜の校訂は、フルーティストのエミリー・バイノンさんです。バイノンさんは、世界中で活躍するイギリス人のチェリスト、スティーブン・イッサーリスさんより、ウィーンの音楽図書館で見つけたこの楽譜の存在を教えてもらったそうです。彼はフリューリンクの音楽の支援者でもあるそうです。元々はオーケストラとフルートの作品だったようですが(1929年初演)、このフルートとピアノヴァージョンだけが残ったとされています。
曲の始まりは≪Moderato≫変ホ長調、ピアノの繊細なアルペジオの上に、美しいメロディーが広がります。途中≪Andante espressivo e sostenuto≫から、少し憂いのある雰囲気に変わり、すぐに≪Poco piu mosso≫、細かい動きで場面が転換、移行し、≪Tempo I≫から大きなフレージングと華やかなパッセージの、ドラマチックなクライマックスへと突入します。そして最後は≪Moderato(come prima)≫で最初の主題に戻り、静かに幕を閉じます。柔らかさと重厚な響きのバランスの良い、ドイツ・ロマン派の雰囲気を感じられる『歌』に溢れた音楽です。コンサートのメインに置いても映える楽曲だと思います。新しいレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。なお、YouTubeでバイノンさん自身の演奏を聴くことができます。そちらも是非ご覧ください。
【上級者向け】演奏時間:約14分(U)

フランス近代の隠れた名曲!

ガロワ=モンブラン(1918-1994)は、作曲家としてはもちろんのことヴァイオリン奏者としても活躍しました。ヴァイオリニストとしては、フォーレのソナタやピアノ四重奏曲などの名盤を残していることで有名です。
「嬉遊曲/DIVERTISSEMENT」は、ガロワ=モンブランがパリ音楽院院長を務めていた頃にフルート科の卒業試験課題曲として書かれ、当時のフルート科教授G.クリュネルに献呈されました。課題曲の定番ともいえる『緩−急』の2部形式です。ミステリアスな色彩を放つ前半部分のアンダンテ、そして舞曲風のはじけた躍動感が楽しい後半部分ファイナル。半音階の複雑な和声とフランス近代の明快さを併せ持った面白い作品です。同じ『緩−急』形式のフルート作品はたくさんありますのでこの曲はあまり知られていませんが、もっと演奏されてもいい優れた作品だと思います。テクニック・表現力ともに必要とされるので、音大生の試験曲や演奏会のレパートリーとしてオススメです。なお、工藤重典氏・加藤元章氏によるCDもリリースされていますのでぜひ参考になさってみてください。
【上級者向け】 演奏時間:約7分30秒 (A)

発表会やサロンコンサートにおすすめ♪

タファネル&ゴーベール「17の日課大練習」でおなじみのゴーベールの作品を紹介します。 タファネルの弟子、フィリップ・ゴーベールはパリ音楽院をたった1年で15歳の時に卒業し、オーケストラ奏者として活躍しながら作曲を勉強。作曲の腕前も若手作曲家の登竜門だった「ローマ賞」の二等賞第一席を獲得するほどでした。のちにパリ音楽院のフルート科教授やオペラ座とパリ音楽院管弦楽団の指揮者、そしてオペラ座の芸術監督にまで上りつめ、マルチな才能を発揮しました。
フルートとピアノのための「バラード」は1927年に作曲。淡い色彩の中に溶け込むような和音で始まるゆったりとしたアンダンティーノの前半部分と、速いパッセージで動き回るヴィフの後半の部分からなります。「表情豊かに」や「魅力的に」といった指示も細かくあり、特に最後に出てくる「流れるように」という部分は大変美しいです。フルートは分散和音を奏でますが、この「流れるように」という指示が「流れて」しまわないように!
【中・上級者向け】 演奏時間:約6分30秒 (B)

愛に溢れた優しい子守歌はいかがですか?

子守歌といったら、誰の曲をイメージされますか?ケーラー、ドップラー、フォーレ、ゴダール・・・などいろいろな曲がございますが、今回ご紹介する曲はゴーベールの子守歌です。1907年に作曲されたこの曲はタファネルの友人でもあったベルナルド・ウォルフに献呈されています。同ゴーベール作曲の“組曲”の「東洋風の子守歌」とは異なり、複雑な転調などはなく3分半程のシンプルな小品ではありますが、穏やかで流れるようなメロディや垣間見える叙情的なフレーズに優しさや愛情を感じることができるゴーベールらしい作品です。繰り返される優しいメロディに思わずうっとり(まさに眠りを誘うような)してしまう魅力的なこの曲、小品のレパートリーの一曲にいかがでしょうか?美しい旋律をじっくり味わいながら演奏してみてください。
【初・中級者向け】 演奏時間:約3分30秒 (NS)

ロマンティックです

師のタファネルと連名で出版した『タファネル&ゴーベール/17のメカニズム日課大練習曲』で有名なゴーベールです。
ゴーベール(1879-1941)は作曲家としてだけでなく指揮者、フルーティスト、教育者としても活躍しました。この時代は音楽院の試験曲として技巧的な曲が多く作曲された中、 ‘ロマンス’のように洒落た美しいメロディーの小品もたくさん作曲されました。 ゴーベールは2曲の「ロマンス」を残しています。今回ご紹介しております‘ロマンス’は1905年に作曲され、ゴーベールの友人でありアメリカへ渡り活躍したフルーティストのジョルジュ・バレールに捧げられています。「ロマンス」にはこの1905年版とアドルフ・エネバンに捧げられた1908年版がありますが、1905年版の方が演奏される機会が多いように思われます。
【中級者向け】 演奏時間:約8分 (OU)

春の訪れとともにゴーベールの小品はいかがですか?

シシリエンヌと聞くとフォーレをまずイメージされる方も多いのではないのでしょうか?今回おすすめする曲はゴーベールのシシリエンヌです。タファネルとモイーズの間に位置するフルートのフランス楽派における重要な存在ゴーベールは、フルーティストの他に指揮者と作曲家としても活躍しました。特に1920年にオペラ座の指揮者となり、1931年には同監督に就任した後は、パリ音楽院フルート科教授を辞し最終的には指揮科教授を務めました。
「シシリエンヌ」とはシチリア舞曲またはシチリア風という意味で、8分の6拍子の舞曲になっています。フルートとオーケストラのために作曲されましたが、ゴーベール自身の編曲と思われるこのピアノ伴奏版が親しまれ、普及しています。いかにもフランス的な優雅な旋律が魅力的な小品で、フルートの魅力を純粋に伝えるメロディックな作品となっています。
【中級者向け】 演奏時間:約3分 (NS)

友人たちへ。。。

ゴーベールはパリ音楽院で教える傍ら、パリのオペラ座で指揮もするという、2つの職業を持っていたフルーティストです。この組曲は、同じタファネル門下の4人のフルーティストたちに捧げられたものです。同じ笛吹き仲間として、みなさんにも是非吹いていただきたい作品です。
I 祈り(巫女たちの踊り)ジョルジュ・バレールに捧ぐ ― 流麗かつ神秘的な響きが印象的な作品、  II.東洋風の子守唄 ルイ・フルーリに捧ぐ ― 東洋的な雰囲気を醸し出す、神秘的なメロディーの作品、 III.舟歌 マルセル・モイーズに捧ぐ ― まるで舟に揺られているようなテンポの、しっとりした作品、 IV.スケルツォ=ワルツ ジョルジュ・ローランに捧ぐ ― スケルツォの名の通り、軽妙なテンポの作品。
【中・上級者向け】 演奏時間:約14分 (O)

フルートで吹く「椿姫」

ジュナンは、アヴィニョン出身のフランスのフルート奏者でした。こちらは演奏会などで取り上げられる機会も多く、フルートのレパートリーとして定着していますので、お聴きになったことがある方も多いのではないでしょうか。この作品には「乾杯の歌」「ああ、私の短い命も終わる」「さようなら、過ぎ去った日よ」の3曲が使われています。ダブルタンギングやアルペッジョなどによる変奏、華麗にほどこされている装飾そしてカデンツァなど技巧的な部分が多く難度の高いこの作品は、フルートの魅力を存分に発揮出来るものとなっています。
【上級者向け】 (I)

新しいレパートリーにいかがですか?

ゲンツマー(1909-2007)はドイツのブルーメンタール出身でヒンデミットの作風を受け継いだ現代作曲家です。他にはドビュッシー、バルトーク、ストラヴィンスキーの影響を受けながらも独自のスタイルを確立させました。様々なジャンル、編成の作品を残しており、特にフルート、ピアノ、ハープ、チェロを含む作品を多く残しています。リハーサルピアニストとして活躍した時期もありますが、フライブルグやミュンヘンの音楽学校で作曲科の教授として活躍しました。
今回ご紹介しますフルートソナタ第3番は2003年に作曲されました。ゲンツマーが94歳の時の作品となりますが、晩年の作品とは思えないエネルギーを感じさせられる曲です。
第1楽章:3連符のリズムが終始使われています。生き生きとして楽しそうな雰囲気です。
第2楽章:ピアノパートとの対話が印象的です。
第3楽章:トリルを効果的に多用することでこの曲の持つ情熱と活気を表現しています。

演奏時間:1楽章:約6分 / 2楽章:5分45秒 / 3楽章:5分15秒
【中・上級者向け】 (OU)

忘れられたコンクール用小品4

アレクサンドル・ジョルジュは1850年、フランス北部のアラスで生まれ、同地で1938年に亡くなった作曲家です。フォーレも勉強したニデルメイエール宗教音楽学校で学び、フランクがオルガニストを務めたサント=クロチルド教会の楽長を務めた後、1899年より1928年までサン=ヴァンサン=ド=ポール教会のオルガニストを務めました。よってフランクの影響を受けています。教会に勤めた作曲家らしく、2巻からなるオルガン作品集《小教区の歌》や《受難曲》、《ルルドのノートル・ダム》といったオラトリオを残しますが、それだけでなく劇場にも興味を持ち、中国をテーマにした一幕の《春》、タロットカードのお告げにより女王になると運命付けられたロマの少女の物語《ミアルカ》などのオペラを残しました。そしてこれらのオペラの主題を見ても分かるように、地方色溢れるダンスや旋律を作品に取り入れました。
今回取り上げる《ア・ラ・カスバ!(カスバにて!)》は1911年のコンセルヴァトワール(パリ音楽院)のフルート科のコンクール(卒業試験)のために作曲され、当時の教授エヌバンに献呈されています。カスバとはアルジェのカスバで有名ですが、北アフリカ(マグレブ)の城塞を起源とする伝統的な街並みのことです。青い海と空を背景に、海岸線から山の手にかけて張り付くように広がるアラブの伝統的で異国情緒あふれる家々に、路地が迷路のように入り組んだ町、まるで映画に出てきそうな情景です。当時アルジェリアはフランスの植民地でしたので、フランス人にとっては訪れやすい場所で、その異国情緒が多くの人を引き付け、サン=サーンスも何度も旅行し《アルジェリア組曲》を作曲したほどです。フランスにおける東洋趣味は19世紀末に始まったわけではありませんが、交通の発達等によりフランス人が実際に東洋を訪れたり、現地の文物がフランス国内で流通したりするようになったこの時代に再び大きな波となります。
第一主題は叙情的で旋法的なアラブの主題が朗々と歌われます。低い音域ですので、カスバの迷路のように入り組んだ街路のミステリアスな雰囲気が醸し出されます。主題が二度繰り返され、カデンツァの後第二主題が始まります。こちらは旋回するような情熱的なダンスです。第三主題は第二主題の変形で旋回のダンスがゆっくりとなり、スーフィズムのダンスでスカートのすそがひらひらと舞っているような円弧を描きます。第二主題が回帰し、展開された後、第一主題が一オクターブ上で決然と再現されます。転調し、短いカデンツァの後、第二主題、しかし今度はフルートがピアノに代わってリズムを刻み、そのエネルギーで駆け上がって長めのコーダに入ります。さらにダンスは激しさを増し、途中一陣の風が吹き抜けたような涼しげな旋律で火照りが冷まされますが、またすぐに元のテンポに戻って熱狂のうちに締めくくられます。
コンクール用小品では緩急の二部形式になり、「序奏とアレグロ」といった味気の無いタイトルになることが多いですが、《ア・ラ・カスバ!》では叙情的な部分とテクニカルな部分がバランスよく有機的に配置され、またその視覚的にイマジネーションをかきたてるタイトルのおかげで、コンサート・ピースとしても遜色ない作品となっています。
(2017年6月記)(M.N.)

忘れられたコンクール用小品→楽譜ID:7903(ムーケ/牧歌)
忘れられたコンクール用小品2→楽譜ID:2335(マゼリエ/ディヴェルティスマン・パストラル)
忘れられたコンクール用小品3→楽譜ID:7628(オベール/序奏とアレグロ)
忘れられたコンクール用小品4→楽譜ID:1721(ジョルジュ/ア・ラ・カスバ!)
忘れられたコンクール用小品5→楽譜ID:1620(ブラン/アンダンテとスケルツォ)
忘れられたコンクール用小品6→楽譜ID:1653(ドゥメルスマン/演奏会用ソロ第2番)
忘れられたコンクール用小品7→楽譜ID:11633(ポート/伝説)
忘れられたコンクール用小品8→楽譜ID:2040(ブトリ/コンチェルティーノ)
忘れられたコンクール用小品9→楽譜ID:1639(ドルリュー/折画)
忘れられたコンクール用小品10→楽譜ID:1957(チュルー/グランド・ソロ第11番 )

フランス音楽とジャズの融合

今回のおすすめ楽譜は、イタリア生まれフランス育ちの作曲家ギドーニの作品です。 現在も作曲活動中のギドーニは、ジャズのリズムと印象派のフランス音楽のメロディを併せ持ち、サクソフォンのアンサンブル作品をはじめ、管楽器の作品など色々な楽曲を作曲しています。
2013年に出版されたこの作品は、全体を通して疾走感があり、ジャズのリズムを感じるアクセントやスタッカートが至る所に出てきます。
また、低音から高音まで自由自在に使われる音は、躍動感があり演奏者の気持ちも高まってきます。 中間部では徐々にテンポが緩み、メジャーセブンスで始まる≪Adagio≫ではブルースを思わせる雰囲気でとても魅力的です。後半はピアノの音をきっかけに再度速いテンポに戻り、「ジャズロックの精神で!」と表記があるように、速いテンポの中にシンコペーションのリズムやアクセント、スタッカートと様々な表現が詰め込まれ一気に駆け抜けます。難易度の高い作品ではありますが、チャレンジ!してみませんか。
【上級者向け】演奏時間:約10分(TO)

名曲は名ピアニストから

ヴァルター・ギーゼキングの両親はドイツ人ですが、フランスのリヨンで生まれました。 今日でも名ピアニストとして評価されている事は皆さんご存知と思います。 この曲でもギーゼキングの性格、演奏スタイルを感じる事ができます。 ギーゼキングのピアノ演奏のように、この曲からも表現に富んだ繊細さと多彩な表情を知ることができます。 ギーゼキングのピアノのレコード(CD)を聴いてから、この曲をフルートで演奏するのも面白いし、彼をより良く理解できると思います。
【中・上級者向け】 演奏時間:約12〜13分 (Y)

グラズノフをフルートで!

アレクサンドル・グラズノフ(1865-1936)は、ロシアの作曲家でリムスキー=コルサコフやショスタコーヴィチと関係が深かった人物です。ペトログラード音楽院(現サンクトペテルブルク音楽院)の院長を務めましたが、晩年は亡命しパリに没しています。
9つの交響曲(第9番は未完)や器楽曲などを残していますが、フルートのための作品は作曲されていません。
今回ご紹介する「TRIO MINIATURES Op.42」は1893年にピアノ用として作曲され、ピアニスト兼作曲家のマーク・タナー氏によりフルート用にアレンジされました。
この作品は、「Pastorale」「Polka」「Valse」の3つで構成されており、 「Pastorale」はゆったりとした美しい旋律で、原曲との違いを感じながら吹いてみると面白いかも知れません。また、「Polka」は元々チェコの民族舞曲で、R.シュトラウスの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」などが有名です。テンポは速めで跳躍や高音域のパッセージがあり、他の2曲より難易度は高めです。ですが、ポルカを扱ったフルートとピアノの楽譜は稀なのでよりプログラムの幅が広がるでしょう。3曲目の「Valse」ワルツは、言わずと知れた3拍子の1拍目にアクセントが来る舞曲で、社交ダンスとしても親しまれています。そのためあまり音楽に馴染みのない方でも聴きやすいのではないでしょうか。
ピアノが原曲のため、全曲を通して少し音域が高いのが難点ですが、「Pastorale」「Valse」は発表会等にも丁度良いと思います。是非、曲選びの候補に挙げてみてはいかがでしょうか。
【初・中級者向け】演奏時間:約7分40秒 (M.R)

どこでも使える「精霊の踊り」(Fl.Pf/Fl.Storch)

グルックの「精霊の踊り」といえば、ビゼーの「メヌエット」などとともに、誰でも知っているフルートの名曲です。でもこの曲の作曲事情までは知らない方も多いのではないでしょうか。この曲は、オペラの題材として昔からよく使われてきたギリシア神話の「オルフェオとエウリディーチェ」の話を元に、1762年にウィーンで初演されたグルックのオペラの中の1曲でした。第2幕第2場の、天国の野で精霊たちが踊る場面で演奏されたのがシンプルなメヌエットです。
グルックは1773年にオペラの改革を唱え、当時オペラ上演の中心地の一つだったパリに進出しました。彼はいくつかの旧作に改訂を加えて上演しています。その中で1774年にオペラ座で「オルフェオとエウリディーチェ」を上演したときに、このメヌエットにフルート独奏による中間部を書き加えたのです。パリではお歴々がバレリーナの美しい脚を見るのを楽しみにオペラに通ったと言われるくらい、オペラと踊りは切り離せないものでした。パリでオペラを上演するために踊りを書き加えた作曲家は大勢います。ついでながら、お歴々はオペラの途中からやってくるというので、冒頭に踊りの音楽を置く例はあまり無いようです。
このようにして第2幕第2場に置かれたメヌエット(2本のフルート、弦楽合奏と通奏低音)にフルート・ソロ、弦楽合奏と通奏低音による中間部が加えられました。フルート・ソロがあまりに美しいことから、この曲はいくつもの編曲を生み、「メロディー」と題したクライスラーのヴァイオリン用の編曲などは特に有名です。
今回ご紹介する楽譜は、このパリ版の楽譜を使ったもので、弦楽合奏の伴奏でも、鍵盤楽器の伴奏でも使えるようにしたスコアと、第2フルートのパートも含む全パート譜をまとめ、原典に則した校訂で、しかも便利でお求めやすくなっています。音楽仲間の集まり、発表会から演奏会、アンコールまで幅広く使っていただける楽譜です。
【初・中級者向け】 演奏時間:約6分 (SR)

「組曲」

ゴダールは「ジョスランの子守唄」で有名なフランスの作曲家です。第一曲「アレグレット」は絶妙なレガート、軽快なスタッカートで生き生きとした表現が要求されます。第二曲「イディル」は牧歌と言う意味で、小川の流れのように静かで美しい曲です。第三曲「ワルツ」は単独にアンコールでよく演奏されます。リズムにのって、楽しく、面白く、演奏してください。
(Y)

忘れられた19世紀フランス・オペラ7

「ロミオとジュリエット」はシェイクスピアの作品の中でもあまりにも有名な作品ですし、それを基にしたシャルル・グノー(1818-1893)のオペラ(1867年初演)も比較的よく知られていますが、日本で全曲上演される機会は少ないのではないでしょうか。
今回取り上げる楽譜は、ポール=アグリコル・ジュナン(1832-1903)の編曲作品シリーズ、「現代オペラによる新ファンタジー・コレクション」の一つとして出版された楽譜です。このシリーズの中でジュナンは22曲中10曲でグノーの作品を取り上げており、グノーの音楽はジュナンが活躍した時代によく演奏され、当時の人々に耳馴染みのあるメロディーであったことがわかります。ジュナン自身もグノーの音楽を気に入っていたのでしょう。こちらは「ロメオとジュリエット」の第2番となりますので、作中で最も有名なジュリエットのカヴァティーナ『私は夢に生きたい』は入っていません。しかし、ロメオのアリア『恋よ、恋よ』やロメオの従者ステファノによるシャンソン『白いきじ鳩よ』といった有名な部分が演奏されますので、フランス・オペラのファンの方には十分に楽しんでいただけると思います。
曲中に登場する旋律は、順に
第2幕:ロメオ:ああ、太陽(=ジュリエット)よ昇っておくれ、星々をかすませておくれ!
第1幕:ジュリエット:魅力的な世界が私の眼前に湧き上がってくるようだわ!
第1幕:キャプレット卿(ジュリエットの父):さあ、若者よ!さあ、お嬢さん!
第3幕:ステファノ:白いきじ鳩よ、このハゲワシの巣の中で何をやっているんだい?
第4幕:ジュリエット:愛、それは私の勇気を奮い立たせる!
となっています。
19世紀に流行した華麗に装飾的な楽句がちりばめられる超絶技巧の小品というよりは、録音再生装置のない当時、気軽にオペラのフレーズを演奏会やサロン、家庭で楽しめるように編曲された楽譜となっています。演奏会の途中に挟む聴きやすい一曲やアンコール・ピースとして、また発表会向けの曲として活用していただけると思います。
(2021年12月記) (M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

女性作曲家による作品です

1828〜1907年、フランスで活躍した女性作曲家Glandvalは、6歳の時にショパンのもとでピアノを習い、その後サン・サーンスやタファネルなど偉大な音楽家たちから作曲を学びました。Grandvalは、主にオペラやバレエ音楽、オーケストラなど多くの作品を残し、その中でも「組曲」は、指揮者、作曲者、そして演奏家でもあるタファネルに捧げられた作品の一つです。
この作品は、5つの曲からなる、演奏時間約20分の長い作品です。どの曲も素敵な曲ばかりで、5つの作品から1曲だけ取り上げて演奏しても十分楽しめる作品です。1872年、タファネルがフルートで、サン・サーンスがピアニストという素晴らしい演奏家たちで初演されました。
(M)

AMERICAN COMPOSER

1918年にフルートと小管弦楽のために書かれた作品です。アメリカの広漠たる大平原の中の、静寂、小動物たち、群を成して移動する動物、牧童たちの踊り、狩等をフルートの表現力と音色の美しさで描いています。去る、2003年8月に亡くなられたジュリアス・ベーカーさんがもっとも得意としていたレパートリーの一曲でした。上級者向けです。
(G)

きらめく小品です

ガブリエル・グロヴレーズは長年パリ オペラ座の音楽監督を務め、最後にパリ音楽院の室内楽教授となりました。この曲は1927年パリ音楽院の卒業試験用に作曲され、当時のフルート科教授ゴーベールに捧げられました。。前半は愛情に満ちた暖かな心をゆったりとしたメロディで表現しています。後半は快活技巧的に書かれており、多分試験曲を意識して前半と後半との対比を考えて書かれたのではないでしょうか?皆さんご存知の通り、当時試験用に書かれた曲は現在でも数多く、世界中の演奏家のレパートリーになっております。この曲もその中の名曲中の名曲と言えるでしょう。
【上級者向け】 演奏時間:約9分 (Y)